快進撃の駐車場シェア akippa代表・金谷元気インタビュー「成果を最大化する戦略と泥臭いガッツ」
数字だけを追っていた日々の虚無感と創業のアイデア
みる兄さん 以前からアキッパのビジネスに注目していて、金谷さんのお話を伺いたいと思っていました。創業前のことを少しお聞きしますが、最初はサッカー選手を目指していて、そこからビジネスを志すようになったのですか。
金谷 起業前は関西サッカーリーグに所属するクラブの選手でした。クラブにはプロ選手がおらず、アマチュア契約でしたので、求人誌でアルバイトを探して働いていました。
金谷元気さん
アルバイトの面接はよく通るのですが、工場でピッキングの仕事などをするとミスが多く、普通に働くのは向いていないと悩んでいました。そんなとき、100均で売っていた傘を1本300円で売る体験をする機会があり、「面白い」と感じたのです。それから39円でジュースを仕入れて花火大会で150円で売るなどしているうちに、自分は営業が得意だとわかり、フルコミッションの営業代行の会社で働きました。当時は自分の練習以外に高校サッカー部のコーチもしていたので、好きな時間に回れる営業のフルコミッションの仕事は好都合でした。
私は話し方がうまいわけではありません。ただ、営業を重ねるうちに、大事なポイントに絞ってシンプルに説明すれば理解してもらえることがわかり、資料もシンプルでわかりやすくしたら、営業成績が上がりました。
みる兄さん akippa創業のアイデアはどんな感じで出てきたのですか。
金谷 akippaの前は営業代理店を立ち上げ、営業代行事業をしていたのですが、特に目的も見つけられず、いつしか営業数字だけを追うようになっていました。それでは会社が世の中のためになっていないし、何のために働いているのかわかりません。共同創業者からも「何のために会社をやっているのですか」と問われて、私が会社のミッションを作ることになりました。その際、電気が止まって不自由した経験を思い出し、電気のように暮らしに必要不可欠なサービスをつくりたいと考えて、ミッションを「”なくてはならぬ”をつくる」に制定しました。
その上で、当時の社員と一緒に生活の中の困りごとを解決するサービスを考えることにし、困りごとを皆で200個書きだしたら、そのうちの1つに「駐車場が現地に行ってから満車とわかるときがあり、困る」とありました。私自身、カズさん(三浦知良選手)が出場した2011年の「東北地方太平洋沖地震復興支援チャリティーマッチ」を見るために、大阪・長居スタジアムに行ったら、空いている駐車場が見つからなくて、中に入れたのが前半30分くらいだったことがあります(笑)。だから、アイデアにすぐピンときました。
みる兄さん
ドミナント戦略の成功と自社営業だけの限界
みる兄さん ビジネスをスタートするときに、駐車場の数をかなり増やす必要があると思いますが、初期はどのように動いていきましたか。
金谷 最初は私が新卒のメンバーと一緒に自転車で走り回り、月極駐車場の「空きあり」という看板を見つけたら電話をしてアポを取って訪問し、アキッパに掲載していただくという個別開拓を大阪と東京で同時に始めました。そのあとグロービス・キャピタル・パートナーズの今野(穣)さんという方にUberの事例を教えていただきました。Uberはサンフランシスコからビジネスを始め、その都市で成立したノウハウで他の都市にも展開し、成功させたそうです。だから、まず1つの都市にドミナント戦略を成立させることが大事だと言われ、地元大阪の環状線の中を約250~500メートル四方くらいに区切って、そこに駐車場を確保していきました。すると、比例するようにユーザー数が増え、それぞれの駐車場の稼働率が高まっていったのです。その結果、大阪だけ黒字化したので、違う都市にも同じ戦略で展開し始めました。
みる兄さん 金谷さんの周りにはスペシャリストの方々が多数集まってきている感じがします。それは当初からビジネスを成長させるためにスペシャリストの力を借りようと考えていたのか、それとも偶発的にすごい方々とお会いする機会があったのか、どちらですか。
