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東日本大震災からのリスタート! 宮城県気仙沼市へ。活気あふれる魚市場、絶景サウナ、復活した喫茶店など盛りだくさん!

さんたつ

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カツオやメカジキ、サメが全国屈指の水揚げ量を誇る宮城県気仙沼。東北が誇る水産都市へ赤いカツオ刺しとツツジを楽しみに出かけたら、あの震災から13年、着実に再出発へと歩み続ける人々や風景と出会うことができた。

天国のような海がもたらす恵み

港に船が横付けされると、ベルトコンベアで魚が市場へどんどん吸い込まれていく。場内では忙しく魚が仕分けられ、仕入れに来た人々が、真剣なまなざしでタブレットをにらんで入札。すごい熱気だ。

「カツオ漁のシーズンはマイクを使って入札するので、活気が増すんです」と気仙沼漁業協同組合参事の臼井靖さん。気仙沼の沖合は暖流の黒潮と寒流の親潮が交わり、多様な魚が獲れる好漁場になっている。リアス海岸の入り組んだ湾では、カキの養殖も盛んだ。

気仙沼の初ガツオは初夏の風物詩。ホヤがおいしくなるのもこの頃から 。

「この水域のカキは、栄養いっぱいの雪解け水が流れ込む5~6月が、実は一番おいしくなるんだ」と、気仙沼湾に浮かぶ大島でカキの養殖と『ヤマヨ食堂』を営む小松政行さん。温湯処理(貝殻についたほかの稚貝や海藻をお湯で取り除く作業)などで丁寧に育てられた通称・春牡蠣は、まるで岩ガキのように大ぶりで身がふっくら!

カキ棚が静かに浮かぶ湾は天国みたいな美しさだけれど、13年前の震災では町に牙を剝いた。

「津波で全壊したがれきの中に、店のステンドグラスが1枚あって、思い出に拾っておいたんです。それが店を再建する際に役立ちました」とは、前店とほぼ同じ内装で『喫茶マンボ』を再建した岩本秀之さん。同じく被災した階上(はしかみ)の農家から仕入れたイチゴのパフェを楽しむ観光客から、チャーシューで一杯飲(や)る常連まで、にぎわいも震災前と同様だ。

『気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館』。被災した高校校舎の津波の爪痕をあえて見せることで、震災の記憶と教訓を伝えている。

『気仙沼 男山本店』の店舗も一部外壁などを残し津波で倒壊したが、2020年に再建。5代目の菅原大樹さんいわく「港が新しい建物で生まれ変わっていくなか、むかしの姿で店舗を復活させていいのか父は悩んでいました。でも『あの店は港のランドマークだったから』という地元の人の声もあり、西洋風の意匠そのままに再建したんです」。

「あのときボランティアで来てくれた若者たちが、また戻ってこられる場所を作りたい」と民宿の『唐桑(からくわ)御殿 つなかん』を始めたのが、菅野一代さん。一時期、海を見るのがつらかった一代さんだったが、防潮堤の建造で宿から海が見えなくなると、海への恋しさが。昨年、海辺に造られたつなかんサウナの窓からは、凪いだ水面に夕日を映す、穏やかな海が見えた。

民宿の『唐桑御殿 つなかん』では、女将が大漁旗で見送り。別れ際に、グッとくる。
『気仙沼市復興祈念公園』からは港を一望できる。

『ヤマヨ食堂』育った海を見ながら春牡蠣を味わう幸せ

ガーリックバター焼きなど、カキ料理4品が並ぶ洋風コース2800円、カキフライ1000円。
3代目の小松政行さん・登喜子さん夫妻とスタッフの石井洸平さん(左)。

大島北側でカキ養殖を営む『ヤマヨ水産』が2022年に開店。気仙沼を流れる大川や、周囲の森から腐葉土の養分が流れ込む湾で育つカキは身がふっくら。隣の作業場で剥いた新鮮なカキを、カキフライや蒸しガキで味わう贅沢ときたら!

☎0226-25-8505
11:00~13:30LO、火休
宮城県気仙沼市亀山8
JR大船渡線気仙沼駅から車20分

『唐桑御殿 つなかん』日本随一の絶景サウナが誕生!

