デニムロッジ&ネスト 〜 児島ジーンズストリート唯一の宿泊施設。ジーンズストリートに住むように泊まる
倉敷市児島のジーンズストリートの一角にある宿「デニムロッジ&ネスト」。
もともと2023年に休憩所「デニムロッジ」としてオープンし、ジーンズストリートを訪れる多くの人が利用しています。
そして、2025年3月からは宿泊も可能になりました。
オープンにあたっての思いや、デニムロッジ&ネストの特徴を取材しました。
デニムロッジ&ネストとは
デニムロッジ&ネストは、ジーンズストリート唯一の休憩所兼宿泊施設です。
2023年9月にオープンした「デニムロッジ」は、ジーンズストリートにあり、山小屋のようにくつろげる場所になってほしいという思いを込めて名付けられました。
そして、2025年3月にデニムロッジの空きスペースに「ネスト」がオープン。「ネスト」は「鳥の巣」を意味し、拠点のようにこの場所を利用してもらい、帰ってきたくなる場所にしたいという思いが込められています。
デニムロッジ&ネストの看板にも、ネストの名前にちなんだ意味が込められています。
倉敷市の市鳥であるカワセミが、鳥の巣に止まっているところをイメージして作られました。
休憩所としても利用できる共有スペース
入口でスリッパに履き替えると、最初に目に入るのが共有スペースです。
ここは宿泊だけでなく、30分300円で休憩所として利用することも可能です。
ジーンズストリートで購入した商品の裾上げを待ったり、どの商品を買うか相談したりするかたもいます。
紅茶やコーヒーなどの飲み物も用意されています。
2階には二つの共有スペース
2階にも二つの共有スペースがあります。
一つ目のスペースは、入ってすぐ左側に。
このスペースはワーケーションで利用するかたや、眠れないかたが利用されます。コーヒーが用意されているため、飲みながらゆっくりくつろげます。
窓からはジーンズストリートを上から眺められ、歩いているときには見られない角度からの景色は新鮮です。
そしてもう一つの共有スペースが魚の間。
2階には「魚の間」「綿の間」「塩の間」と名付けられた部屋があり、これらは児島の「三白」(魚〈いかなご〉・綿・塩)に由来しています。
魚の間に敷かれているカーペットは、実はモロッコのもの。
気になった内装やアイテムについて尋ねてみると、意外なエピソードが聞けるかもしれません。
デニムをモチーフとした三つの部屋
ネストで宿泊できる部屋は三つです。
すべて個室のため、ゆっくりと自分の時間を過ごせます。
風の間
1階にある部屋が「風の間」です。
三つの部屋のなかでもっともシャワーやキッチンに近いため、利便性を重視するかたに人気があります。
風の間は0歳から宿泊が可能なため、家族で利用したいかたにもおすすめです。最大3名まで泊まれます。
「風の間の鍵」に付いているデニムは、もともとデニムロッジでおこなわれていたタッセル作りのワークショップで作っていたものだそう。
他の部屋の鍵にも異なるデザインのタッセルが付いており、思わず他の部屋のものもチェックしたくなります。
塩の間
2階には宿泊する部屋が2室あります。
階段から上がって手前にあるのが「塩の間」です。最大2名まで泊まれます。
デニムをイメージしたふすまの青色が印象的です。
綿の間
そして2階の一番奥に位置する部屋が「綿の間」。最大3名まで泊まれます。
窓からはこのような景色が広がります。
児島の町に溶け込んで、まるで自分がこの町に住んでいるかのような気分になれると感じるお客様も多いとのこと。
ジーンズストリートに暮らしているような気持ちになれる宿、「デニムロッジ&ネスト」。
オープンのきっかけや、今後の展望などを、デニムロッジ&ネストを運営している中埜幹夫(なかの みきお)さん、中庭廣子(なかにわ ひろこ)さん、黒明立暉(くろみょう たつき)さんに聞きました。
デニムロッジ&ネストのスタッフインタビュー
オープンのきっかけや今後の展望について、デニムロッジ&ネストを運営する中埜さん、中庭さん、黒明さんに話を聞きました。
ジーンズストリートに休める場所を作りたいという思いから
──デニムロッジ&ネストを始めたきっかけを教えてください。
中埜(敬称略)──
きっかけは、ジーンズストリートに休める場所を作りたいと思ったことです。
デニムロッジ&ネストがあるエリアは、ジーンズストリートのなかでも一番初めにできた場所です。
ジーンズストリートの看板があるエリアには、カフェや飲食店などが増えて栄えてきていますが、このあたりにはカフェも休憩できる場所もありませんでした。
「このエリアにも休憩できる場所を作りたいね」という思いで、まずは休憩所兼観光案内所としてデニムロッジを作りました。
──その頃から宿泊施設を作る構想はあったのでしょうか?
中埜──
ありました。
しかし、オープン当初は設備などの関係から、すぐ宿泊施設を始めるのは難しい状態でした。
準備が整い、宿泊施設をオープンできたことで、ようやく完成形にできたなと感じています。
──念願かなってのオープンだったのですね。中庭さんはどのような経緯でネストの女将になられたのでしょうか?
