初の宇宙飛行士ゲストに、ジュンコも出水も質問攻め! 山崎直子さん
ファッションデザイナー:コシノジュンコが、それぞれのジャンルのトップランナーをゲストに迎え、人と人の繋がりや、出会いと共感を発見する番組。
山崎直子さん
1970年、千葉県松戸市生まれの日本人宇宙飛行士。東京大学大学院工学系研究科を修了後、宇宙開発事業団に入社。国際宇宙ステーションの開発業務に従事しながら宇宙飛行士を目指し、2度目の受験で宇宙飛行士に選抜され、2人目の日本人女性宇宙飛行士として2010年にスペースシャトル・ディスカバリーに搭乗。その後は宇宙政策委員会委員、札幌市青少年科学館名誉館長、女子美術大学客員教授、鳥取県宇宙部長などを歴任しています。
出水:ゲストに宇宙飛行士をお迎えするのは初めてです!
JK:私たちも宇宙船に乗ってる感じ(笑) 胸にワッペンのような・・・それは?
山崎:そうなんです。2010年に国際宇宙ステーションに行った仲間と一緒に作ったデザインのワッペンなんです。スペースシャトルと、国際宇宙捨ステーションと、それぞれに搭載された実験装置を織り込んであります。
JK:見るだけでその時の事を思い出されるわけですね。19Aって何ですか?
山崎:これは国際宇宙ステーションの組み立てミッション、19番目の「Assembly」という意味です。
出水:女性の日本人宇宙飛行士は向井千秋さんに続いて2人目ですが・・・
JK:行きたいって誰でも夢のようにいいますけど、怖くなかったんですか? だって住所も方向も何もないところに行くわけでしょ?
山崎:不思議と怖くはなかったです。11年間訓練をしていましたし、むしろ早くいきたいという気持ちの方が強かったです。
出水:山崎さんが搭乗したディスカバリーのSTS131-19Aはどんなミッションだったんですか?
山崎:宇宙ステーションの最後の方の組み立てと物資を補給するミッションでした。イタリア製の「レオナルド」という10トンぐらいの補給モジュールをシャトルに積んで、それをロボットアームで取り出して、取り付ける。その後は中にあるたくさん実験装置を所定の場所に設置していく。引っ越し作業のようなことをしていました。
出水:山崎さんはレオナルドの操縦士として行かれたんですよね。
山崎:はい。国際宇宙ステーションにドッキングする接合部分がいくつかあって、そこにポンと組み立てました。国際宇宙ステーションがレゴみたいに、いくつかのモジュールがつながっているんです。
JK:宙に浮いてるわけじゃなく、つながってるのね。でも地球だって浮いてるもんね・・・だけど動いている・・・なのに私たちは動いてない。なんか子どもっぽい質問だけど(^^;)
山崎:国際宇宙ステーションは地球の周りを秒速8kmぐらい、音速の25倍ぐらい速いスピードでぐるぐる回り続けているんですけれど、90分で1周、1日に16周するので、1日に16回日の出を見ることになるんです!
JK:16回! それ一番フレッシュなお話! 窓は大きいんですか?
山崎:だいたい直径30㎝ぐらいの窓がいくつか。一番大きいのはキューポラと呼ばれているものがあって、球状で中に入ることができます。なので浮きながら地球を見ることができるんです。窓の位置によっては頭の先の地球を見上げているような感覚になります。
JK:すっごく変なこと聞いていいですか・・・お手洗いなんかどうするんですか?
出水:ちょっとジュンコさん、地球がどうだったとかもう少し聞きたいじゃないですか!
山崎:(笑)トイレは飛行機にあるようなちょっとしたトイレがあるんです。大は椅子に座って、すっと掃除機のようなものに吸い取ってもらうんですが、小は掃除機のような管を当ててすっと取ってくれるんです。小はリサイクルして、飲み水にして飲みます。
出水:えっ、飲み水になるんですか?! いろいろ考えられてますね!
JK:本当に想像つかないですね! でも誰でも宇宙に行きたいって夢があるでしょう? 私コンコルド乗ったことあるんですよ。パリからNYまで。瞬間にパーッと下がなくなるぐらいすごいスピードで。でも音がすごくうるさくて、耳が痛くなるんです。耳栓しても痛いぐらい。ロケットもそうですか?
山崎:私たちもものすごく揺れて、ものすごい音とともに打ちあがっていくんですが、ノイズキャンセリングというヘッドセットとヘルメットをしていくので耳はうるさくないんですが、骨に直接響いてきました。
JK:それはちょっと怖いですね! よく耐えましたね!
出水:振動がすごくて、でもある瞬間ふわっと、宇宙に到達したなって気づくんですよね? どのぐらいかかるんですか?
