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多くの名選手を輩出してきた全国高校サッカー選手権。第103回大会開幕前に“選手権組”で現役最強チームを作ってみた

アットエス

【サッカージャーナリスト・河治良幸】
第103回を迎える全国高校サッカー選手権はこれまで多くの名選手を輩出してきた。今回は選手権を経験した現役のプロ選手でスタメンとベンチメンバーを選び、現在の“最強チーム”を組んでみた。

【スタメン】
林彰洋(ベガルタ仙台/流通経済大柏高)
チェイス・アンリ(シュトゥットガルト/尚志高)
三國ケネディエブス(名古屋グランパス/青森山田高)
渡辺剛(ヘント/山梨学院)
毎熊晟矢(AZ/東福岡高)
岩崎悠人(アビスパ福岡/京都橘高)
松木玖生(ギョズテペSK/青森山田高)
旗手怜央(セルティック/静岡学園)
乾貴士(清水エスパルス/野洲高
大迫勇也(ヴィッセル神戸/鹿児島城西高)
小川航基(NECナイメヘン/桐光学園)

【ベンチメンバー】
北村海チディ(藤枝MYFC/関東第一高)
関川郁万(鹿島アントラーズ/流通経済大柏高)
畑大雅(湘南ベルマーレ/市立船橋高)
関根大輝(柏レイソル/静岡学園高)
宇野禅斗(清水エスパルス/青森山田高)
浅野拓磨(マジョルカ/四日市中央工業高)
鈴木唯人(ブレンビー/市立船橋高)

GKは最も難しい選考に…

清水商業(現清水桜が丘)を全国制覇に導いたGK川口能活=1994年1月

GKはかつて川口能活(清水商業高/現・清水桜が丘高)や楢崎正剛(奈良育英高)らJリーグや日本代表でもレジェンド級の選手が選手権のピッチに立ってきたが、近年は海外トップリーグや日本代表、J1で活躍するGKがクラブユース出身の選手で占められる傾向にあり、今回の企画ではもっとも難しい選考になった。

北村海チディ(左)と林彰洋


そうした中で頼れる存在が林彰洋(ベガルタ仙台/流通経済大柏高)だ。全国で勝つより難しいとも言われる千葉県で選手権の出場は3年時(第84回)のみ。2回戦で山口代表の多々良学園に敗れてしまったが、大学から直接イングランドに渡り、ベルギーでも経験を積んで清水エスパルスに加入。その後、サガン鳥栖、FC東京を経て、現在はJ2仙台の守護神に君臨している。今シーズンは昇格プレーオフの決勝で惜しくも敗れたが、その安定感がチームにもたらしているものは大きい。

ベンチには北村海チディ(藤枝MYFC/関東第一高)を選んだ。東京都B代表として1年時(第95回)と2年時(第96回)の選手権で全国の舞台を踏み、第95回は1回戦で途中投入されて、野洲高を相手に1−0の勝利を飾っている。その後、桐蔭横浜大での成長を評価されて、昨年から藤枝に加入。178センチのサイズながら抜群の反射神経と攻撃センス、前向きなメンタリティを強みに、正GKとしての立場を確立してきている。

3バックはあの3枚

三國ケネディエブス


ディフェンスラインはチェイス・アンリ(シュトゥットガルト/尚志高)、三國ケネディエブス(名古屋グランパス/青森山田高)、渡辺剛(ヘント/山梨学院)というなかなか迫力のあるメンバーが揃った。ベンチには関川郁万(鹿島アントラーズ/流通経済大柏高)が控える。

チェイスは1年時(第98回)と3年時(第100回)に福島県の代表として選手権に出場。第98回は途中出場でPK戦で初戦敗退となったが、第100回大会は注目選手の一人として活躍が期待された。1回戦は広島県の瀬戸内高と0−0でPK戦に。チェイスはトップキッカーとしてしっかり決めて、初戦突破に導いた。2回戦も関東第一高を相手に、再び0−0でPK戦になると、チェイスはまたも最初のキッカーとして決めたが、チームは敗退となった。卒業後はドイツに渡り、元磐田の伊藤洋輝(バイエルン・ミュンヘン)も在籍していたシュトゥットガルトのBチームからトップ昇格して、現在はセンターバックの主力として欧州チャンピオンズリーグにも出場するなど、A代表入りも秒読みの状況だ。

現在、三國は名古屋の主力センターバックとして活躍し、今後のA代表入りも期待される。中学時代はFWとして全国制覇も経験したが、青森山田高では現在J1町田の監督を務める黒田剛監督のもとで、途中からセンターバックにコンバート。3年時(第97回)には中心選手として選手権優勝に大きく貢献。その後、アビスパ福岡に加入した。

