チョッパーとは? 王道のロングフォークを徹底解説!
まずチョッパーの特集として初っ端から取り上げるのは多くの人が思う浮かべるであろう王道中の王道、ロングフォーク。その誕生の逸話から現在に至る進化の過程についてまで、エポックメイキングな車両とともにここで簡単に解説してみたい。
チョッパー黎明期に影響を与えた雑誌の存在
実はロングフォークの誕生に大きく関わっているのが、1960年代後半にミニコミ的に発行されていた小冊子。ピンストライパーとして知られるヴォン・ダッチが著書で残した言葉によれば「60年代に発行されていたホットロッドマガジンなどに掲載された“バイクを前方から広角レンズで下あおりから撮影した写真を実在のスタイルと誤解した人間”が作り出した」というのがロングフォークの起源とのこと。
その後、エド・ロスが1967年に『チョッパーズマガジン』を発行し、パーツメーカーの「AEE」が69年に『ストリートチョッパー』誌を発行。71年にはパーツメーカーの「ジャマー」が雑誌『イージーライダース』を発行するに至ったが、そのほか、R・スミスがライターとして参画した『カスタムチョッパー』など媒体が次々に誕生。当時に公開されたB級バイカームービーと共に盛り上がりを見せたという。
Wyatt’s chopper from “EASY RIDER” movie
チョッパーと聞いてほとんどの人が思い浮かべる存在が1969年公開の映画『イージー☆ライダー』に登場したこのマシンだろう。14インチオーバーのフロントフォークやマスタングタンク、アップスゥイープマフラーにリジッドフレームの立ち姿はまさに永遠の定番だ。ベースは1965年式パンヘッドである。
有色人種たちが生んだロングフォーク・カルチャー
上の「キャプテンアメリカ」を黒人ビルダーのベン・ハーディーが製作したことはすでに多くの人に周知されているが、1967年にカリフォルニアでダック・デンバーが設立した「デンバーズチョッパーズ」で活躍したF・ヘルナンデスもまたメキシコ系。こうした史実からもわかるとおり、実はロングフォークの誕生には多くの有色人種が関わっている。クルマのローライダーのギラギラ系カスタムを見る限り、その独特な感性には納得だ。
MC PECKERS Goose Neck Chop
1988年のオープン以来、正しいディメンションでのロングフォークチョッパー・ビルドに尽力してきた愛知県の「MCペッカーズ」だが、この車両は2010年に製作。車名のとおり“ガチョウの首”に見えるステム部は、まさに“正調グースネック”と呼べるものだが、現代のものらしく操縦性は驚くほど素直で軽く仕上げられている。http://mcpeckers.jp/
SHIUN CRAFT WORKS“THE UNIVERSE”
我が国最大のアメリカン・カスタムの祭典であるHCS2024の「ショースポットライト」にて見事、アワードを獲得したのが神戸のシウンによるこのマシン。スイングアーム付き車両という規定の中でも絶妙なバランスのロング・チョッパーに仕上げられている。今年も米国、ボンネビルでのランドスピードに挑んだショップの技術力を感じさせるツインキャブ仕様のエンジンも、マニア心をくすぐるポイントだろう。チョッパーの正統な進化を感じる一台だ。https://shiun-chop.com
DENVERS CHOPPERS Tribute Chopper
ロングフォークの総称である「LAスタイル」、その起源といえるショップ、デンバーズが70年代当時のスタイルを再現しつつ、現代的にアップデートした一台。当然、ディメンションは適切である。https://denverschoppers.com
“Duck”Denver Mullinsとは?
ロングスプリンガーを商品化したD・アレンやオリジナルガーダーフォークやマグナムモーターを開発したJ・ハーマンと並ぶチョッパー業界の伝説的人物。1967年にショップを創業し、シッシーバーやフレーム、フォークなどを販売し、チョッパーの普及に尽力する。1992年にドラッグボードの事故により逝去する。享年48歳
VIRTUOSO MOTORCYCLES Lectilian
2010年HCSにて「ベスト・オブ・ショー」を獲得したのは三重県の「ヴァーチュオーゾ」。同店らしい美しいモールディングやペイントワークのクオリティに目を奪われるでき栄えを見せつける。こうした装飾性の追求もロングフォークチョッパーの醍醐味だ。http://virtuoso-mc.blogspot.com
王道のロングフォークでいまの時代に追求すべきこと
チョッパーと聞いて多くの人が即座に思い浮かべるスタイルが、ここに紹介するロングフォークであることは間違いないだろう。
例えば今回のような特集で、このスタイルの歴史やディテールのお約束などを論じることも簡単だが、しかし、それよりも伝えるべきは正しい知識をもってこの手のマシンに接するということ。そう、まずは「バイクはバイク」という大原則を忘れてはならない。それを果たすには下図で紹介するような「車体のディメンション」や強度について知ることも大切だ。
70年代に何故、このスタイルが廃れ、現在に蘇ったのか……コイツに乗るには「覚悟」より「似て非なるもの」を選り分ける知識を携えることも重要なのである。
ロングフォークといえども追求すべき正しき知識
ここまで駆け足でロングフォークについて紹介してきたが、その中で追求すべきは各部の数値、トータルの車体ディメンションだろう。その中でも重要なのはオフセット量やネック部のキャスター角、フォークの長さやタイヤサイズによって変わるトレール量で、その基本的に正しい数値は約10㎝以内。旋回性に関わるホイールベースやフォークやホイールの自重の計算も当然、重要だ。