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南武線さんぽのおすすめ12スポット。目立たない沿線なんて言わせない!

さんたつ

【散歩の達人】南武線アップデート

川崎、武蔵小杉、溝の口を結ぶ沿線の街は、メーカー本社や工場が点在する大企業のお膝元。「目立たない路線」と揶揄(やゆ)する声もあるが、各駅に商店街が延び、昭和の下町感をも漂わせる。とはいえ昨今、おだやかに新風が吹いているようで……。

【尻手/矢向】

老舗酒店4代目の試みが爆当たり!『新川(しんかわ)屋酒店』

老舗角打ちで、月一開催する土曜ライブ。4代目の田西伸孝さんが10年前より始め、アーティスト・わっき~なりなりさんの助力を得て遠方客をも呼び込む。また、2024年より平日ランチ&昼飲みも開始し、年配客や主婦層も立ち寄るように。手作りの餃子定食600円は赤星650円が進む。

12:00~22:00(昼定食は~14:00。月は17:00~、土は14:00~)、日休(昼定食は土・日・月休)。
☎044-522-4830

横丁の元スナックでスリランカを体感『ファミリーケータリン』

日本育ちの店主、チャーミカ・ホンセカさんが、5つ星ホテルのシェフだった父と輸入食材を商う兄と始めたのが郷里のスリランカ料理店。「シナモンとハーブが重要」で、スリランカティー付きの平日ランチプレート1050円はバスマティライスと混ぜて味わうと香りのるつぼ。つけ麺のホッパーや、弁当のランプライスなど、稀有(けう)な味に出合える日も。

11:00~15:00・17:00~21:00、月休。
☎045-642-6418

書店の顔したトレカゲームの拠点『青馬堂(せいまどう)書店 本店』

町の書店として1973年に創業したが、取締役の深瀬昭彦さんいわく「コロナのタイミングで」新刊本の扱いをやめ、カードゲームへ大きく舵切り。店中央にデスクが並び、週末はトレカゲーム大会の会場に。世界大会を目指す猛者(もさ)たちの熱戦が朝から続く。トレカやクレーンゲームも人気。古本を漁るなら平日がおすすめ。

11:00~21:00(土・日・祝は10:00~。大会により変動あり)、無休。
☎045-571-4603

あれこれ選ぶなら早めの時間にゴー!『Rottie’s(ロッティーズ)』

2005年に創業し、池と庭木はそのままに2024年冬建て替え。開店から並ぶ客の目当ては気張らぬスタイルのケーキだ。店主の堀内亮子さんが愛するバナナタルト540円をはじめ、フランス菓子の技法が用いられ、クリームふわふわ、焼きたてタルトはザクザク。男性1人客も足しげく通う。カフェオレ550円。

11:00~18:00(ケーキは売り切れ次第終了。カフェは17:30LO)、月~水休(不定休あり)。
☎045-572-7836

【鹿島田/平間/向河原】

花々の間から個性を放つ古道具と自転車『urikke(ウリッケ) flower&vintage』 / 『満輪舎』

元米屋の倉庫を生かし、1階はYasukoさんの花と古道具の店、はしごを上った2階は息子・ミチロウさんの予約制ビンテージ自転車店に。Yasukoさんの「内装を変えるのが趣味」に加え、友人作家の展覧会も月一開催。天井から下がる70~90年代の自転車と合わせ、訪れるたび見えるモノが変わる。

10:00~18:00(土・日・祝は~17:00)、月・火・不定休。

丁寧に作られた良品の数々『Organic Store 片山本店』

低温で長期発酵させた乳酸発酵甘酒・マイグルト622円。
自家製バスクチーズケーキ540円は砂糖控えめ、生地にマイグルトを加えたやさしい味。
特注する信州産いづつ生ワイン白1909円は「ブドウそのまんまの味」。

蔵元に特注した酒や、伝統調味料・自然派食品などが所狭しと並ぶ。2023年に建て替え、1階で扱う食材を活用した手作りメニューを2階カフェで味わえるように。平飼い卵と低温殺菌牛乳を用いたふわとろのフレンチトースト1280円や、有機コーヒー豆から抽出したエスプレッソのカフェラテ660円のほか、看板料理の野菜カレーも人気だ。