渡辺はFC東京の下部組織からユースに昇格できず、山梨学院大学附属高校に進学。当時は小柄だったが、急速に伸びるとMFからセンターバックにコンバートされて、3年時(第93回)に選手権で3回戦まで勝ち進むと、前橋育英高にPK戦で敗れたものの、大会の優秀選手に選ばれた。中央大学でさらなる成長を遂げて、念願だったFC東京に加入している。ベンチには三國と同じ第93回大会などで活躍した関川郁万(鹿島アントラーズ//流通経済大柏高)を選んだ。

両翼の選択は…

岩崎悠人(左)と毎熊晟矢


左右のアウトサイドは岩崎悠人(アビスパ福岡/京都橘高)と毎熊晟矢(AZ/東福岡高)の両翼に。岩崎は1年時(第93回)から選手権に出場して優秀選手に輝き、第93回は京都橘キャプテンとしてチームを牽引した。高校卒業と同時に、当時J2だった京都サンガに加入。3年目で北海道コンサドーレ札幌に移籍すると、なかなか主力に定着できないまま、期限付き移籍を繰り返すなど苦しい時期を過ごしたが、サガン鳥栖でブレイク。2022年には日本代表に選ばれてE-1選手権に出場した。

毎熊は名門の東福岡高でなかなかトップチームに上がれなかったが、3年時(第94回)は藤川虎太朗(ジュビロ磐田)や鍬先祐弥(ヴィッセル神戸)を擁するチームでジョーカー的な役割を担い、全国制覇に貢献。しかし、当時そこまで知られた選手ではなく、桃山学院大学で頭角を表して、プロ入りを果たす。V・ファーレン長崎でアタッカーから右サイドバックにコンバートされたことが転機となり、移籍先のJ1セレッソ大阪でブレイク。日本代表にも選ばれるなど、国際的な評価も高めて欧州移籍につなげた。

ベンチには畑大雅(湘南ベルマーレ/市立船橋高)を選んだ。1、2年生の時は千葉県大会で敗れたが、第98回大会で全国を掴むと、爆発的なスピードで注目を集めた。3回戦で日章学園(宮崎県)との激闘の末に、PK戦で敗れてしまったが、畑は優秀選手に選ばれている。

静岡学園が初の単独優勝を果たした第98回大会

第98回大会決勝・静岡学園ー青森山田 鋭い突破を披露した松村優太(左)=2020年1月


この第98回大会で優勝した静岡学園は松村優太(東京ヴェルディ)が中心のチームだった。2年生のメンバーには日本代表の関根大輝(柏レイソル/静岡学園高)もいたが、出場時間は1分だった。関根は3年次に主将を務めたが、静岡県大会の準決勝で藤枝明誠高に敗れて姿を消すことに。しかし、その悔しい経験を拓殖大で生かし、大学卒業を待たずして柏とプロ契約、さらにパリ五輪に出場、A代表に招集というサクセスストーリーはご存知の通りだ。

第98回大会決勝・静岡学園ー青森山田 1年生ながら出場した松木玖生(左)。右は現在藤枝MYFCの浅倉廉=2020年1月


第98回大会はその後、プロで活躍する多くのタレントが参加した近年の“当たり年”だった。1年生ながら優秀選手に輝いたのが松木玖生(ギョズテペSK/青森山田高)だ。その時は決勝で静岡学園高に敗れて準優勝、さらに第99回大会では同じく決勝で山梨学院にPK戦で敗れて涙を飲んだが、記念すべき第100回大会ではキャプテンとして青森山田を優勝に導き、大きく評価を高めた。その後、海外挑戦も噂される中でFC東京に加入。高卒ルーキーで中盤のスタメンに定着するなど、目覚ましい活躍を見せて、欧州に羽ばたいている。

MF旗手怜央(静岡学園)は2年時に優秀選手に

第93回大会3回戦・静岡学園―東福岡 先制ゴールを決めた旗手怜央(中央)=2015年1月

中盤では旗手怜央(セルティック/静岡学園)も現役選手を代表する選手権組の一人だ。三重県の鈴鹿市で幼少時を過ごしたが、シズガクに進学すると2年時(第93回)には名古新太郎(鹿島アントラーズ)が10番を背負うチームでスタメンに名を連ねて、2得点を記録。準々決勝で敗退したが、名古や渡邊凌磨(浦和レッズ/前橋育英高)とともに、優秀選手に選ばれている。

