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療育手帳、小2で中度から重度に。手厚い支援がほしい気持ちと割り切れない母の複雑な想い

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療育手帳、小2で中度から重度に。手厚い支援がほしい気持ちと割り切れない母の複雑な想い

監修:新美妙美

信州大学医学部子どものこころの発達医学教室 特任助教

再判定の発達検査は受けなくて良いの!?

まちゃが特別支援学級の小学2年生の秋、児童相談所から電話が来て「そろそろ療育手帳の更新の時期です。再判定のために来所して発達検査を受けますか?」と聞かれました。今の等級のまま、あまり変動のなさそうなお子さんには検査受診の希望を聞いているとのことでした。

更新のためには必ず発達検査が必要だと思っていたので驚いたと私が伝えると「では検査は受けるんですね」と少し素っけなく言われました。(本音を言うと行かないほうが楽なんだけど……)と思いつつ、少し迷いながら再判定の検査を受けることにしました。

そして検査が終わった直後、心理士さんからの話では「今回の判定で療育手帳の等級は重度になるかもしれない」と言われました。検査中のまちゃは、テーブルの上に置いてあった物を手で払って落として喜んでいたと伝えられました。
正式な判定は会議の結果にて、私たちには数週間後に知らされるとのことでした。

療育手帳2度目の更新、判定は

発達検査から数週間後、わが家に封書が届いて、等級が「重度」になったと知らされました。その時、私は少しショックを受けました。
実はまちゃは1番初めの手帳判定の発達検査の時に、検査直後には「中度」と言われたのに数週間後に「会議の結果、軽度になりました」と電話が来たことがありました。今回も同じように、結果はくつがえって「中度のままになるのではないか」と期待していた自分に気がついたのです。

そして、療育手帳の等級が重度になると受けられる支援が増えると聞いていたので、新しい手帳を受け取りに市役所に行った時に、新たに受けられる支援の手続きも一緒に全て行ってきました。

聞いていた通り中度から重度になって受けられる支援は増えました。中でも、とても助かるのが雨の日の学校の送迎です。まちゃの通う小学校には車を停車できるスペースはあるのですが、そこは駐車は禁止エリアになっています。ですので、天気が悪い日に車で送っても、まちゃは車から降りて、その停車スペースから1人で昇降口まで行くことができません。今回、療育手帳の等級が重度になったことで、その停車スペースに駐車できるようになりました。これは、大変助かるなと思っています。

療育手帳が重度判定になり、周りの反応は

療育手帳の更新手続きを終えてすぐ、私の姉に電話をしました。
「そっか。まちゃは重度になったんだね。でも、まちゃに毎日接している人から見ると、毎日ちゃんと成長してるんだからショックだよね」と姉。「でも客観的に見たらやっぱりできないことだらけなんだよね」と私。
忙しいなかでも姉は可能な限りはよく私の電話に付き合ってくれます。

「でもさ、望んでも支援に繋がれない人もいることを考えたら、母親のあんたとしては複雑だろうけど、そんなに悪いことだとは言い切れないかもしれないよ」と、姉。
姉は、これまで私がまちゃの療育などを頑張ってきたことも知っています。

それからしばらくして実家に行くと姉から報告を受けた父から「落ち込むなよ!」と何度も言われて、手づくりだというカチカチになった干柿をたくさん持たされました。母は5年前に他界していますが、私の実家はこれまで障害のある方とほぼ全く接しないで暮らしてきているので、分からないことだらけでみんな困っていると思います。目の前のまちゃだって自分が重度になったことなんて分かっていないと思われます。
そして、父から「年末に高級なお節料理を注文したけれどお前にあげるから取りにきなさい」と言われました。
甘える相手がいることは本当にありがたいと思っています。

手厚い支援を得て

ショックを受けるなら電話だけで更新を済ませて、中度のままでいれば良かったのにと思います。私は重度になって手厚い支援もほしかったのですが、心の奥底では、きちんと再判定の検査を受けて、それで中度という結果で療育手帳を更新したかったんだなと思いました。
われながら分かりにくくて面倒臭い気持ちだと思います。

まちゃと暮らしていくことは確かに手がかかります。ですので、手厚い支援を受けながら、成長を促して、とても時間がかかったとしてもまちゃのできることを増やして、困ることは減らすようにやっていくしかないと思っています。

執筆/カタバミ

(監修:新美先生より)
療育手帳の再判定に関してお話をお聞かせいただきありがとうございます。
療育手帳は主に知的発達症(知的障害)の方に交付される障害者手帳です。自治体により交付基準や等級なども異なるのですが、知能指数(IQ)と日常生活の困難さの基準をもとに交付の有無や等級が判定されます。一度交付されても、年齢によって数年ごとに再判定が定められており、今回お伺いしたような再判定を数年ごとに受けることになります。
判定の基準となる知能指数や日常生活の困難さは、年齢相応の平均水準が年齢ごとに上がっていくので、お子さん個人で見れば数年間の間にできることが増えて確実に成長を実感していても、相対的に判定が重いものになることはあるかもしれません。

カタバミさんは、お子さんの療育手帳区分が中度から重度になり、受けられる支援サービスが増えるというメリットを知りながらも、心の奥ではショックで切ない気持ちを感じているということを聞かせて下さいました。
そんな中で、実家のお姉さんやお父さんがさまざまに気づかいあたたかく見守ってくださっているのは頼もしい支えですね。療育手帳はあくまでも行政上のものですから、まちゃくんがマイペースに着実に日々の生活を重ねていくことの大切さに変わりはないと受け止めて、必要な福祉サービスを使っていけるといいですね。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

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