マイナ保険証トラブル 静岡県の医療機関74%が経験 12月から移行できる?
■マイナ保険証の利用率は12.4% トラブル1位は文字化け
静岡県保険医協会が、保険証機能の付いたマイナンバーカード「マイナ保険証」に関するアンケートを実施した。その結果、マイナ保険証を利用した際にトラブルを経験した医療機関は全体の74.3%を占めた。患者に10割負担を請求したケースも少なくなかった。
国は12月2日に現行の保険証の新規発行を停止し、マイナ保険証への一本化を進めている。しかし、厚生労働省が発表したマイナ保険証の利用率は8月時点で12.4%と国民に浸透していない。また、マイナ保険証が医療機関で使えなかったという患者の声も少なくない。
こうした状況を受け、県内2360人の医師と歯科医師による団体・県保険医協会は、県内の医療機関を対象にマイナ保険証についてのアンケートを行った。その結果によると、今年5月以降にマイナ保険証のトラブル・不具合を経験した医療機関は74.3%に上った。トラブル事例で10%を超えた内容は以下の通りだった(複数回答)。
①文字が「●」で表記される 70.4%
②カードリーダーの接続不良・認証エラー 58.8%
③資格情報が無効 44.2%
④有効期限が切れていた 20.1%
⑤該当の被保険者番号がない 19.7%
⑥名前や住所の間違い 19.0%
⑦負担割合のそご 14.2%
最も多かったのは、「髙」などの常用漢字以外の文字が「●」と表示される内容だった。手入力で修正する手間が増え、入力ミスのリスクもあるといった声が上がっている。その他にも高齢者を中心に患者がタッチパネルの操作を上手くできなかったり、暗証番号を忘れたりするケースもあった。中には、1人エラーが出ると、次の人から全てエラーになる時もあったという。
■トラブル対応で「10割負担」請求したケースも
ネットワークエラーが出るとシャットダウンして再起動する必要があるため、手間と時間がかかる。また、接続不良が数日続いた医療機関もあった。ほぼ毎日、カードリーダーがフリーズし、その度に再起動しているところもあるという。
トラブルや不具合が起きた時の対応(複数回答)は「その日に持ち合わせていた健康保険証で資格確認した」が最も多い80.7%だった。次いで、「前回来院時の情報をもとに対応」の39.4%、「レセコンメーカーに相談した」の22.3%、「保険者・コールセンターに連絡して相談した」の21.9%となっている。
トラブル対応で「一旦、10割負担を患者に請求した」と回答したのは8.1%だった。中には、10割請求されて、「それなら良いです」と帰った患者もいた。5月から7月のマイナ保険証の利用推進機関に「患者とのトラブルがあった」と回答した医療機関は11.1%。具体的なトラブルには以下の内容が挙げられている。
・「なぜ使わなければいけないのか?」と怒られた。
・高齢者は操作に時間がかかって次の患者の待つ時間が長くなり、列ができて苦情になった。
・高齢者は1回使っても面倒で辞めてしまう。
・マイナンバーカードを持っているかどうか、確認されたくない患者がいる。
・「同意する」、「同意しない」の選択回数が多いと文句を言われた。
■健康保険証12月2日に廃止へ 「残すべき」は84.6%
健康保険証が12月2日に廃止されることについては、全体の84.6%が「保険証は残すべき」と答えている。「延期すべき」は6.5%で、「賛成」は5.1%にとどまっている。
県保険医協会はマイナ保険証自体には反対ではなく、「患者が現行の保険証とマイナ保険証のどちらを使うか選択できる仕組みがベスト」と訴えている。そして、石破茂首相らに宛てた「現行の保険証存続に関する要望書」には、次のように記している。
「マイナ保険証の利用率が向上しないのは、現行の保険証の方が便利だと多くの人が実感しているからではないでしょうか。マイナ保険証を利用した際にトラブルが発生したと回答した医療機関が7割に達する状況で、現行の保険証を廃止してマイナ保険証への一本化を進めれば、医療界に大きな混乱が生じます。12月2日以降も現行の保険証を存続させてください」
アンケートは8月19日から31日の期間で実施され、1883か所にFAXを送信。369か所から回答を得た(回答率19.6%)。
(SHIZUOKA Life編集部)