『エミリア・ペレス』アカデミー助演女優賞受賞!世界を席巻した圧巻のミュージカルエンターテインメント
サスペンス×アクション×ミュージカル×ヒューマンドラマという、ジャンルの枠を超えた挑戦的な映画『エミリア・ペレス』。
第92回アカデミー賞では、助演女優賞のほか主題歌「El Mal」が歌曲賞に輝き、本年度ゴールデングローブ賞最多4部門受賞を果たした衝撃作です。本作を世に送り出したのは監督ジャック・オーディアールは、国際映画祭での評価も高い名匠です。ベルリン国際映画祭やカンヌ国際映画祭などで数々の賞を受賞し、『ディーパンの闘い』(15)で悲願のパルム・ドールを獲得。
本作では、通常1人に贈られるカンヌ国際映画祭の女優賞が異例の4人同時受賞となり、大きな話題を呼びました。
今回は、3月28日(金)の公開に先駆けてSASARU movie編集部が見どころを解説します。
「自分らしく、自由に生きたい」と願う女性たちのスリリングなストーリーをぜひ劇場でチェックしてください。
映画『エミリア・ペレス』の気になるストーリー
優秀な才能を持ちながらも、ボスに利用され不遇の日々を送っていた弁護士のリタ(ゾーイ・サルダナ)。ある日、彼女のもとに驚くべき極秘の依頼が舞い込みます。メキシコ全土を恐怖に陥れた麻薬カルテルのボス、マニタス(カルラ・ソフィア・ガスコン)から「女性としての新たな人生を用意してほしい」とリタに依頼するのです。
リタは完璧な計画を立て、マニタスは無事に過去を捨てて姿を消すことに成功。そして数年後、リタの前にエミリア・ペレスという女性として生きるマニタスが現れたことをきっかけに、リタ、マニタス、そしてマニタスの妻であるジェシー(セレーナ・ゴメス)、エミリアと想い合うエピファニア(アドリアーナ・パス)と自分らしく生きたい、自由が欲しいと願う4人の女性たちの人生が動き出す!
女性になりたいと願うメキシコの麻薬王の運命とは
上司に手柄を横取りされ、罪を犯した男たちがお金と権力で無罪となる現実に、心をすり減らしている弁護士のリタ。本作のミュージカルシーンでは、彼女の鬱屈や、女性が不利益を受ける社会への憤りが、観客へ強く訴えかけます。序盤からストーリーに深く引き込まれることは間違いありません。
初めてマニタスとリタが対面するシーンでは、麻薬王マニタスという人間の威圧感、存在感、重厚な声色が圧倒的な緊張感を生み出します。
半ば脅しのような強引な依頼の中で、長年の大きな夢のために家族も地位もすべてを捨てる覚悟をひっそりと歌うマニタス。 この場面では、リタと同じように観客も心を揺さぶられるでしょう。
そしてリタ自身も、今の理不尽な人生を変えるチャンスだと思い依頼を引き受けることに。
一方、リタとマニタスの筋書きを信じ、夫が死亡したというニュースを見て2人の息子と悲しみに暮れる妻・ジェシー…。自分らしく自由に生きることは誰もが望んでいること。しかし、そのために払う代償の大きさを考えさせられます。
エミリア、リタ、ジェシー、そしてエピファニア、それぞれの心の軌跡
依頼から数年後、成功を収め新たな人生を歩むリタの前に現れたエミリア・ペレス。それは姿も声も別人となったかつてのマニタスでした。
犯した多くの罪を後悔し、人々の救済のため動き始める決意をしたエミリア。手放した2人の子供たちとジェシーをメキシコの豪邸へ呼び寄せますが、その事がエミリアの歯車を狂わせます。
ジェシーが元の夫とは知らずにエミリアに翻弄される姿は、悲しみと混乱が入り混じっています。今を生きようとするジェシーの感情を爆発させる歌唱シーンは圧巻のひひと言。 セレーナ・ゴメスの圧倒的な歌唱力には、誰もが息をのむでしょう。
一方、エミリアが立ち上げた支援団体「ラ・ルセシタ(小さな光)」の活動を通じ、心を通わせることになる女性エピファニア。優しく包み込むような彼女と恋に落ちたエミリアは、人生で初めて「心からの安らぎ」を感じ始めます。
誰もが考えさせられる「自由に生きる」ということ 男性の肉体から解放され、自分らしく生きることで満たされるエミリア。 友人として必要とされ、居場所とやりがいを感じるリタ。エミリアに出会い、幸福を感じ始めるエピファニア。そんな彼女たちとは正反対に、孤独感や閉塞感を募らせていくジェシー…。
それぞれの登場人物に感情移入しながらこの作品を観るのがおすすめです。
すべての性別・年齢・人種へ「人間の本質とは?自由に生きるとは?」と語りかけてくる本作は、どの女性の視点から観るかによって、さまざまな感情がわき上がり、複雑な気持ちにさせられます。
異色のジャンルが融合!ミュージカルシーンの魅力
サスペンス×アクション×ミュージカルという異種ジャンルがヒューマンドラマを軸に展開されていく本作において、最大の見どころのひとつが完成度の高いミュージカルシーン!
マニタスが性別適合手術の施設を訪問する場面で映し出される人々は、みんなどこか希望に満ちた心情を表すように、曲調も照明も明るく作られていて気分が明るくなります。また、マニタスの子が大好きなパパを恋しく歌う場面では、子どもらしくとても可愛い歌声と歌詞に思わずほっこりしてしまいます。
さらに、ゾーイ・サルダナがストーリー中盤で汚職政治家や悪徳な富豪たちと対峙するシーンでは、全体が赤で統一され、富豪たちを糾弾しながら激しく動き回る圧巻のシーンはきっとあなたも心を奪われるはず。
そして、注目すべきはマニタスの妻・ジェシーを演じたセレーナ・ゴメス。
メキシコにルーツをもち、若者から絶大な支持を受けるセレーナは、ジェシーという情熱的で不安定な難しい役どころを演じていますが、どこかキュートで愛らしい。
セレーナがスペイン語で歌う「Mi Camino(My Way)」と大迫力のパフォーマンスを、ぜひ劇場で体感してください。
映画『エミリア・ペレス』の基本情報
■監督・脚本:ジャック・オーディアール『君と歩く世界』『ゴールデン・リバー』『パリ13区』
■出演:ゾーイ・サルダナ、カルラ・ソフィア・ガスコン、セレーナ・ゴメス、アドリアーナ・パス
■制作:サンローラン プロダクション by アンソニー・ヴァカレロ
■公式サイト:https://gaga.ne.jp/emiliaperez/