人との距離をはかる境界線って?人によって違う境界線の大きさ・厚み【12歳までに知っておきたい男の子のためのおうちでできる性教育】
人との距離をはかる「境界線」がある
人は生まれたときから体と心に「境界線」をもっています。目に見えるものではありませんが、身体的・心理的に自分が心地よいと感じる人との距離を保つ線で、自分を守り、安心で安全に生きるためのバリアともいえます。
この境界線は、人によって大きかったり小さかったり、厚かったり薄かったりとさまざま。たとえば、誰とでもすぐ仲よくなるタイプ、警戒心が強いタイプなど、個人によって性格が異なるように、この境界線の大きさや厚みも人によって異なります。
「体の境界線」は、自分と人との物理的な距離のこと。家族でもハグしたいとき、反対にそばに来てほしくないときがあるかと思います。今、どのくらいの距離が自分は心地よいと感じるのか、自分で考えて相手に伝える必要があります。
「心の境界線」は、自分の気持ちや考えは自分のものとして確立していて、人とは心地よい距離感を保ってよいということ。「ちょっと違うな」と思ったら、人のいいなりにならなくてもよいのです。
この境界線が、ピンチになるときがあります。それは、自分が許可していないのに、境界線の内側に入ってこられたとき。たとえば、暴力をふるわれたり、ベタベタ触られたとき。個人的な事情に踏み込んだことをいわれたり、強要されたとき。モヤモヤしたり、イヤな気持ちになったりします。その「イヤだ」という気持ちは、大事なこと。自分の体は自分のもの、自分の心は自分のものなのです。
人は、「からだの保全」「からだの自己決定権」といった権利をもっています。
「からだの保全」とは、個人の心身をそのままの状態で保護すること。個人のプライバシーや境界線が守られ、誰からも侵害されていない状態のことです。
「からだの自己決定権」とは、自分の体について、選択できるということ。「いつ、どこで、誰と、どのような性的な関係をもつか、もたないか。子どもを生むか、生まないか、いつ生むか」という選択を自分で選べる権利があります。
これら「からだの保全」「からだの自己決定権」が侵害されたら性暴力であると、国連女性機関で決められています。
人によって境界線は違う
性被害、いじめ、児童虐待など子どもが被害者になる事例が後をたたない今、改めて子どもの人権を守るための活動が積極的に行われています。1989年に採択された、世界の国々で話し合い決まった「こどもの権利条約」があります。子どもが幸せに生きていくために、守られるべき権利が決められています。
この条約でいう子どもは、18歳未満の人のことです。「こどもの」とありますが、子どもを育てる親もこの条約を守っていかなければならないといわれています。差別されないこと、子どもの人生は子どものものであること、生きる権利があることなどが提示されています。
ONE POINT
【出典】『12歳までに知っておきたい男の子のためのおうちでできる性教育』著: 高橋幸子