夢に見たパリ五輪の舞台で“静岡県勢”の関根大輝(柏レイソル)と鈴木海音(ジュビロ磐田)が感じたこと「五輪は素晴らしかった」
【サッカージャーナリスト・河治良幸】パリ五輪の男子サッカー日本代表は準々決勝でスペインに0−3で敗れて大会を終えた。男女ともにメダル獲得はならなかったが、今後はこの大会で得た経験をどう先に繋げていくかが重要だ。
大岩剛監督が率いた男子代表はオーバーエイジ枠を使わず、U-23の選手だけで挑んだ。パラグアイ、マリ、イスラエルと対戦したグループリーグは3連勝を収め、D組1位で準々決勝に進んだ。準々決勝では東京五輪で銀メダルを獲得したスペインに内容面では善戦したが、今は0−3という結果に終わった事実を真摯に受け止めるしかない。
静岡県勢からは静岡学園の出身で、大学4年生のDF関根大輝(柏レイソル)とJFAアカデミー福島OBのMF三戸舜介が本メンバーで参加した。また大会直前にレギュレーションが変わり、18人のメンバーとバックアップを試合ごとに入れ替えられるようになったことで、バックアップだった鈴木海音(ジュビロ磐田)は3試合目のイスラエル戦で五輪のピッチに立った。追加招集でバックアップに登録されたJFAアカデミー福島育ちの植中朝日(横浜F・マリノス)も2試合で途中出場した。
準々決勝で戦い終えた“大岩ジャパン”は8月5日に帰国。関根大輝と鈴木海音に話を聞くことができた。
関根「足の伸び方が違った」
イスラエル戦をのぞく3試合でフル出場した関根は「色々と課題はあるんですけど、すごいいい大会だったのかなっていうのは個人的には思います」と率直な気持ちを語った。
関根はJリーグでは体感できない国際大会の雰囲気やレベルを経験し、個人として通用したところ、足りないところをダイレクトに実感できたという。
「南米とかアフリカの相手と対戦したことがなかった。足の伸び方も全然違いましたし、フィジカル面も全然…。やっぱり日本では体感できないようなものをこういう舞台で経験できた」
特にスペイン戦で得たものは大きかったようだ。「最初に点は取られましたけど、それでも全然いけると思ってやっていた。だからこそ、立て続けに失点してしまったのはもったいなかったけれど、日本のサッカーは全世界にも通用すると思ったし、個人のレベルとしてもやれるという手応えをつかめた」
関根が衝撃を受けたスペインの選手は…
関根が衝撃を受けたのは、同じ右サイドバックのマルク・プビル(スペイン)だった。ラ・リーガのアルメリアに在籍する190センチの大型サイドバックは高度なテクニックも持ち合わせている。
関根は「自分よりデカくてうまいやつがいるんだなというのはオリンピックに出てなかったら経験できなかった」と認める。試合では一番離れた場所で、直接マッチアップすることはなかったが、一つ一つのボールコントロールからパス出しまで、目を見張っていたという。
縦の推進力など、おそらく関根が上回っている要素もあるだろう。それでもピッチ上で感じたクオリティの差をどう埋めていくか、Jリーグでより突き詰めていくことが大事になる。
同時に、国を背負って戦うことの重みをかみしめ、A代表を目指すモチベーションが強くなった大会でもあったという。「スペインに負けて、本当に悔しかった。その思いを次はA代表で晴らしたい」
チャンスがあれば欧州にも挑戦したいというが、まずは柏レイソルで、練習からこれまで以上に、こだわりを持って取り組んでいくことになる。
鈴木「もっと上の舞台に」
鈴木はバックアップに回ることが決まった時点で、気持ちを切り替えてA代表を目指していくビジョンを語っていた。実際に開幕前のフランスとのテストマッチの時点では日本にいたが、開幕直前にレギュレーションが変更されたことにより急きょ、荷物をまとめてフランスへと飛び立った。
「複雑な気持ちは特別なくて。あっちでチャンスを掴むか掴まないかは自分次第だなって思っていた」。そう心境を振り返る鈴木はチームの活動を通して、声をかけ続けることを心がけていた。
日本がパラグアイ戦とマリ戦に勝利し、2試合でグループリーグ突破を決めた後、それまで出番のなかった鈴木は「もしかしたら自分あるなと思った」という。予想通りイスラエル戦にスタメンで起用されると、パリまで観に来た家族の前で、無失点につながる守備で1−0の勝利に貢献した。
準々決勝スペイン戦の0−3の敗戦をベンチで見届けた鈴木は「やっぱりオリンピックという舞台は素晴らしいものだなと。この舞台を経験したからこそ、もっと上の舞台を経験したい」と語った。
磐田でさらに成長を見せて、目標として語っていた海外移籍を実現させること。A代表に食い込んでいくこと。野心を持って、残りのリーグ戦に挑んでいくことになりそうだ。
大岩監督「次はA代表しかない」
大岩監督は「次はA代表しかない」と選手たちを送り出した。一つ流れを引き寄せることができていれば、十分にメダル獲得もできたチームだったが、ここで得た自信と足りなかったところの両方を一人ひとりが持ち帰って、これからに繋げていけるか。
パリ五輪を経験した関根や鈴木、三戸、植中はもちろん、メンバーに入らなかった静岡県勢の選手たちにも、悔しさをバネにこれからの飛躍を期待したい。