北海道根室市の伝統漁法<氷下待ち網漁> 氷の下に網を仕掛けるメリットとは?
北海道の最東端に位置する根室市。
氷点下になる冬場の地域では、湖に分厚い氷が張ります。
一見、氷が張った湖では漁業を行うのは難しそうに思えますが、実はこの時期だからこそ行われる伝統的な漁があるのです。
氷の下に網を張る?
北海道の東の端にある根室市では、湖に氷が張る時期に「氷下待ち網漁」と呼ばれる伝統的な漁が行われます。この漁法では氷に穴を開けて、氷の下に網を設置。チカやコマイなどの魚を漁獲します。
この漁の性質上、船は使わず、氷の上を移動して漁具や漁獲物を運搬するため、氷に十分な厚さがないと氷下待ち網漁は行われません。氷下待ち網漁が行われるのは氷が薄くなり始める3月までで、加えて近年は温暖化により氷が張る面積が狭くなっているといいます。
なお、氷上の移動にはかつて馬が利用されていましたが、現在はスノーモービルや軽トラックが使用されているようです。漁業にスノーモービルを使うなんて、他の地域では見られないでしょう。
この漁法は、根室市の風連湖(ふうれんこ)や温根沼(おんねとう)で行われており、風連湖の氷下待ち網漁は別海町歴史文化遺産にも登録されています。
氷下待ち網漁で獲れる魚は?
では、この氷下待ち網漁ではどのような魚が獲れるのか。
もちろん、北海道で行われている漁法なので、冷水性の魚たちが多く漁獲されます。
特にメインとなるのが、コマイ(タラ科の中型種)やチカ、カレイ類。中でも、コマイは氷下待ち網漁に由来して漢字では「氷下魚」と書きます。
このほか、ニシンが大量に獲れた年もあったようです。
氷の下に網を仕掛けるメリットは?
厳冬の時期に行われる氷下待ち網漁ですが、この漁法にはメリットがあります。
まず、悪天候に強いということです。
冬場この地域では外海に流氷が押し寄せて漁が難しくなることがありますが、氷上で行うこの漁法ではその心配はありません。さらには、氷上であるが故に時化がないことも大きな利点とされています。
また、コマイは暗い場所を好むと言われており、まさに氷下待ち網漁がうってつけというわけです。
現在は観光としても利用される
北海道・根室市の“冬の風物詩”として知られる氷下待ち網漁ですが、現在は担い手の高齢化などにより衰退しつつあるようです。一方、観光客向けに見学や網引き体験を実施するなど新たな試みも見られます。
根室市の伝統漁法がこの先も続いていくことを願うばかりです。
(サカナト編集部)