2023年の夏、漁具倉庫を改修し、2階建ての「つなかんサウナ」を開設。窓外には海が。
サウナ1階には水風呂。壁の灰色は唐桑の山並みをイメージ。
自家製味噌で作るカキの焼き飯が看板料理。マグロの大トロや尾の身が酒を促進させる。

遠洋漁業で財をなした漁師が建てた、入母屋造の立派な家屋・唐桑御殿に宿泊できる。夕食は、女将の親族から仕入れるマグロや、旬の時季にマイナス60度で冷凍保存したカキが絶品。通しの間で客同士語らいながら食べると、楽しさもひとしお。

☎0226-32-2264
1泊2食1万1250円~。宿泊者限定のつなかんサウナは15:30~18:30(11~3月は15:00~18:00)、利用料1万2000円(4名以上の場合は1名追加ごとに+3000円)。8室
宮城県気仙沼市唐町鮪立81
大船渡線BRT鹿折唐桑駅からバス21分の宿(しゅく)下車、車7分(送迎あり、要予約)

『気仙沼シャークミュージアム』リニューアルで巨大なサメのオブジェが?

長さ8.2mのウバザメのオブジェは大迫力。
サメの生態などに関するクイズコーナーも新設。写真は絶滅したメガロドンの歯!
「フカカツやシャークナゲットなど、サメグルメもおすすめです」と、スタッフの安部歩来(あくる)さん。

日本唯一のサメ専門博物館が2024年春にリニューアル。連携協定を結んだ『沖縄美ら海水族館』から移設されたウバザメのオブジェや、同水族館のサメの研究成果の展示、気仙沼とサメの関わりなど、見どころが盛りだくさんになった。

☎0226-24-5755
9:00~16:30受付(10~4月は~16:00受付)、不定休(7~12月は無休)。600円
宮城県気仙沼市魚市場前7-13
気仙沼駅からバス10分の海の市前下車すぐ

『気仙沼 男山本店』地元海産物を引き立てる名脇役

「蒼天伝 蔵の華 純米大吟醸」720㎖2640円(写真中)など。
昭和5年(1930)築の店舗を再建。国登録有形文化財。
店舗1階では4種ほどを無料試飲できる。
見学では、蔵で酒造りの解説を受けたあと、徒歩3分の店舗へ移動して試飲や買い物を楽しめる。

創業は大正元年(1912)。主に気仙沼産の酒米・蔵の華で醸す「蒼天伝」は、あえて旨味を突出させず、シャープな味わいで気仙沼の海の幸に寄り添う。再建された店舗の3階では、建て直しへの歩みを解説するパネルも展示。

☎0226-24-8008
9:00~17:00(酒蔵見学は3日前までにホームページから要予約。13:30~14:30、火・日・祝休。お土産付き〈1100円〉)、日・祝休(9~4月は火休)
宮城県気仙沼市入沢3-8
大船渡線BRT内湾入口駅から徒歩11分

『喫茶マンボ』気仙沼最古の喫茶が装いそのままに復活

シーズン中は階上の農家から毎朝届く、完熟イチゴが山盛りのイチゴパフェ(5月下旬まで)980円。
1951年創業。「ラーメンも手間隙かけてます」と3代目。

東日本大震災で店が全壊するも2014年、ステンドグラスやシャンデリアの雰囲気そのままに再オープン。「前の店と同じ、ここ南町で営業したかった」と3代目の岩本秀之さん。コーヒー420円のブレンド割合も創業時のまま!

☎0226-23-0503
11:00~14:00・17:00~21:00、月(祝日の場合は翌日)休
宮城県気仙沼市南町1-4-1
内湾入口駅から徒歩9分

『気仙沼市魚市場』カツオの入札では活気あふれる声が

見学は、入札や水揚げが盛んな6~8時頃がおすすめ(写真は許可を取り1階から撮影したもの)。
「カツオの盛漁期、港で水揚げを待つ船が並ぶ風景は圧巻です」と、気仙沼漁業協同組合参事の臼井靖さん。

2階に観光客向けの見学デッキを設置。北側では真鯛やサンマなどの魚介、少し南へ進むと例年5月中旬からカツオの水揚げ風景を見渡すことができる。併設の『水産情報等発信施設』からは、メカジキの水揚げが見られる日も。

☎0226-22-7119
9:00~17:00、無休(市場は土・日・祝休)。無料
宮城県気仙沼市魚市場前8-25
気仙沼駅からバス10分の海の市前下車すぐ

取材・文・撮影=鈴木健太
『旅の手帖』2024年6月号より

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