金谷 正直に言うと、以前は“営業が全てであり、自分たちは世界で一番優秀”と思っていました(笑)。その後、toCのマーケットプレイスを手掛ける中で、DeNAさんから出資を受けて、3人の方に出向で来ていただいたのですが、「優秀とは、こういうことか」と気づかされました。そのうちの1人は、今ベースフード代表を務める橋本(舜)さんです。世の中にはこんな優秀な人がいるのかとわかり、私より優秀な人を採用しなければと気づきました。
みる兄さん 優秀だと思ったのは、データの見方や戦略など、どういうところですか。
金谷 営業だけでは線形成長しかしません。それまではデータもよく見ずに感覚頼りの営業をしていたので、価格設定も大阪は500円、東京は1,000円と何となく決めて、場所も「飲食店の駐車場が足りないだろうから、その周りに行ってみよう」と根拠なく決めていた感じでした。3人が来てからは、それぞれの都市の需給に応じて駐車場を開拓し、適切な価格設定すればユーザーにとっても利用しやすいといったロジックを知るようになり、“こういう世界もあるのか”と驚きました。
みる兄さん 一極集中のドミナント戦略を横展開していく上で、想定通りにいかなかったところはありますか。
金谷 大阪と同じ手法でうまくいったのは東京です。しかし、福岡ではうまくいきませんでした。福岡は空港と街の中心部、駅が全部近いのと、バス網が整備されていて交通網が大阪や東京とは少し違います。そんなふうにエリアごとに売り手と買い手のバランスを調整するうちに、最終的にはどこの街でもうまくいくようになりました。
営業代理店とミッション・ビジョンを共有して仲間に
みる兄さん 営業代理店の活用という発想は、起業当時からあったのですか。
金谷 最初は自社だけで営業していましたが、需要に対して圧倒的に駐車場が足りないので、駐車場の開拓において営業代理店の活用を始めました。ただ、我々も営業代理店でしたから、その人たちの苦労や想いはわかります。私も日頃から「何のためにやっているんだろう」「ただ、お金のためだけに働いているのか」と感じて虚しくなることがありましたので、まず我々のミッション・ビジョンに共感してもらえるところにアキッパの代理店になっていただきました。今ではトヨタ自動車さんをモデルにしたドラマ『LEADERSリーダーズ』(※)のように、代理店と一緒に夢をつかもうと運命共同体として頑張っています。今も四半期に1回はミッション・ビジョンの共有をしていますし、営業成績トップの代理店とは毎月必ず会食に行っています。
・ミッション
“なくてはならぬ”サービスをつくり、世の中の困りごとを解決する
・ビジョン
リアルの“あいたい”を世界中でつなぐ
※LEADERSリーダーズ:2014年にTBS系で放送されたドラマ。トヨタ自動車創業者・豊田喜一郎氏をモデルに、国産自動車の開発と販売に人生を懸けた人々を描いた。
ほかにもコミッションの制度を工夫しました。私たちが以前、営業代理店をしていた頃は、ストック収益が積み上がらず、ショット収益しかなかったことが課題でした。今ではストック収益が積み上がるよう制度を整えるなどして、営業代理店の人たちに意義を感じて働いてもらえるように努めています。
みる兄さん 素晴らしいですね。アキッパの営業代理店は、“今忙しくて人が足りないから代わりに営業してください”というよりも、日本全国にサービスを網羅するための経営戦略の一環として、投資や売り上げ計画の中に位置づけられているのですね。
金谷 はい、仲間たちですね。今、登録だけで1,000社を超えているのですが、その中にはアキッパをメインでお願いしているところも数社あります。
みる兄さん セールスの人数は1社あたり何人くらいいるのですか。
金谷 大半は3人から5人です。その人たちから「akippaは世界を掲げているのに、いつ海外へ進出するのですか」「海外の代理店を立ち上げる気満々ですよ」などと嬉しい言葉をもらっています。
みる兄さん なるほど、同じ志を持つ関係各位との気持ちの擦り合わせができているところがakippaの強みですね。
画像提供:akippa株式会社
Googleにも“飛び込み営業”で連携成功
