建設費上昇で有料老人ホーム開業を再延期 上越市三和区の元温泉宿泊施設「米本陣」
休館している新潟県上越市三和区宮崎新田の温泉宿泊施設「三和ネイチャーリングホテル米本陣」を有料老人ホームに転換する計画で、施設を運営する「AGRI CARE(アグリケア)」(本社茨城県つくばみらい市)は2025年5月19日、開業が計画より2年遅れ、2027年8月となることを明らかにした。開業延期は2度目で、概算建設費が想定より大幅に上昇したため、コストを抑えて再設計を行うという。
《画像:20日に開かれた住民説明会》
同日、アグリグループ代表で医療法人アグリーの伊藤俊一郎理事長(46)やアグリケアの日馬祐貴社長(40)などが出席し、三和コミュニティプラザで住民説明会を開いた。
施設は市の第3セクター、三和振興(2021年会社清算)が経営悪化で運営を断念し、2021年4月から休館となった。市は公募型プロポーザルで選定した、有料老人ホームや訪問介護事業などを手がけるアグリケアに2022年9月に土地と建物を売却した。
《画像:有料老人ホーム開業が延期された旧「三和ネイチャーリングホテル米本陣」(2022年5月撮影)》
同社の計画は、米本陣を有料老人ホームに転換し、入居者以外の住民などが利用できる日帰り入浴やカフェを併設するほか、2020年に市から土地と建物を購入した付近の博物館「米と酒の謎蔵」と食の体験施設「味の謎蔵」の2施設を有床診療所(入院施設)とリバビリセンターに整備する。他県にある同社の各事業所のカルテの代行入力やコールセンター業務などを行うバックオフィス機能も備え、雇用創出を目指すとしている。
当初は2023年11月に開業予定だったが、建設資材の高騰やコロナ禍の影響で計画の一部見直しなどを行い、開業を2025年9月に延期していた。アグリケアによると、2024年に実施した基本設計で、配管や電気設備などの老朽化などもあり、概算建設費が想定の2倍以上となる約7億円となった。
このため建物の間取りをそのまま使用したり、有床診療所を少人数部屋から大部屋に変更したりするなどして建設コストを抑え、新たな設計会社で再設計する。再延期後のスケジュールは、2026年9月着工、2027年6月に完成、同年8月の開業となる。事業内容の変更はなく、有床診療所のベッド数は19床、有料老人ホームは33床。
説明会には住民は13人が参加し、市の担当者も同席した。伊藤理事長は「遅延が生じ、ご心配をおかけしていることを謝罪する。建設コストが上がると事業運営も危険にさらされることになり、コストを抑えて地域住民が住み続けられる施設を作っていきたい」と述べ、理解を求めた。住民からは計画自体の甘さを指摘する意見や、地域交流を求める声が上がった。
先行する訪問診療クリニックは2020年7月に、訪問介護ステーションは2024年2月にそれぞれ開業している。
《画像:元「米本陣」の場所》