【福岡フルーツカクテル紀行・藤崎編】折り紙付きのバーテンダーが創る「パイナポー・パラダイス」
BARをこよなく愛するライター西山健太郎が、福岡・博多のオーセンティックバーを訪れ、旬のフルーツカクテルを紹介する連載コラムです。今回は、藤崎「酒-LABO YAMADA(サカラボ ヤマダ)」の「パイナポー・パラダイス」をご紹介します。
真夏の夜を彩る 爽快感あふれるトロピカルカクテル
今回は、藤崎の「酒-LABO YAMADA(サカラボ ヤマダ)」を訪問。
藤崎通り商店街を入ってすぐのところに、さりげなく置かれた「BAR」の行燈(あんどん)看板が目印だ。
暖簾をくぐって階段を上り、引き戸を開けて右に進むと同店の入口がある。
店内に一歩足を踏み入れると、白木のカウンターが中心に据えられた和の設えが特徴的。とはいえ、シェイカーなどのバーアイテムやフルーツが盛られた鉢が置かれ、ピアノを基調としたBGMが流れることで、その空間にバーとしての空気が漂ってくるのが面白い。
「酒-LABO YAMADA」のオープンは2023年12月。オーナーバーテンダーの山田圭介さんは、ホテル日航福岡のメインバー「夜間飛行」で12年間研鑽を積み、“若手バーテンダーの登竜門” とも称される全国大会「HBAジュニアカクテルコンペティション・キリンカップ」で優勝1回、準優勝1回を果たすなど、まさに折り紙付きのバーテンダーだ。
今回いただいたのは、ジン、アプリコットブランデー、オレンジジュースを材料としたスタンダードカクテル「パラダイス」にフレッシュパイナップルを掛け合わせたオリジナルカクテルで、その名も「パイナポー・パラダイス」。
まずは材料をブレンダー(ミキサー)にかけ、果実の繊維を丁寧に漉し取ったのちに、シェイクして仕上げるという、ひと手間かかった一杯だ。
グラスに口をつけると、パイナップルの爽快な風味がクリーミーな泡と一体となって喉の奥へと流れ落ちていく。その舌触りのなめらかさは、丁寧な手間の産物であり、グラスに添えられたガーニッシュ(飾り)も目を楽しませてくれる。
そして「酒-LABO YAMADA」を語るうえで、欠かせない店が西新・中西商店街にある「唐揚げ研究所YAMACHAN」だ。
コロナ禍の2021年1月、バーテンダーとしての道に区切りをつけることを決意し、ホテルを退社した山田マスターが最初に手掛けたのが、知人に紹介され居抜きで譲り受けた唐揚げ専門店だった。
「唐揚げ研究所」の店名は引き継ぎつつも、唐揚げの味付けは「山田家」伝来のレシピをアレンジ。その味に引き込まれ、総菜や酒の肴としてテイクアウトする常連客が増えていった。
さらにこの店の名を上げたのが、店頭での「角打ち」で、ハイボールやフローズンフルーツを使ったサワーなどの提供を始めると、その味わいの良さと気軽さが受けてたちまち評判となる。
「唐揚げ研究所での日々を通して、お客様とカウンター越しに対話する楽しさ、自らの技術でお客様の喜びを生み出すことができる充実感を再認識することができました。そして、再びバーテンダーとしての道を歩んでいこう、という気持ちが固まりました」と語る山田マスター。
現在も「唐揚げ研究所YAMACHAN」は「酒-LABO YAMADA」の姉妹店として営業を続け、かつて共に研鑽を積んだバーテンダーの同志を店長に迎え、絶品の唐揚げとドリンクを提供している。
西新・藤崎を訪れた際には、ぜひ寄っていただきたい2店である。
酒-LABO YAMADA(サカラボ ヤマダ
福岡市早良区高取2-17-44 2F
070-4447-1693
西山健太郎
福岡市役所に勤務するかたわら、2017年2月に樋口一幸氏(Bar Higuchi 代表)と非営利団体「福博ツナグ文藝社」を設立。福岡・博多の地域文化の魅力について独自の切り口で発信している。