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【バレーボール SVリーグとは?】バレーボールがプロ化してこなかった理由をわかりやすく解説。静岡県三島市に本拠を構える「東レアローズ静岡」も国内最高SVリーグに参入!

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静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは「バレーボールSVリーグ」。先生役は静岡新聞の寺田拓馬運動部専任部長が務めます。(SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」 2024年6月20日放送)

(山田)今回はリスナーの質問に寺田さんが答えていきます。早速ですが、「県内のバレーボール事情について教えてください」という声が届いています。

(寺田)先週放送された「スポーツと応援」の話題でバレーボール日本代表の応援でサーブの時に「そーれ」と言わなくなり、選手がプレーに集中できるよう応援が選手本位に進化しているのではないかという話をしました。そんな最中、今回のネーションズリーグでは、女子日本代表もパリ五輪の切符を決めました。すでに切符を持っていた男子とともに晴れ舞台に挑みます。今、バレーボールが熱いです!

(山田)日本代表同士の夫婦、古賀紗理那選手と西田有志選手の微笑ましいエピソードも話題になりましたね。

(寺田)先日の静岡県高校総体決勝は、男子の浜松修学舎高校が静清高校を下して初優勝、女子は富士見高校が三島南高校に競り勝って6連覇を達成しました。同僚の記者によると「例年より会場の応援の数が多くて盛り上がった」と言っていました。

男子の「東レアローズ」は「東レアローズ静岡」にチーム名を変更

(寺田)そして県内のバレーボールチームと言えば、三島市に本拠地がある男子バレーボールチーム、東レアローズがありますよね。数々のオリンピック選手を輩出し、全日本タイトルも数多く獲得した歴史と伝統のあるチームです。昨季も国内最高峰のVリーグで3位と健闘しました。そんな東レが今月、チーム名を変更したのをご存知でしたか。

(山田)知らなかった...。東レアローズじゃなくなった?

(寺田)いいえ。「東レアローズ静岡」と地域名が付くようになり、より地域との結びつきを強くしようとしています。今年の10月から新たな国内最高峰リーグSVリーグが開幕しますが、このSVリーグに東レも参画します。

これからは将来的なプロリーグ化を目指す「SVリーグ」とその下の「新Vリーグ」に分かれます。SVリーグのチーム名はサッカーのJリーグ、バスケットボールのBリーグに習って「地域名+愛称」になったので「東レアローズ静岡」になったというわけです。

(山田)なるほど。バレーボールのチームは企業名のチームが多いイメージがありました。

(寺田)以前にプロ野球とJリーグ、バスケのBリーグの性格の違いについてお話ししましたが、日本では元々企業主体のプロ野球がある中、Jリーグは「地域に根ざしたスポーツクラブ」を理念に掲げ、「ジュビロ磐田」や「清水エスパルス」のように企業名ではなく地域名をチーム名に入れました。

そして、「開放型」で門戸を広く開き、どんなチームでも地域リーグから勝ち上がり、環境を整えればJ1に上がって行けます。逆にいくら伝統と歴史があっても負ければJ2、J3へと降格する可能性もあるのがJリーグの仕組みです。

また、バスケットボールのBリーグは野球、サッカーに対し、昇格、降格がない最上位の「Bプレミア」をつくり、クラブの経営基盤を安定させて「夢のアリーナ」を各地に整備し、プロ野球同様にドラフトで新人選手を分配してリーグ内の戦力の均衡を保ち、アメリカのNBAを超える世界最高峰リーグの実現を目指すとしています。

静岡にはB2の「ベルテックス静岡」がありますが、バスケットボールは集客が好調で昨シーズンはB1、B2合わせて総入場者数が約425万人となり、昨季から約129万人増と大きく伸びました。女性ファンの心をつかんでいっているそうです。

10月から始まる新リーグSVリーグの特徴は?

(寺田)バレーボールのSVリーグの話に戻りますが、野球やサッカー、バスケットボールとも組織形態が異なります。プロリーグ化を目指しながら当面は今までのVリーグと同じく、企業チームとクラブチームが混在したリーグとして進んでいくそうです。

(山田)選手も企業選手とプロ選手が混ざっているんですね。

(寺田)そうですね。SVリーグは男子が10チーム、女子が14チームでスタートします。現状企業チームが多いですが、その中にクラブチームも含まれます。リーグはプロ化を目指さない「Vリーグ」を別組織として捉え、「SVリーグ」と「Vリーグ」の2つで構成するとしています。

通常、プロ野球やJリーグの選手は所属クラブと個人事業主として契約を結びますが、SVリーグは選手の雇用形態が複数あります。個人事業主になる「プロ選手」、1年ごとに契約を結ぶ「有期雇用の社員選手」、引退してからも社業に専念する「社員選手」の3つに分かれます。

(山田)東レの選手数人とご飯に行ったことがありますが、全員社員選手でオフシーズンは仕事をして、仕事が終わってから練習していると話していました。

(寺田)正直プロ化は全部の選手にいいとは言い切れず難しいところがあります。引退後のキャリアを考え、所属企業にいた方が生活が安定すると考える選手もいます。Jリーガーも多くの選手が20代で引退しています。早い選手だと25〜26歳で選手生命を終える人もいます。

(山田)セカンドキャリアを考えなきゃいけないんですね。

(寺田)そもそもですが、バレーボールがこれまでプロ化をしてこなかったことについてはどう思いますか?