中庭(敬称略)──
私は高校を卒業するまで児島で育ちました。
中埜とは幼馴染で、アイデアが特にない頃から「旅が好きだから、いつかゲストハウスとかやってみたいんだよね」と話していました。
中埜からデニムロッジに宿サービスを加える話を聞いたのが、2024年夏です。
その頃私は、東京と岡山の2拠点生活を送っていて、いつかは岡山に帰りたいけれど、これといったきっかけがなくて。
そのときに、中埜から「ちょうど空いている場所があるから、あのとき話していたゲストハウスをやってみないか」と誘いがあり、2025年1月に児島にUターンしてきました。
──デニムロッジ&ネストはデニムのカラーを中心としたとても素敵な空間ですが、コンセプトはどなたが考えたのでしょうか?
黒明(敬称略)──
ゼロから僕が携わりました。
コンセプトだけでなく、デニムロッジという名前や、何をリノベーションするかまで考えました。
中埜──
黒明は、リノベーションを開始するタイミングで入社しました。実は彼の入社日の仕事は、倉敷市の補助金関係のプレゼンテーションでしたね。
黒明──
もともと入社の2か月前から、アルバイトとして関わっていたので、偶然入社日とプレゼンテーションの日が重なっただけではあるのですが(笑)
チャレンジする機会があってもいいのではないかということで、中埜から任せてもらいました。
多言語対応を生かしたサービス
──中庭さんは英語とスペイン語を話せるんですよね。
中庭──
はい。私だけでなく、ここにいるスタッフはみんな英語で対応できます。
もちろん、すべての言語に対応することはできませんが、できる限りお客様に不便や不安を感じさせないよう努めています。
──具体的には、どのようなサービスを受けられるのでしょうか?
中庭──
たとえば、よくあるお困りごとだと、英語での情報不足ですね。
子ども用のデニムはどこで買えるのか。鷲羽山までの交通機関はあるか。観光案内所があっても、このように尋ねるお客さんは少なくありません。
また、私たちはローカルな情報を提供できるのが強みです。
予約の段階でお客様とやりとりをし、滞在中にやりたいことを伺って、児島のイベントや施設をご紹介することもできます。
──特に海外でローカルな情報を手に入れることはとても難しいので、そのようなサービスがあると心強いですね。具体的なエピソードはありますか?
黒明──
過去に、約一か月滞在されたお客様がいました。
そのかたは海外からデニムを学びたいとジーンズストリートのお店を一軒一軒回り、寛容にも受け入れてくださった二店舗でミシンを借りてデニムを作っていました。
「デニム留学」といえるような形ですね。実は今日履いているデニムはそのお客様からいただいたものです。
生活のなかで見かけた山に登ってみたいというご希望があったため、一緒に登って、頂上でおにぎりを食べたこともあります。
他にも、縫製工場でインターンをしたいという海外からのお客様のために、友人や親戚にあたってインターン先を紹介したこともありました。
ここでしか得られない情報、ここでしかできない体験ができる場所へ
──今後の展望を教えてください。
中庭──
デニムの世界と瀬戸内ののんびりした空間で、学べて癒される体験を提案して、児島の魅力を余すところなく満喫していただきたいです。
例えば、デニムの小物を作るワークショップを宿で実施したり、地元のデニムメーカーさん主催のジーンズ作り体験やインディゴ染め体験をおススメしたり。
ほかには、地元のかたの家庭料理を味わえるプランを考えています。旅先で地元の一般のかたのごはんを食べる経験は貴重ですよね。
お金を払ってもなかなかできることではありません。ここでしか味わえない体験を提供したいです。
黒明──
ジーンズだけでなく、児島の歴史なども多くのかたに知っていただくお手伝いをしたいです。
デニムロッジ&ネストを訪れたかたに、ジーンズストリートでの買い物だけでは知ることのできない情報をお伝えすると、「良いことを知られた!」と喜んでいただけます。
たとえば、児島はもともと塩で栄えた町であることや、塩業とジーンズには実はつながりがあるという話をすると、歴史の話のほうが面白かったと言っていただけることもあります。
特に海外からのお客様は歴史好きなかたも多く、児島の歴史を旅の付加価値として伝えていけたらと考えています。
中埜──
もう一つ、児島に宿泊することを、もっと一般的な選択肢にしたいと考えています。児島には宿泊施設が多くなく、児島を訪れる際も他の場所に泊まるかたがほとんどです。
ネストに泊まっていただくことで、児島に滞在する時間がもっと増えてほしいと願っています。
おわりに
取材を通じて、デニムロッジ&ネストに滞在することで児島でしか出会えないかたがたや、ここでしかできない体験をしてほしいという中埜さん、中庭さん、黒明さんの思いが強く伝わってきました。
旅先で宿泊先を選ぶ際、筆者にとってはその場所で出会える人がどのようなかたかということが、重要な要素の一つです。
中埜さん、中庭さん、黒明さんとお話しするなかで、「この人に会いたいからこそ泊まりに行きたい」と思わせてくれるような、気さくで温かい人柄を感じました。
デニムロッジ&ネストで、ジーンズストリートに暮らしているかのような気分で、人との交流を楽しんでみてはいかがでしょうか。