「看板」「張り紙」にも注目!『散歩の達人』編集部・中島の国立さんぽ
『散歩の達人』9月号で紹介した国立市には、なにやら気になる看板や張り紙がわんさかある。取材中はそれを見るのが密かな楽しみとなっていた。実はこの張り紙こそ、国立の街を象徴するものなのだ。スーパーマリオのコイン、もしくは『あつまれどうぶつの森』のくだものを拾うような感覚で、国立では張り紙を見つけてほしい。
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散歩の達人 2025年9月号
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「めいわくですから ボクたち団地にはすめません。」
国立市・富士見台の団地周辺をロケハンした際に、ふと目に留まった看板。犬と猫がさみしげな表情を浮かべている。見るに、「ボクたち」とは犬や猫のことだろう。「住ませないで」でも「住んではいけません」でもなく、犬、猫の一人称で「すめません」ときっぱり断っている。自ら「めいわくですから」と言う犬と猫、なんて悲しいんだろう……。そりゃあこの表情にもなるよ。思わず犬と猫に同情してしまった。
どんな街も、散歩すれば自ずと看板が目に入るはずだ。国立市では、そんな看板や掲示板の張り紙に注目しながら散歩してみてほしい。
そもそも、国立は独自のコミュニティが発展している街だ。詳しくは9月号を読んでほしいが、飲食店などが日替わりで出店する谷保駅近くの『富士見台トンネル』をはじめとして、地域住民が集い合う、独自のコミュニティが数多ある。言い換えれば、国立は街としての結束力がある。そのエネルギッシュさは、街中に点在する広報掲示板の張り紙にも垣間見えるのだ。
例えばこれ。「バスで潮干狩り」のご案内。個人的に、都内のこの手の張り紙で、バスツアーの参加者を募集する例をはじめて見たのだが、行程までしっかり書いてくれているのが有難い。日曜開催というのも優しいし、参加費も気軽な額だ。老若男女問わず、皆さまお誘いの上、奮ってご参加ください。そんな前向きな姿勢が感じられる。いいな。行ってみたいな。
次いでこんなものも見つけた。「短編小説を味わう集い」。デザイン的に、若年層向けの集いだろうか。「小説好きがつどい『読書はみんなでするもの』に変える場にします」。一人で家にこもらないで、みんなで本の感想を言い合いましょう、というところだろうか。この手の張り紙を見ると、思わず妄想が膨らんでしまう。本好きな人たちが集い、みんなで円になって本を読みながら、ああでもない、こうでもない、と意見を交わす。「凪良ゆうが好きなんです」「ああ、今度作品が映画化されますよね」。たわいもない話題から話がはずみ、LINEを交換する仲に! 学校や職場外で気軽に趣味の友達を作れる有難いコミュニティである。主催が「文章の多いレストラン」というのも秀逸だ。
こんなものも。谷保駅構内で見かけた「ベンチあります」。わざわざ掲示してくれるなんて優しすぎる。またもや妄想が広がる。お友達とのランチで少し遠出をしたおばあちゃんが、帰りは満員電車に揺られて疲れているところ、駅に降り立ちこの掲示を見る。ああ、ベンチがあるんだ。ちょっとここで一休みしてから帰ろうかしら。はたまた、子供がベンチに座って親の迎えを待っている。駅前とはいえ分かりやすい目印となり、親も安心だろう。
ここには確かに人情がある。この殺伐とした現代社会で、誰かが、顔の見えない誰かを思っている。それがこの張り紙であり、国立という街なのである。
散歩で訪れた人がこの街のコミュニティに参加する機会はないかもしれないが、国立のこういった空気を感じとれば、おのずと活力が湧いてくるはずだ。
文・写真=中島理菜(『散歩の達人』編集部)
散歩の達人/さんたつ編集部
編集部
大人のための首都圏散策マガジン『散歩の達人』とWeb『さんたつ』の編集部。雑誌は1996年大塚生まれ。Webは2019年駿河台生まれ。年齢分布は20代~50代と幅広い。