みる兄さん それから、取材前に確認したらGoogle マップで予約ができるようになっていて驚きました。便利で素晴らしいと思いますが、どのようなきっかけで実現したのでしょうか。
金谷 そこもストレートにユーザーの視点で、駐車場オーナーの観点でもより恩恵を受けていただくにはGoogle アカウントで予約できたらいいなと思って、プロダクトチームのマネージャーがGoogleの問い合わせフォームから直接問い合わせました。
みる兄さん 飛び込み営業みたいな感じですか。
金谷 問い合わせフォームとはいえ、マインドは似ていますね。とりあえず何でもチャレンジしてみようという精神はあるので。
みる兄さん すごいし、面白いですね。確かにホットペッパービューティーの美容室予約とGoogleやInstagramの連携をはじめ、プラットフォーム系とGoogleの連携・予約はありますが、駐車場は意外と盲点でした。ユーザー目線でいうと、Googleで“場所・駐車場・予約”で検索して全部埋まっていると、今度はGoogle マップで周辺の駐車場を検索して、どこに行けるかを探して、ここは予約ができる、ここはできないというふうにせざるを得なかったのですが、その導線を一発で解決できるのは便利です。
課題を解決しつつ、お金が自治体とクラブに入るサイクル
みる兄さん 次にプロスポーツクラブとの提携の話を聞かせてください。サッカーJ1のクラブとオフィシャルスポンサー契約を結んでいますが、起業時からいつかはスポーツに関わる仕事がしたいと思っていたのか、アキッパのサービスとの相性が良いから動き始めたのか、どうでしょうか。
金谷 やはりサッカーに関わりたいとずっと思っていましたし、一度サッカーメディアも作ったことがあります。そのメディアはマネタイズが難しく、サービスを終了しました。アキッパのサービスを始めてから、セレッソ大阪で働いているU–15時代の後輩から「スタジアム周辺が渋滞して、駐車場を探している車も渋滞してしまう」と聞き、アキッパの予約制駐車場を周辺に増やせば、解消できるのではないかと考え、実証実験をさせていただきました。結果、試合前の渋滞がうまく抑えられたため、実際にセレッソと提携することになり、他のクラブにも広がっていきました。
いろんな事例がやればやるほど出てきて、例えばあるクラブではJ1に昇格したときに「駐車場が足りないので、200〜300台分は確保したい」と言われました。我々の代理店は東京にも強いのでJ2のシーズンが終わってJ1スタートまでの約2カ月で500台分以上集めました。
みる兄さん 周辺の駐車場のほぼ全部を、そんな短期で。
金谷 もし立体駐車場を造ろうとしていたら何億円もかかるところです。でも我々に頼んでもらえればすぐに実現できます。
編集部 すさまじいスピード感ですね。何かコツがあるのでしょうか。
金谷 いや、そこはもうガッツです。
編集部 コツではなくガッツ。
みる兄さん ちゃんと地上戦で回りきるところが大事ですね。
金谷 はい。良いプロダクトで、良い営業資料を持って、あとは回り続ける。それだけです。
みる兄さん 良いプロダクトできちんと回り続ける。強さの背景はそこですね。意外と地上戦を避けて、“サービスの認知が足りない”と言って、すぐ広告に走りがちなところもありますからね。
金谷 営業力に加えて、システムが良くなっていったのも大きいと思います。バスケットボールB.LEAGUEのあるクラブでは、公式駐車場もアキッパの完全予約制にし、事前に「それ以外の人は駐車場がない」とアナウンスしました。するとアキッパで予約していない人は公共交通機関を利用するので渋滞は解消されますが、観客数も減ってしまいます。そこでアキッパが周辺の民家で使っていない駐車場なども開拓しました。公式駐車場プラス周辺開拓で、来場者全員が予約できるようにすれば、渋滞は大きく解消されます。
そんな「完全予約制プラス周辺開拓」を最近、LuckyFesなど音楽フェスや花火大会などでさせていただいています。
みる兄さん お祭り需要はありそうですね。
