存在感増す!?釜石港 国際コンテナ定期航路が新設 週3便態勢で取扱量、回復期待
釜石市の釜石港に22日、京浜港(東京・神奈川)を経由して海外へコンテナを輸送する「国際フィーダーコンテナ定期航路」が新たに開設された。運航船社は「横浜コンテナライン」(本社・横浜市)。中国海運大手「COSCO(コスコ)」の日本総代理店「コスコシッピングラインズジャパン」(本社・東京)が輸出入サービスで利用する。今回の新設により、釜石港には外貿コンテナ航路週1便、国際フィーダー航路週2便の計週3便の定期航路が就航。トラック運転手の残業規制強化による「2024年問題」で海上輸送への転換が見込まれており、関係者らはコンテナ取扱量の増大と港の存在感アップに期待を膨らませる。
最初のコンテナ船「公龍丸」(749トン)が午前9時15分ごろ、ガントリークレーンが設置された釜石港公共ふ頭に着岸した。全長97メートル、全幅13.5メートルで、189TEU(20フィートコンテナ換算)を積載できる。今回は、中国で製造した量販雑貨や肥料の原料となる鉱石類が入ったコンテナ5個を陸揚げ。欧米向けに輸出するパルプ、除雪機などを収納したコンテナ8個を積み込んだ。
新航路は苫小牧港(北海道苫小牧市)と横浜港(横浜市)を結ぶコスコの既存フィーダー(支線)航路に釜石港を加えた形で運航される。八戸を経て釜石には毎週土曜日に寄港。仙台を経て横浜港で貨物を積み替え、コスコが拠点とする京浜港から世界各国へ運ばれる。
同日、開設を記念した式典が釜石港公共ふ頭であり、関係者約50人が出席した。小野共市長(釜石港湾振興協議会会長)は「堅調に推移していたコンテナ取扱量が新型コロナウイルス禍の影響で乱高下する事態に直面している。先行き不透明な社会経済情勢、2024年問題が顕在化する中、市や岩手県の経済発展の礎になると確信している」とあいさつ。関係者ら12人がテープカットして祝った。
コスコシッピングラインズジャパンの喜多正樹取締役は「2024年問題への対応、脱炭素に向けて海上輸送へかじを切る荷主が増える中、釜石港と国内外の港をつなぐ我々のサービスに可能性を感じている。岩手は盛岡からの鉄道輸送サービスという環境もあり、十二分に生かすことで荷主の期待に応えることができる」と強調。横浜コンテナラインの菱沼昌祐営業部長は「6月はジューンブライド、釜石港と結ばれることになり、感無量。釜石、コスコ、横浜港、弊社がワンチームとなって盛り上げていきたい」と意欲を示した。
釜石港は今年1月に開港90周年を迎えた。東日本大震災以降、県内に工場がある自動車メーカーの完成車物流は休止されたままだが、新たにコンテナ物流に活路を見いだし、誘致を進めた。11年7月に井本商運(神戸市)が香港の海運会社と連携して国際フィーダー航路を開設。17年11月には韓国船社による中国の主要港と韓国・釜山を結ぶ外貿コンテナ定期航路が新設された。新航路の開設は7年ぶり。今回はコスコ側からの提案を受け、市側も荷主探しに奔走した。
同港のコンテナ取扱量は19年の9292TEUが最多。コロナ禍、中国による海産物の禁輸措置などの影響があり、23年は6444TEUに減った。今年は5月末現在で3168TEUとなっていて、今回の国際定期航路就航でさらに取扱量の上積みが見込まれる。