10:00~18:00(カフェは17:00LO)、日・祝休。
☎044-522-6233

洋風の総菜にスイーツ!? 一家のアイデア冴えまくり『関豆腐店』

老舗の豆腐店の店頭がユニーク。3代目店主・関祥治(よしはる)さんは元コックゆえ、ナポリタン380円がまろやか。4代目のアイデアで生まれたおからナゲット250円、姉手製のいもフライなど、手が止まらない味揃い。スムージーや杏仁豆腐など、豆乳スイーツも見逃せない。そして、鶏皮?と勘違いするほど香ばしい油揚げはリピート必至だ。

8:00~18:30、日・祝休。
☎044-511-9398

民家の脇をすり抜けて『悠々閑々』

路地に看板が出たら営業の合図。民家奥の小窓がお店だ。日によりラインアップを替えるが、全種類北海道産小麦を使用。看板の食パン600円は耳までもちもちで小麦の甘みがクセになる。他の総菜パンも「軽く温めると焼きたての味になりますよ」と、店主の林悠紀さん。あんぱん230円、エピ・ベーコン250円などの他、クッキーもあり。

木・金・土の10:00~16:00(売り切れ次第終了)。

【武蔵中原/武蔵新城】

品質上等のグッズは川崎の工場発!『HORIZON』

どんな場所にひっかけても安定感のあるS字フックのKAKERU980円と、フック収納にいい革ケース1650円~。
鉄製七厘のTETSURIN1万5950円は扱いやすさを追求した2重構造。キャンプでも庭でも使える。

エレベーター部品を主に製造する『上代(かみしろ)工業』社長の上代健一さんは「自社製品を作りたかった」と、キャンプ&キッチングッズに活路を見出した。川崎市内の仲間の工場にも声をかけ、扱う商品はオール川崎産。アメリカでも販売された鉄板GOKUTETSU8800円~は「調理後、すぐに食卓に出せます」と人気だ。各社の強みを生かしたコラボ製品あり、こだわり満載。

10:00~18:00、月~水休。
☎090-1545-1544

作り手と住民がゆるやかに交わる場所『千年(ちとせ)共店』

築35年の旧社員寮をリノベ。2・3階はシェアアトリエで、1階を雑貨カフェにした。姉妹シェアアトリエ「シモノゲ共作所」の作家の作品や、古書、雑貨が貸し棚に並ぶ。運営する廣瀬悦子さんが「この街は粒揃い。ご縁で仕入れた逸品を」カフェで出し、憩いと交流の場を演出する。年に数回マルシェも開催予定。クラフト作家などによるワークショップは不定期開催。

10:00~17:00、不定休。
☎044-863-8069

元工房を活用した路地裏のオアシス『工房カフェ』

宮大工に始まる地元密着の建設・不動産会社が、木材・アイアン加工のレンタル工房の一部を改装。「街の魅力を高めたい」と、2023年に路地裏カフェを開店した。アートや建築写真を飾り、壁の小窓から隣の工房ものぞける。Wi-Fi・電源もあり、テレワークにも重宝。りんごのガレット880円、ハニーレモンジンジャー550円とおしゃべりを楽しむ住民多し。

10:00~17:00、日・月・祝休。
☎044-777-5077

大正ロマン調のスーパーな温泉銭湯『千年(ちとせ)温泉』

昔ながらの体重計や柱時計はそのままに、ペンキ絵、優美なステンドグラス、北斎画のモザイクタイルなどがモダン。多彩な風呂の充実っぷりにも目を見張る。漆黒の黒湯は露天風呂に。肌するすべ、体ほっこほこの極楽だ。「女性ひとりでも立ち寄りやすく」と、2018年に建て替え。浴後の温泉玉子と生ビールも忘れずに。550円。

14:00~24:00(土・日・祝は11:00~23:00)、金休。
☎044-766-6240

名店の挑戦と新店の繚乱(りょうらん)でパワーアップ

川崎駅からすぐ。尻手は、駅前の横丁がアングラな風情を漂わせる。牽引(けんいん)するのは『新川屋酒店』だ。もともと仕事帰りにサクッと角打ちする酒屋だったが、2024年春から平日の昼間っからビールを傾ける夢の場所に変身。「今までと違う客層も訪れるようになりました」と相好を崩すのは4代目だ。また月に一度、10組前後のアーティストが次々と演奏する土曜ライブもあって、見知らぬ者同士が酒を酌み交わす時間が楽しすぎる。