金谷 はい。とてもあります。今後増やしていきたいのは、スポーツクラブ自体がアキッパの代理店をする事例です。あるクラブは日本で一番車でアクセスしやすいスタジアムにしようとしていて、その一環で我々だけでなく、クラブ自身が駐車場を開拓しています。
みる兄さん スポーツクラブとのパートナーシップの提携は信頼感という点で大きなメリットがありますね。周りの地場の立地や小口の商店さんなどはつながっているでしょうから、その信頼感が駐車場開拓に役に立ちそうです。
金谷 そうですね。そういうところにクラブ自身が駐車場を増やすために営業して、アキッパに載せます。サポーターさんがその駐車場を利用すると、パートナー収益が我々から支払われます。
みる兄さん そのエコサイクル、ちょっと良いですね。
金谷 市役所の駐車場をアキッパを通して貸し出しているところもあります。クラブと自治体とアキッパで、「駐車場不足で車を止められない」というサポーターの課題の1つを解決しながら、お金が市にもクラブにも入っていくという仕組みができています。
みる兄さんが提案する次の「駐車場候補」
みる兄さん もう動いているかもしれませんが、コンビニエンスストアの空き駐車場との大型提携はどうですか。
金谷 商業施設は多いですが、コンビニさんはまだかもしれないですね。
みる兄さん 息子が今中学生で、サッカーの対外試合で、別の中学校へ送っていくのですが、学校は駅から少し離れたところにあって、駐車場があまり見当たらないことが多いのです。でもコンビニはあります。郊外のコンビニは結構駐車場が大きくて、よく「ここに止められたらな…」と思っていました。チェーン店ですが、本部にアタックして全コンビニと提携できたら、数千台から1万台くらい増えそうですね。
金谷 さすがですね。早速動いてみます。
みる兄さん もう1つは美容室の駐車場。美容室の店舗数はコンビニや信号機の数を上回っています。郊外の美容室の中には5~10台止められそうな駐車場を持っているところもあり、狙いめかもしれないです。
編集部 営業にとても強い会社ということはわかりましたが、営業が苦手な社員はいないのですか。そういう社員に金谷さんはどんな接し方をしているのでしょうか。
金谷 以前は営業会社だったので皆で一生懸命やっていましたが、今は4分の1くらいしか営業担当はいません。その4分の1のメンバーで営業して、安定的な線形成長を作っています。ただ、やはり積み上げですから、非線形に売り上げが伸びるわけではありません。プロダクトチームのメンバーは営業しなくても駐車場登録が増える仕組みをプロダクトを通して行うなど、非線形な成長にチャレンジしています。
みる兄さん 営業が強いのは今も変わらず、安定成長を支えているのはその部隊ですね。
金谷 代理店は泥臭い営業が一般的ですが、社内はエンタープライズ向けの提案が多いので、うまく役割を分けられています。最近は20代の若手も入社してきています。ただ、以前からいる社員が辞めないので、平均勤続年数は約7年になっています。
みる兄さん 社員の平均年齢も約35歳。スタートアップ・ベンチャー企業としては、社員の入れ替わりがあまりなく、継続している感じですね。
編集部 なぜ辞めないのですか。
金谷 辞める人が全くいないわけではないですが、やはりミッション・ビジョンに納得感があるので、続けて働けるのではないでしょうか。
みる兄さん 会社が成長しているし、ミッション・ビジョンへの納得感がある、と。
金谷 自分たちのサービスで地域課題の解決をサポートできる。そういう目的で地元の方々と関わっていると、やりがいを感じたり、社会が必要とする会社でいようという意欲につながったりするのかもしれません。
みる兄さん 社会課題の解決につながって喜ばれることが多いサービスは、如実に働きがいに現れますからね。すごいと思います。それでいて、線形成長のところもあれば、プロダクトが進化して新しいサービスが加わっていくから、売る側も営業の仕方が変わって面白いですよね。
これは私個人が思うことなのですが、公共性のあるプロスポーツクラブなどとパートナーシップが始まると、会社としての社会的価値が、また少し違うステージに行くと感じます。そこは金谷さんがおっしゃっていた「社会が必要とする会社でいよう」というところに良い影響を与えていると思います。
