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知見結集し新たな収入源を

タウンニュース

ふくもと・けんじ/旧県立三崎水産高校(現海洋科学高校)卒。定置網漁を営む佐島漁業社長。2014年から大楠漁協組合長、23年から現職。

横須賀から藤沢までの3市1町の漁協が合併した「湘南漁業協同組合」が発足して1年が経過した。漁獲量の減少など取り巻く環境が厳しさを増す中、どう持続可能性を見出すのか。同組合の福本憲治組合長に聞いた。

湘南漁業協同組合福本憲治組合長

――発足して1年が経過しました。これまでの成果は。

「漁獲資源の減少や組合員数の減少といった課題解決のために合併という道を選びましたが、現在、各漁協の多様な意見が集まることで、プラスの効果が生まれています。率直に合併して良かったと感じています」

――具体的なメリットは。

「まず、ブランド力の向上です。湘南という名称は認知度が高く、取引先との交渉や販路拡大で有利に働いています。少ない水揚げでは値がつかない魚も同じ組織の中で集約することで流通の規格に沿った市場価格がつく。各漁協の漁獲状況やノウハウ共有も進んでおり、課題解決に寄与しています。不思議なもので、同じ組織になると従来の『ライバル関係』ではなく、仲間としての意識が醸成される。正・准組合員350人超の組織に規模を拡大したことで、施策の選択肢が増えたことも利点と捉えています」

――漁獲の現状と将来への展望はいかがですか。

「漁獲に限れば厳しい状況が続いています。佐島漁港の年間水揚げ金額は20年前の約7億円と比べ今は3億円程度と半分以下。漁獲資源の減少に加え、担い手不足も大きな要因です。魚を取るだけでない、安定的な収入確保が喫緊の課題です」

――組織が拡充したことで可能になった施策は。

「具体的に形にするのは今後ですが、藤沢、鎌倉、葉山など観光名所が多い地域では、観光客をターゲットにした事業展開も期待できます。皆で意見を出し合い、各地域の魅力を味わってもらえるようなスケールメリットを生かした仕掛けを展開していきたい」

――現状の課題は。

「漁師が”稼げる仕組み”を作ることです。担い手不足は組織の減退に直結します。新しい人が『ここで働きたい』と思える組織にするため足元を固めることが自分に課された役割だと考えています。組織が拡大すれば行政の支援も受けやすい。佐島としては水揚げ金額を6億円まで回復させることを目標に、漁獲量の増加と単価の向上を目指します。さらに、水揚げ事業と並ぶもう1つの柱となる事業を育て、両輪として成長させたいと考えています」

――今後の抱負を。

「湘南漁協という組織を軌道に乗せていきたい。そして、湘南ブランドを確立して好循環を作り、漁業の活性化に貢献していきたいと考えています」

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