(山田)集客の問題?試合のチケットで利益が出ないから?

(寺田)サッカーはJリーグ発足前はアジアで勝てず、W杯に出たことがなかったです。バスケットボールも国内リーグが分断し、国際バスケットボール連盟から制裁処分を受けて「このままだと国際大会から追放される」という切迫感があり、Bリーグをつくらなければいけなかったという歴史があります。

ところが、バレーボールはプロ化をしなくてもずっと世界ランキング上位で、男女とも五輪で金メダルを取った実績がありました。人気があってテレビ中継があったりママさんバレーの競技人口が多かったりするので、無理にプロ化しなくても困ることがなかったんです。

(山田)強かったのでどっしりと構えていられたんですね。

(寺田)実は今でもバレー界では現状維持を求める声もあるんです。今回のSVリーグは改革を急がない代わりに、2030年に競技だけでなく組織や事業面でも世界最高峰のリーグになるという大きな目標を立てました。

SVリーグに参加するライセンスを定め「ホームゲームを80%以上開催」「観客数5000人以上のホームアリーナの保有」「売上高4億円以上」「ジュニアユースチームを持つチーム」など条件を設けました。東レもその条件を将来的に満たすとしてSVリーグに参画することになりました。

(山田)そう聞くと、バレーボールがまだ模索しつつ、伸びしろがある競技だということが伺えます。

「ハイキュー」人気も相まって東南アジアを中心にバレーボール人気が急上昇中!

(寺田)ちなみにバレーボールの世界最高峰リーグは現在、男子はイタリアのセリエA、女子はトルコリーグと言われていますが、聞くところによるとそんなに大きな体育館で試合を行っているわけではないそうです。追いつけない存在じゃないと関係者の間では言われています。

(山田)もしかしたら日本のSVリーグが世界最高峰のリーグになってしまうかも?

(寺田)そうですね。高校バレーを題材にした世界中で人気がある日本の漫画「ハイキュー」の影響もあり、東南アジアでバレーボールが人気沸騰中です。日本代表選手として海外で活躍するトップ選手も増え、世界の追い風が吹いています。ちなみにSVリーグの「S」って何の略だと思いますか。

(山田)「V」はバレーでしょ。「S」はスーパー?

(寺田)もちろん今までのVリーグの上という「スーパー」の意味はあると思いますが、正式にはStrong(強く)、Spread(広く)、Society(社会)の頭文字から取られました。バレーボールは競技的にも「つなぐ」がキーワードで「強く広く社会とつなぐ」という目標をSVリーグは掲げています。

(山田)「S」に込められた思いからもバレーボールリーグの気合いが伝わってきます。

(寺田)始めからリーグを統一しなくても各クラブが勝敗を競いながら切磋琢磨を続けていけば、自ずと理想のチーム形態に収斂(しゅうれん)するのではないかという考え方のようです。

(山田)学生のバレーボーラーは目標にする舞台が増えてこれから楽しみですね。

今やアイドル顔負けの大人気!チームより個人選手を応援するファンが多い中、課題は地域に根ざすチームづくり

(寺田)東レを含めて男子のバレーボールの選手は、今はアイドルより人気があり、体育館に多くの女性ファンが応援に駆けつけています。バレーボールの応援文化は他のスポーツと違って、チームより選手を応援するファンが多いそうです。

(山田)確かに推しタオルを持っているファンの方をよく見かけるなぁー。大きなカメラを持って選手を撮影していますよね。

(寺田)ははは(笑)。そんなバレーボール人気とは裏腹に地域の浸透度はまだまだのようです。これも同僚の記者から教えてもらった話ですが、東レアローズ静岡の新主将、重藤トビアス赳選手が最近ゴルフを始め、本拠地三島市の隣町、沼津市内にゴルフセットを買いに行った時に身長も191センチと目立つので店員に「何かスポーツをやっているのか?」と声をかけられたそうです。そこで「バレーボールをやっています」と答えたところ「それは趣味ですか?」と言われたそうで...。

(山田)わー。それは重藤選手も悔しかったでしょうね。

(寺田)もちろん三島市での知名度はあると思いますが、まだすべての層に浸透していないそうです。チーム名に「静岡」と付いたので、三島市内や女性ファンだけでなく、静岡県内全域やファミリー層にも試合観戦に来てもらうような仕組みが必要かなと思います。

(山田)東レの選手も、もっと知名度を上げていかなくてはいけないと選手としても課題と捉えていると話をしていました。

(寺田)野球、サッカー、バスケットボール、バレーボールと世界と戦う選手がどんどん増え、日本代表の選手も活躍していますが、国内リーグの将来にもぜひ注目してください!

(山田)寺田さんがバレーボールについて想像以上に熱く語ってくれたので、まだ質問はありましたが、続きはまた今度。今日の勉強はこれでおしまい!

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