平井堅さんデビュー30周年、母が語る軌跡 原点は「桔梗が丘」
三重県名張市出身のシンガー・ソングライター、平井堅さん(53)が、5月13日でデビュー30周年を迎える。母・佐和子さん(83)に、今なお音楽シーンの第一線で活躍し続ける息子への思いを聞いた。11日は母の日。
大阪で生まれ、2歳で名張市桔梗が丘に引っ越した平井さんは、県立上野高校を卒業するまでこの地で育った。子どものころについて、佐和子さんは「サザンオールスターズが大好きだったのよ。私の前では歌わなかったけれど、高校時代には2階の部屋で窓を開けて歌う声を、お向かいさんに聞かれていたみたい」とほほ笑みながら振り返る。
横浜市立大学へ進学後、平井さんから「歌手になりたい」と告げられた時は驚いたという。「英語が得意だったから、通訳の仕事に就くかと思っていた。でも、自分でしっかり考えて決めたことだと感じたので、心配はしなかったわ」と語る。
その後、オーディションに合格し、1995年5月13日にCDシングル「Precious Junk」でデビューした。佐和子さんにとって忘れられない思い出は、デビュー前に友人から「映画館で堅が映ってたよ」と聞かされ、佐和子さんと母親、娘、孫の4世代で大阪の映画館に足を運んだ時の事。本編前のCMでスクリーンに白いロングコートをまとい砂浜を背に歌う息子の姿が映し出され、「ああ、本当に歌手になったんだ」と胸が熱くなったという。
CDの発売日には、桔梗が丘駅前にあった店の売り場を見に行った。「もっとたくさん並んでいると思ったけれど、意外と少なくてね」と当時を懐かしむ。
デビュー後しばらくはヒットに恵まれず、苦しい時期もあったが、2000年に「楽園」がヒット。大阪の商店街で曲が流れていたのを耳にし、「これがブレイクなんだ」と実感したという。
04年には「瞳をとじて」が大ヒット。夫の康徳さんが闘病中の病室でこの曲を聴き、「堅はやっぱりバラードやな」とつぶやいたという。「亡くなった主人も心から堅の音楽を応援していた」と、佐和子さんは語る。
13年、平井さんは故郷への想いを込めた楽曲「桔梗が丘」を発表。ミュージックビデオには佐和子さんも出演し、普段通りに自宅で息子を迎えるシーンを演じた。「この曲を聴いた時、堅が名張を大切に思っていることが心から伝わってきた」
母の日の大切な記憶
佐和子さんは現在、名張市でコーラスや読み聞かせボランティアを続けている。平井さんの母校、市立桔梗が丘南小学校で、卒業を控えた6年生に向けて「桔梗が丘」を合唱する機会にも参加している。
5月13日に横浜アリーナ(横浜市)で開かれるデビュー30周年記念のライブに臨む息子へ、佐和子さんは「これからも誠実に音楽と向き合ってほしい。支えてくれるファンの皆さんへの感謝を忘れずに」とエールを送る。
小学2年生だった平井さんから、「100歳を超えるまで長生きしてほしい」とつづった手紙と花束を母の日に贈られたことを今も大切に覚えており、「長生きして、ずっと応援したい。いつか『桔梗が丘』を堅と一緒に歌えたら本当に幸せね」と、笑顔で語った。
2025年5月10日付891号1面から