金谷 ありがとうございます。
みる兄さん 最後に、プロスポーツ関係のところで、金谷さんが今後の方向性として考えていることがあれば教えてください。
金谷 我々は勝手にJリーグを世界で一番車でアクセスしやすいリーグにしたいと考えています。これから超高齢化社会を迎えていくにあたり、観客も年齢やライフステージが変わっていく中で、独身から結婚して子どもが生まれたり、年を重ねたりしても、車ですぐスタジアムに行けるようにしたいですね。
あとは、将来的に全クラブのスポンサーになることに憧れを持っています。Jリーグの活動方針には「地域」という言葉がいくつか入っていますが、素晴らしいスタジアムの周辺では我々が一番近いところに今います。だからアキッパがJリーグと地域とのつながりになるのではないかと期待しています。
みる兄さん 確かに。ファン・サポーターの課題解決になりますし、クラブのためにも、地元の企業のためにもなるので、素晴らしいと思います。アクセスと交通のストレスが変わると、観戦体験も相当変わりますからね。
編集部 本日はありがとうございました。
みる兄さんの取材後記|akippaの強みとは、確固たるセールス力とユニークなビジネスモデル
akippaの創業者、金谷元気さんにインタビューさせていただき、仮説だった「強み」が確信に変わりました。金谷さんは起業前に営業代行会社を経営しており、その経験がアキッパのビジネスに色濃く反映されています。
泥臭いセールスがイノベーションを生む
サービス開始時、空いている個人の駐車場を貸し出すビジネス自体が知られておらず、また認知度が低かったアキッパにとって、駐車場オーナーを開拓するのは困難だったと考えられます。しかし、金谷さんの営業代行で培ったノウハウがここで活き、新規開拓の難易度を乗り越えました。アキッパの市場開拓は、初期段階から「現場主義」のセールスを軸に進められました。具体的には、オーナー開拓を地道な営業活動で進める一方で、広報活動によって認知度を高め、新規顧客の獲得にも成功しました。
また、サービスの技術面でもイノベーションを推進しています。その一例が、大手駐車場向けの入退場バーとの連携システム(※シェアゲート)。このような技術革新により、法人営業の活性化が進み、より多くの企業がアキッパのサービスを採用する結果となりました。
※シェアゲート:現地で駐車券を取らず、暗証番号で入出庫できるシェアゲート端末が設置されている駐車場。
営業代理店の仕組み構築
アキッパは新規オーナー開拓に営業代理店の協力を得ていました。アキッパと営業代理店の関係は単なる利益共有だけではなく、「“なくてはならぬ”サービス」を生み出し続け、その結果、「世界一の会社になること」というakippaのビジョンの共有を重視していました。この戦略が営業代理店との強固な関係性を生み出し、他社が真似できない体制を構築しています。なお、金谷さん自ら頻繁に営業代理店幹部とミーティングをし、ビジョン共有をしているそうです。
ユニークなプロダクトと強力なセールス力が顧客獲得のためのマーケティングを不要にする
アキッパは、以下の2つの強みを持つことで、プロモーションや広告に頼らずとも成功しています。
確固たるセールス力で市場を開拓ユニークなサービスの提供と技術の進化
これらが組み合わさることで、「駐車場を予約したい」というニーズを持った消費者が自然にアキッパに流れ込みます。検索導線の受け皿を強化する目的でメディアサイトの整備には取り組んでいるものの、顧客やオーナー開拓のための広告やプロモーションなどの積極的なマーケティング施策はほぼ不要の状態です。
シェアリングエコノミーの駐車場サービスとして注目される同社ですが、その成功を支えているのは、単なるアイデアのユニークさだけではありません。もし「広告プロモーションや獲得型のマーケティング施策を必要としないビジネスモデルがあるとしたら?」と聞かれたら、その答えの一つにアキッパが頭に浮かぶくらいに強みが明確だと取材をして感じました。
akippaの今後:さらなる可能性への着眼点
