結束バンドの生演奏は文化祭へ! 再演&続編描く、LIVE STAGE「ぼっち・ざ・ろっく!」2024 PARTⅠ STARRY / PARTⅡ 秀華祭 ゲネプロレポート
『LIVE STAGE「ぼっち・ざ・ろっく!」2024 PARTⅠ STARRY / PARTⅡ 秀華祭』が、2024年9月7日~9日の公演中止を経て、改めて9月14日(土)に東京・THEATER MILANO-Zaにて開幕した。
本作は、芳文社「まんがタイムきらら MAX」にて連載中のはまじあきによる漫画『ぼっち・ざ・ろっく!』、及びアニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』を原作とした舞台化第2弾。「PART I STARRY」では初演の再演が、「PARTII 秀華祭」では続編のストーリーが描かれる。初演を経験したことでより磨きのかかった芝居×生歌唱×生演奏で奏でられた、続編「PARTII 秀華祭」のゲネプロ公演の様子をお届けする。
約1年ぶりの“結束バンド”! 関係性も演奏も、より深く
「バイブス上げていきますよー!」と、元気いっぱいな主人公・後藤ひとり(守乃まも)の妹・後藤ふたり(岡 菜々美/津久井有咲のWキャスト、ゲネプロは岡が出演)の前説で客席がしっかり温まると、物語はぼっちを極めた後藤ひとりの夏休みへ。
前作で結成した“結束バンド”のメンバーたちとの夏休みらしい友情イベント、文化祭でのライブ出演……。極度の人見知りで陰キャな“ぼっちちゃん”ことひとりには荷が重い、けれど妄想の中では何度も憧れた青春イベントが、原作への愛とリスペクトあふれる芝居と演奏と演出とで描かれていった。
前半は結束バンドの面々が、江ノ島へ遊びにいく。行き先が海だと聞いて脳内パニックのうちに魂が抜けてしまったひとりの様子や、電車移動の様子は、初演からさらにパワーアップした “ぼっち〜ず”が大活躍。“ぼっち〜ず”とは、舞台ならではの手法で表現されたひとりのイマジナリーフレンドたち。ひとりの妄想を演じたり、ひとりと脳内会議を繰り広げたり、セット転換をしたりと、今作もアグレッシブかつコミカルに作品に“舞台らしさ”をトッピングしていった。
その中央に佇み、ときにあたふたと、ときに斜め上のズレた方向に暴走する、守乃はまさに“ぼっちちゃん”そのものだ。とくに、今回は演奏シーンが後半に集中しているため、序盤はとことん陰キャなオーラに染まっている。とてもギターなんて人前で弾けそうには見えない。その印象が強くなればなるほど、後半で描かれる文化祭でのひとりの成長と演奏が鮮やかに浮かび上がる。
結束バンドのメンバーは、初演時にオーディションを経て選ばれている。ひとりだけでなく、ドラムの伊地知虹夏(大竹美希)、ベースの山田リョウ(小山内花凜)、ギター/ボーカルの喜多郁代(大森未来衣)、それぞれが初演よりさらに一歩、キャラクターの内面に踏み込んで演じている印象を受けた。セリフとセリフの間や演奏の合間といった、ふとした瞬間に見せる表情に、自然体ながらもキャラクターらしさを見せてくれた。
4人の結束バンドらしさは、本編が終わってのカーテンコールでもにじみ出る。ひとり役の守乃がアワアワとまとまらない挨拶を口にすると、虹夏役の大竹がしっかりフォローし、喜多ちゃん役の大森は曇りなきピカピカの笑顔で見守る。そんな3人を横目にリョウ役の小山内はくすりと笑いをこぼす。4人の役者としての関係値も、ストーリー上での結束バンドとしての関係値も深まりを見せ、改めて彼女たち4人が“結束バンド”なのだと感じさせてくれた。
SICK HACKが舞台初登場! サイケデリックロックを響かせる
初演に続き、本作もライブシーンは圧巻。初演では演奏していない楽曲も披露され、客席はゲネプロながら歓声が飛び交い、さながらライブハウスのような盛り上がりを見せた。漫画やアニメでも印象的に描かれている、文化祭ステージでのライブが舞台でどう表現されたのか。ぜひ劇場で、生演奏と生歌唱と“ぼっちちゃん”の超絶技巧を浴びながら体感してみてほしい。
結束バンドの演奏力の高さは、多くのファンが初演で感じたことだろう。この続編では、音楽的にもう一つの見どころが加わる。それが、新宿のライブハウス“FOLT”を拠点としているSICK HACKのライブシーンだ。
初演ではひとりとの見事な路上セッションを見せた廣井きくり(月川 玲)に加え、本作では新たにバンドメンバーの岩下志麻(未結奈)と清水イライザ(斉藤瑞季)が登場する。志麻役の未結奈は本作が舞台初出演となるプロドラマー。イライザ役の斉藤はひとりの母・後藤美智代役も演じており、数多くの2.5次元舞台にも出演してきた実力派俳優だ。
そんな3人の奏でるSICK HACKのサイケデリックロックな音色は、たしかな演奏技術で客席をアングラな世界観へと一気に引きずり込んだ。結束バンドとはまた違った音の重なりを一度の公演で味わえる。今作はまさにロック好きにはたまらない内容だろう。
初演から続投となる伊地知星歌(河内美里)やPAさん(堀 春菜)、ギタ男(ピーターピーター)らの安定感は抜群。さらに、後藤直樹/吉田銀次郎役として梅棒の野田裕貴が新たに参加したことで、後藤一家のシーンや“ぼっち~ず”登場シーンがよりテンポよくダイナミックなものとなった。
生演奏を体感できる——これは舞台だからこそ味わえる醍醐味だ。映像や録音といった形でもライブシーンは表現できるだろうが、LIVE STAGE「ぼっち・ざ・ろっく!」は、どこまでも“生”での表現にこだわった。そんなロック魂あふれるカンパニーの熱量と、熱血にはなりきれないひとりのキャラクター性が織りなす絶妙な空気感こそ、このLIVE STAGE「ぼっち・ざ・ろっく!」の魅力だろう。結束バンドの始まりと、次の一歩が味わえるLIVE STAGE「ぼっち・ざ・ろっく!」2024 PARTⅠ STARRY / PARTⅡ 秀華祭で、“音楽の秋”を堪能してみてはどうだろうか。
取材・文・撮影=双海しお