山崎:たったの8分30秒なんです。打ちあがって8分30秒経つと、もう宇宙空間。エンジンが止まると、シーンとした静寂の世界です。そして無重力なので、ふだん下に溜まっている埃が舞い上がるんです。きらきらと光を受けて輝く様子が幻想的だったのを覚えています。
出水:想像力をかきたてられますね! 宇宙飛行士になるためには様々な条件があると聞いたんですけど?
山崎:ずっと変わらずにある条件としては「3年間働いた経験があること」。昔は理系でないとダメとかありましたが、今はどの分野でも大丈夫です。また昔は着衣水泳で10分間、75m泳げることが条件だったんです。
出水:水に強いことと宇宙は関係あるんですか?
山崎:私たちも船外活動の訓練はプールで行います。それとは別に、宇宙船が最後地球に戻る時、不時着水した際に、救助隊が来るまで自分たちで戻れるようにいけないので。ただ今は受験時の条件ではなくて、訓練の中で身につけられればいい、と変わりました。
出水:健康なのはもちろんですが、体重もある程度必要だと聞いたんですが? 軽い方がいろいろ積めるからいいような気もするんですが?
山崎:ロシアのソユーズ宇宙船だと体重が50kg以上という条件があったんですが、今はいろんな宇宙船があるので、体重制限はないです。ソユーズはカプセル型の宇宙船なので、地球に戻る時にパラシュートで草原の上に落ちるわけです。時速30㎞ぐらいの衝撃があって、バネが吸収してくれるんですけど、体重が軽すぎると吸収しきれないので、ある程度の体重が必要。
JK:私も興味があるからNASAに行ってね・・・
山崎:あっ、宇宙服を着てらっしゃる! まさに私も同じ、オレンジ色のパンプキンスーツと呼んでいたのを着てました(^^)
JK:すぐこういうのに憧れちゃうの。無重量のところには行ってないんですけど、格好だけ(^^)
出水:パンプキンスーツは装備として頑丈そうですし、分厚そうですが、機能は?
山崎:万が一帰還の時に空気が漏れてしまった時、この宇宙服だけで1時間ぐらい身を守れるんです。密閉できるもので、背中にパラシュートも背負っているんです。一式合わせると45kgぐらいあって、けっこうズシンズシンと重いものでした。今はもうちょっと軽量型のものもできています。
出水:山崎さんの滞在期間は?
山崎:私は15日間でした。あっという間で。今は半年行ってますね。
JK:半年! ずっと浮いてるんですか?
山崎:そうですね、宇宙船の中は無機質で、エアコンで室温も調整されているので、季節感がないんです。だから時々船長さんがあえて雷の音とか、風の音とか、水が流れる音を流してくれることもありました。地球の自然を思い出すために。
JK:食事はどうするんですか? 電子レンジでチンじゃないですよね。
山崎:宇宙食を食べます。でもカレーのルゥをパッケージのままヒーターで温めたり、ご飯やカップラーメンはお湯を注ぐと温かいものが食べられます。
JK:でもそれが宙に浮いてるから食べにくくないですか? 手巻き寿司も食べたそうですね。
山崎:お皿に盛りつけはできないので、パッケージを持ったまま、スプーンで。地上では食べ物を投げるとお行儀悪いですけど、宇宙では「一口どうぞ」ってポーンと投げると、ふわふわ~と飛んできて、パクっと(笑)
出水:宇宙で食べた手巻き寿司のお味は?
山崎:美味しかったです。生のお刺身はないので、卵焼きとかキンメダイの煮つけとか。でもわさびが人気だったんです! 無重力では身体の血液が上の方に移動するので、足は細くなるんですが顔に水分がたまってむくんでしまうんです。鼻にも水が溜まって鼻づまりのような状態になるので、わさびが鼻にすっと通るというので、けっこうわさびをつけて食べてました(笑)
JK:流行りますね! 宇宙に行くときにはわさび(笑)行った人にしかわからないですよ。
出水:食はモチベーションを上げるためにも大事だと思うんですが、どの程度好みを反映できるんですか?
山崎:宇宙食も300種類ぐらいあって、事前に試食をさせてもらいまして、自分の好きなものを入れることができるんです。それとは別に「ボーナスフード」といって、自分が持ち込みたいもの、たとえばお菓子とか、カレーのルゥとか、嗜好品も持っていくことができました。私は桜の塩漬けのお茶を持っていったんです。水の球を丸く作っておいて、そこに桜の花びらを浮かべると水中花になって。
JK:それすごくかわいい! そういうの売りたいですね! そういうイメージで、ゼリーみたいなのに桜の花びら1枚浮かべて。宇宙食のお土産(笑)
山崎:素敵ですね~(^^)
(TBSラジオ『コシノジュンコ MASACA』より抜粋)