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【レポート】「終活ができる寺」證大寺の画期的な試み。生前から遺族に託すラストレターが叶える幸せな最期

「みんなの介護」ニュース

小川 朗

「医師による健康相談」やヘルパーさんのできないことまでしてくれる「日常生活の困りごとサポート」、「お寺タクシー」による無料送迎、「入院時の身元保証」から「終末期の看取り」まで。さらに亡くなった後の百箇日(ひゃっかにち)には、故人から自筆のお手紙が、ご遺族に届きます―

生前墓の購入をキッカケに、専属の担当者が残された人生をサポートしてくれるお寺が登場し、話題となっています。今回は充実した終活サービスを実現した、画期的なお寺を終活認定講師でジャーナリストの小川朗がリポートします。

遺される家族のために作成されるラストレター

人生の終わりを意識したうえで「人生の棚卸し」をしっかりやって、残された日々を不安なく、楽しく生きていくために行うのが終活です。お墓を生きているうちに購入する生前墓は、そのきっかけとなる一つと言っていいでしょう。都内と千葉、埼玉に霊園を持つ「證大寺 昭和浄苑」では、生前墓を購入した方に終活を前面に押し出したサービスを提供しています。

東京・江戸川区の證大寺本坊。ここで生前墓を購入し葬儀の生前予約をした方と、「仏教終活支援士」による「ラストレター」の作成作業が行われています。すでに多くの方がラストレターを作成し、専用の保管部屋に収められました。

「ラストレター」は生前墓を成約した方が受けられる「浄縁 生涯サポートプラン」に含まれたサービスの一つです。予約をされた方が亡くなった後、大切な人に届く手紙がラストレター。例えばお子さんやお孫さんに託す願いやアドバイス。あるいはパートナーへの感謝の気持ち。そうした思いが詰まった「ラストレター」が、お寺から百箇日の法要のときに届くのです。それが遺された方たちの支えになることも少なくありません。

それを書くための準備として「仏教終活支援士」が契約者と一緒に人生を振り返り、ご両親から託された願いや、節目節目で起きた出来事を整理していきます。その中から出てきた、次の世代に託していくための思いや願いが詰まった手紙を作成するわけです。

手紙が届いたとき、多くの人が故人の思いや願いに気づきます。それが心にポッカリと空いた大きな穴を埋めてくれたり、遺族が仲良く生きていくための助けになったりもします。

「ラストレター」を考案したのは、平安時代に起源をもつ證大寺の二十世住職である井上城治さん。そのきっかけは、先代住職の父の、早すぎる死だったと言います。

亡き父への想いを胸に乗り越えた苦難

「ラストレター」の考案者である井上住職(写真提供:證大寺)

東京・飯田橋の東京逓信病院。「1階に古いボックスシートの、昔ながらの喫茶店があるんです。父の病は肺がんでした。父はコーヒーも飲める状態じゃないので、時間にしたら5分とか10分で、大した話はしていないんです。ただそれまでほとんど話をしていなかった父親からわざわざ喫茶店に行くかって言われるのが、やっぱりちょっと嬉しかった。その当時はもう長いことないとわかっていたので、そこで一緒に過ごすための、最後の時間をくれた感じでしたね」。

ただ、その後が大変でした。先代住職が亡くなり後継者となったとき、井上さんはまだ23歳。東京のほか、霊園が千葉・埼玉・福岡にありました。「父の晩年になってからは、有象無象が近づいてきて、誰が味方で誰が父を利用している人かの区別が付かない状態でした。亡くなる前に『亡くなってから来る人は気をつけろ。相手の目をよく見て話を聞くんだ』とか、そういったポイントは言われていた」そうです。しかし、その後多くの苦難が、次々にやってきます。

「火葬場で『君のことは、お父さんから頼まれてるから、なんかあったら全部私に相談しなさい』って言っていた弁護士が実は裏切り者で、父が亡くなる前に書類を全部書き換えていいようにされていたり、その後も手伝ってくれていた身内が立場をいきなりひっくり返したりと、いろいろありました」。

さらに仏教学を突き詰めることと、経営を勉強していくことを同時に求められ「その両立が本当にきつかった」。行き詰まったときに出かけたのが、父と過ごした前述の喫茶店でした。

「亡くなった後はその場所に行って、父が座った場所の向かいに座って、目の前に父がいるつもりで父に手紙を書きました」。その後も井上さんは、何度もこの喫茶店を訪れ、手紙を書くことになります。手紙を書きながら故人と対話をすることで、多くの悩みを乗り越えてきた井上さんが「手紙寺」をつくることは当然の帰結だったと言えそうです。

住職が願う豊かな看取り

ラストレターだけではなく、従来のお寺の枠を超えたサービスが、この「浄縁生涯サポートプラン」には用意されています。例えばお寺タクシーによる月に1度の無料送迎。自宅からお寺に気軽に来られるだけでなく、通院や買い物の場所に迂回してもらうこともできるサービスです。すでにNHKでも放送され、注目を集めています。

お寺タクシー(写真提供:證大寺)
 

また「天井の電球を交換したい」「粗大ごみを出すのを手伝ってほしい」などの要望に、證大寺のスタッフが対応してくれる「日常生活お困りごとサポート」(一部有料)や日頃の悩みや心配事に僧侶や専属の担当職員が対応してくれる「僧侶や担当による月に1度の無料相談」など手厚いサービスが充実しています。お寺では「終活講座」や「茶話会」なども毎月行われており、お寺がグッと身近な存在になるしくみです。

さらに入院時の身元保証(有料)や終末期の看取りまで。身寄りがいなくても、僧侶とスタッフがしっかりと支えてくれるのです。もちろん、本来の役割であるお葬式には専属のスタッフがつき、故人としっかり向き合う時間をつくってくれます。

こうした先進的なサービスを導入した裏に、どのような思いが住職にはあるのでしょうか。「僕は寺の子なので、それにかかわっている人たちを見てきているんですよ。お墓があるのでその人たちの看取りもしますし、葬儀もしますから、その人にきれいごとじゃなくかかわっていかなくちゃいけないんです。しかしながら、最後足が悪くなったとか、免許返納になったとか、施設に入ったということで、シャッターをおろされるような断絶があるんですね。家族からは『ちょっともう病院に入っちゃっているんでわかりません』とか。

少なくとも命が終わった後に、自分は安心して浄土に帰るんだ、もしくは何があっても、命が終わったら、向こうで会いたい人に会えるんだ、とそういった死生観というのが与えられていないとしたら、それはお寺の責任です。また最後、病気になって、そのタイミングがあるときに会いたい人に会えないというのは嫌だな、ということもあります。うちはもともと看取りの施設が由来なので、腰を据えてその手前からしっかりやり切ろうという感じです」。

筆者も「もし、亡くなった母から手紙が届いたら、どんな気分になるんだろう」と思いながら、ラストレターを母親に向けて書いてみました。母が望んでいたこと、託されていたことは何だろう。それは私自身が、健康で楽しく生活をしてほしいということだと思います。それはそのまま、筆者が自分の家族に託したいこと。ラストレターはそれを自分に気づかせてくれるものだと、改めて感じました。

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