矢向駅前のクスノキは戦後に蘇生。南武線開通以来のシンボル。

「ここ、横浜市なんですよ」と聞いて驚いたのが、夜になるとカラオケの歌声が響く飲み屋横丁に紛れる『ファミリーケータリン』だ。テーブルに目を落とすと、地元小学生が書いたスリランカクイズが置かれていた。店主のホンセカさんは「課外授業の町中探訪がきっかけで、地元小学校と小さな異文化交流が始まりました」と、ほっこりエピソードを披露。

またお隣、矢向の路地裏に立つ『Rottie’s』でも「近所の子供たちが持ってきた夜店の金魚を店の池で飼ってるんです」と、店主の堀内亮子さん。この辺り、アングラな顔して、どっこいあったかいぞ。

尻手駅を挟むように延びる横丁。昭和な風情だが異国文化も流入中。

新川崎駅と直結ブリッジで結ばれた鹿島田は、うっすらターミナル駅の顔を見せる。『片山本店』3代目の片山さんは「オーガニックに興味のない方も立ち寄れるように」と2階にカフェを新設し、Wi-Fiも完備。1階で購入した食品や酒もイートインでき、客層の幅は広がるばかりだ。

武蔵小杉に近い平間・向河原へ足を向ければ、一見おっとりした商店街が延びていた。ところが、昔ながらの『関豆腐店』に油揚げのピザやタコスなど、目を疑う総菜が。3代目の妻・久美子さんに「小さな女子にバズってるんですよ〜」と朗らかに勧められたのがおからのナゲット。食べて納得。大人にもきっとバズってるはずだ。

小粋な花やドライフラワー、植物に誘われ『Urikke』に立ち寄ると、地元小学生が「ただいまー」と、店主のYasukoさんに挨拶する姿に遭遇。開店してまだ1年だが「あの子とはすっかり顔なじみ」とにっこり。人情味を備えた個性派揃いでワクワクが止まらない。

三角屋根が愛らしい向河原駅。線路を挟んで巨大なNEC本社が立つ。

南武線がつむぐモノづくり精神

昭和感を漂わす鹿島田の一番通り。タワマンとのコントラストが今風。

ターミナル駅に近いこの辺りは、古い商店が軒並みマンションに取って代わり、街並みは変わる一方と聞く。とはいえ、近くを流れる自然豊かな多摩川のせいか、大らかだ。

武蔵小杉駅を飛び越えると、街の色合いがまた少し変化した。武蔵中原は、少し歩けば至るところに畑が広がり、農産物直売所も点在。『工房カフェ』店長の相澤信晃さんは、「お祭りも盛んで、田舎っぽさが心地いいんです」と柔和に笑う。

南武線と並行する横須賀線沿いの新川崎ふれあい公園で電車遊具&ビューを同時に楽しめる。

活気ある商店街が連なる武蔵新城で「個性ある個人商店が多い」と言うのは『HORIZON』の上代さんだ。言わずもがな川崎は「ものづくりの街」。尻手―向河原は大手メーカー各社が本社を構え、川崎が創業地の富士通も中原に帰還。新城を最寄りとする下野毛には部品加工の得意な企業が100社以上も集結する。

「みんな自分たちの技術に誇りを持っていて、見てもらう機会を狙っていました」と、上代さん。しかも横のつながりが強く、コラボ製品作りも始まっているという。

江川せせらぎ遊歩道は8つのゾーンに分かれ、風景変幻。目が潤う。
橘樹(たちばな)歴史公園は国史跡の中にあり、復元した飛鳥時代の倉庫が立つ。

そういえば、『千年共店』を運営する廣瀬さんも「モノづくりしたい人が多い街」と称していたっけ。作り手が催すワークショップにユニークな目線の人も集まってくると。

『千年温泉』で黒湯に浸かり、ふと思った。確かな技術、楽しんでもらうサービス精神、そして人情が息づく沿線だなと。旧来の人と新しい人がゆるやかに混じりあい、沿線を個性豊かにアップデートしているのだ。

取材・文=林さゆり 撮影=泉田真人
『散歩の達人』2025年4月号より

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