akippaは現在、駐車場を提供したいオーナーが自身で登録できるCtoCプラットフォームの構築を進め、個人オーナーのさらなる増加を狙っています。そんな中、駐車場の開拓におけるtoB市場においては、ロードサイドの大規模チェーン店舗との連携を目指していくのが良いと感じます。
例えば、コンビニの駐車場をアキッパで予約可能にするアイデアです。コンビニの駐車場には、6台以上のスペースがあるにもかかわらず空きが目立つ店舗も多く存在します。このようなスペースを予約可能にすることで、訪問先に駐車場がない営業担当や、子どものスポーツ観戦をする親御さんにとって大きな助けになるでしょう。
原体験から生まれるビジネスアイデア
金谷氏が創業時に掲げたのは、「駐車場がなくて困る」という多くの人が抱える問題への具体的な解決策でした。この課題は、筆者自身も営業職として活動していた際に痛感したものです。訪問先近辺に駐車場が見当たらず、仕方なく遠方のパーキングを利用して徒歩で向かった経験は一度や二度ではありません。さらに、最近は子どものサッカーの試合で郊外の学校を訪れる際にも、周辺に駐車場がないことがしばしば。徒歩20分以上かけて駐車場から目的地まで向かう不便さに、実体験として悩みました。
コンビニ駐車場の活用という新提案
私が感じる「困りごと」の解決方法として、コンビニエンスストアの駐車場をアキッパのプラットフォーム上で活用するというアイデアです。大手コンビニチェーンの店舗数は各社1万件以上。郊外店舗の多くが複数台分の駐車スペースを有していますが、常時満車になる店舗は限られています。自身の記憶でも郊外の学校の近くに駐車場が数台空いており、店長に1,000円払うから停めさせてくれないか?と交渉したくなる時があります。
こうしたスペースの一部をアキッパ専用の予約可能な駐車場として活用すれば、利便性が格段に向上します。特にスポーツ観戦や子どものイベント参加時に、徒歩圏内の駐車場が見つかることで「駐車場迷子」の問題を大幅に減少させることができるでしょう。
市場拡大のポテンシャル
この取り組みが成功すれば、企業としても、多くの遊休スペースの有効活用を図ることで、新たな収益源を生み出せるメリットがあります。もちろん、利用可能な店舗のセグメント化や空き台数の適切な管理といった課題は残りますが、これを解決する技術やパートナーシップがアキッパの市場競争力を高める鍵となるでしょう。
駐車場不足という社会的課題に対し、アキッパは革新的なソリューションを提供し続けています。都市部や郊外で「駐車場に困った」という経験を持つすべての人々に、アキッパが今後どのようなパートナーシップを行い、利便性を提供していくのか。その成長に期待したいです。
アキッパの成功は、ビジネスにおける基本原則を教えてくれます。優れたプロダクト、顧客ニーズを捉える力、そして圧倒的なセールス力があれば、マーケティングに依存せずともビジネスを伸ばすことができるのです。このモデルがさらにどのように進化していくのか、今後の展開が非常に楽しみです。
Profile
金谷 元気(かなや・げんき)
akippa株式会社 代表取締役社長 CEO。
1984年、大阪府生まれ。高校卒業後Jリーガーを目指し関西リーグなどでプレー。引退後から2年間は上場企業で営業を経験し、2009年2月に24歳で創業。2011年、株式会社へ組織変更し代表取締役に就任。著書に『番狂わせの起業法』(かんき出版)がある。
akippa Webサイト
https://www.akippa.com/
金谷元気さん X
@genki_kanaya
みる兄さん
匿名アカウントなマーケター。
X:@milnii_san
note:https://note.com/milnii
みる兄さんの「話題のプロダクトについて考えてみた」シリーズ一覧
記事執筆者
早川巧
株式会社CINC社員編集者。新聞記者→雑誌編集者→Marketing Editor & Writer。物を書いて30年。
X:@hayakawaMN
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