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帯広で話題の喫茶店「20歳でオーナーに」Uターンで叶えた夢とは【帯広市大空町】

北海道Likers

画像:北海道Likers

「私はきっと、人に恵まれているんだと思います」

そう語るのは、北海道帯広市大空町にて2025年1月11日(土)に『喫茶イエローストーン』をオープンさせた、伊藤瑠花(いとうるか)さん。

帯広市大空町は町の中心地に近い住宅地でありながら、自衛隊の駐屯地跡地であった歴史や高台で森に囲まれた特殊な立地から、人口減少や交通網の過疎が進み、自治体をあげて再開発が行われている地域です。

地域住民からは“不利”とも言われている場所で、一人で喫茶店経営に挑戦する想い、そしてこれからのことを探るべくお話を伺いました。

伊藤瑠花(いとう るか)
2004年 帯広市出身。広い世界を見たいという思いがずっとあり、その夢をかなえるべく料理人の道へすすむ。
市内高校、帯広調理師専門学校を卒業後は東京の洋食レストランで修行し、2024年秋にUターンし、2025年1月に『喫茶イエローストーン』をオープンしました。

“生まれも育ちも帯広市”。意外な幼少期と進路選択

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生まれも育ちも帯広市。三兄弟の中で唯一の女の子として生まれた伊藤さんは、はじめは大空町の近隣地域に家族で住んでいました。小学校に上がる直前に、親戚が多いので安心かつ通学距離の事情を踏まえて父親の出身地である大空町へ引っ越しました。

そんな家族愛に包まれて育った伊藤さんは、幼少期の自分を思い返すと「人見知りだったので先生とばかり話している子どもだった」と語ります。

とある日に先生が気にかけてくれて、上級生たちが遊んでいる輪に混ぜてくれたそうです。そこから、だんだんと友達をつくったり、委員長や学級のリーダーを積極的にやったり、人と関わることが平気になっていきました。10歳の頃にはふと思い立ち『帯広児童劇団』へ入団。高校卒業までの8年間、演劇に熱中していたそうです。そうして“人前に立つ才能”が開花していきました。

大空で過ごした幼少期の思い出を伺うと、一言でいえば、「ヤバい」。

大空町は利用できる公共交通機関が少なかったり、保護者に中心地のショッピングモールに連れて行ってもらうにも若干距離があったりであまり市内の中心部に行くことができず、近所の公園で遊ぶことが多かったそうです。

そのため、必然的に進路選択も上京を意識し、地元の高校を卒業後『帯広調理師専門学校』へ進学。就職先は東京都内の洋食レストランに決まり、料理人の道へ踏み出したのです。

夢だった東京を経て、人生の転機へ

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東京で過ごした1年半は「ひたすら大変だったけど、楽しかった。」と語る伊藤さん。

「とにかく人が多く、何もしていなくても心がすり減る感じがする。東京は住む場所ではないなと思いました。」と語ります。サラリーマンが平然とした顔で満員電車に乗っていることが不思議で、電車に乗るところから新鮮さを感じて毎日忙しく過ごしていたのだそう。

レストランで働いている間は「上司に恵まれたのでやり切れた」と振り返ります。

はじめはキッチンスタッフとして採用され、厨房で働いていました。しかし、時々起きるピリついた雰囲気や、お客さんが見えないクローズキッチン(閉鎖的環境)に気が滅入ってしまい、上司に相談をしました。その結果、店舗で唯一のホールとキッチンをこなす二刀流を経験させてもらったのだとか。お客さんに接客をほめてもらって元気をもらいながら、料理の腕と接客の経験値を積んでいきました。

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慌ただしい日々の中、次第に「自分の店を持ちたい」という夢が膨らんでいったのだそう。帰省した短期間だけでできる間借りカフェやキッチンカー開業などさまざまな選択肢を模索して過ごしていたある日、転機が訪れます。

地元の老舗喫茶『イエローストーン』閉店のニュースです。

地域の憩いの場になっていたのをよく目にしていたことや、自身も何度か来店したことがあるお店の閉店の知らせを聞き「短期間だけでも借りて間借りカフェをさせてもらえないか」と思った伊藤さんは、帰省の予定に合わせてオーナーに直接交渉へ行きました。

交渉の結果は…?

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店内のランプシェードはすべて、ステンドグラス職人の親族が作ってくれたもの 
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伝手をたどって話し合いにいった伊藤さん。オーナー曰く「建物が老朽化しており、お店を取り壊してしまう予定でいる」とのことで「2年間の賃貸契約でお店を開業する」という話を提示されました。

「2年だけ一時的に帯広に戻るのか」、「まだ東京でやりたいことがあるがどうしよう」などさまざまな葛藤をしましたが、「20歳の節目で自分の店を持つチャンス。逆に2年間でやってみたいこと全部挑戦できるのでは」と“背中を押された気持ち”になり、契約を決めました。

そうと決めたら行動までが早く、2024年秋には帯広市へ戻り、家族・親族の力を借りて約3か月の改装工事後、2025年1月にオープンする運びとなったのです。

お店のコンセプトは「ときどき ドキドキできる場所」

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屋号は以前の名前を引き継ぐことにして、まったく新しい形の『イエローストーン』を開店した伊藤さん。営業日の買い出しは家族に手伝ってもらいながら、お店を一人で切り盛りしています。大変なことも多く、試行錯誤の日々ですが「夢をかなえて楽しい」と語ります。

そんな『イエローストーン』のコンセプトは“ときどき ドキドキできる場所”。これからの目標は、「この場所を非日常をときめきを提供する場所にしたい」のだそうです。

不定期のモーニングやバー営業などのイベントだけでなく、自身が大好きな演劇を掛け合わせて「お店を拠点にした演劇団を立ち上げる、という構想も準備中です」とキラキラした目で語っていました。

「軽食喫茶 イエローストーン」詳細情報

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住所:北海道帯広市大空町8-2-6
営業時間:11:00~20:00
定休日:不定休
※詳しくはInstagramをご確認ください

北海道Likersライターのひとこと
期限である2年後やそれより先の未来を見据えてどんどん挑戦していく伊藤さんは、きっともっと大きくなって大空の街に新しい風を吹かせる予感がしました。
お店の今後の展開だけでなく、彼女の未来も楽しみです。

文/村梶 友陽

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※この記事は執筆時点の情報です。最新の情報は各店舗・施設にお問い合わせください。

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