しかし、完全な中心選手として期待された第94回大会は県大会の準決勝で、清水桜が丘高(旧・清水商業)に敗れて高校サッカーでの挑戦を終えることとなった。そこから順天堂大で得点力を開花させて、三笘薫(ブライトン)とともに川崎フロンターレで躍動。セルティック移籍やA代表定着に繋げている。

ボランチでは宇野禅斗(清水エスパルス/青森山田高)をベンチメンバーに入れた。松木と同じく第100回大会のメンバーであり、プロ入り後も当時J2だったFC町田ゼルビアで持ち前のファイターぶりを発揮して、昨年のJ1昇格を支えた。今シーズンは夏に育成型期限付き移籍で清水に加入したが、中盤で攻守に幅広く関わり、J2優勝&J1昇格に大きく貢献。今後の飛躍が期待される若手選手の一人だ。

大迫、小川の2トップ

小川航基(左)と大迫勇也


アタッカーは大迫勇也(ヴィッセル神戸/鹿児島城西高)と小川航基(NECナイメヘン/桐光学園)の強力2トップを乾貴士(清水エスパルス/野洲高)が操る構成に。大迫は第87回大会で10得点を記録した。惜しくも準優勝に終わったが、準々決勝の滝川第二高との対戦で、後方からのロングパスをアクロバティックにトラップするなど、圧倒的なパフォーマンスで6−2の大勝に導くと、対戦相手の「大迫半端ないって」という言葉が注目を集めて、2018年のロシアW杯では全国的な流行語となった。

プロでは鹿島アントラーズからドイツに渡り、2021年に帰国して、神戸でJリーグ復帰。当時はコンディションや日本の環境に苦しんだが、昨年は22得点で神戸のリーグ優勝の立役者となり、MVPも獲得。今年もベストイレブンに選ばれる活躍でリーグ2連覇、天皇杯との2冠に大きく貢献している。

小川は1年生で選手権を経験し、3年次(第94回)には押しも押されぬ桐光学園のエースとして注目を集めた。その期待通り、順調に得点を重ねたが、3回戦では後に清水などで活躍する神谷優太(ファジアーノ岡山)を擁する強敵の青森山田高を相手に2得点をあげながら、PKを外してハットトリックを逃すと、PK戦でも5人目のキッカーとして失敗。選手権の歴史でも悲劇の1ページとして今でも語り草となっている。

高卒でジュビロ磐田に加入した小川は安定した結果を残せないまま、プロ7年目となる2022年に横浜FCへ移籍したが、J2ながら26得点と爆発的な結果を残して、翌年はJ1で半年プレーしたのち、夏にオランダ移籍。いきなりシーズン11得点を記録して、2019年のE-1選手権から4年ぶりのA代表入りを果たした。目標とする26年のW杯出場に向けて、好アピールを続けている。

セクシーフットボールの中心で輝いた乾

乾貴士


乾は第84回大会で、驚きの快進撃で全国制覇。当時の野洲高が披露したパスとドリブルを織り交ぜた攻撃的なスタイルは“セクシーフットボール”とも呼ばれたが、左ウイングの乾はその象徴的な存在だった。3年時(第85回)はより中心的な存在となり、相手の徹底マークに苦しみながらも2得点を記録したが、3回戦で敗退した。清水をJ1昇格に導いた今年の活躍はここで語るまでもないが、選手権のヒーローがそのままプロでの成功につなげることが難しくなっている現在、乾は大迫とともに、選手権組のシンボリックな存在と言える。

ベンチには浅野拓磨(マジョルカ/四日市中央工業高)と鈴木唯人(ブレンビー/市立船橋高)をアタッカー枠として入れた。カタールW杯のドイツ戦での決勝ゴールが記憶に新しい浅野は選手権に3年連続で出場しており、2年次(第90回)には全試合でゴールを記録して、大会得点王に輝いている。その活躍とプロでの実績からすれば、スタメンに入れてもおかしくないが、現在の最強チームということで、大迫や小川との兼ね合いで、ジョーカー的な位置付けにさせてもらった。

鈴木は横浜F・マリノスのアカデミー育ちで、上記の畑と同じく第98回大会で、市立船橋高で攻撃の中心を担ったが、3回戦で敗退。それでも彼のポテンシャルを高く評価した清水エスパルスに加入し、1年目の夏から徐々に出番を増やすと、3年目の2022年には追加ながらA代表に初招集された。夏に挑戦したフランス1部のストラスブールではリーグ戦3試合の出場に終わり、志なかばで清水に復帰したが、再渡欧となったデンマークでブレイク。今年6月のミャンマー戦で正式なA代表デビューを果たすなど、エスパルスで育った選手としてもさらなる飛躍が期待される。

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