デビュー50周年【THE ALFEE】高見沢俊彦の魅力!個性豊かな3人のボーカリスト
高見沢俊彦のハイトーンが特に高く聴こえるのはなぜか?
複数ボーカリストを配するグループは多々あるが、ボーカリスト3人がそれぞれハイトーンを繰り出すという、類まれなグループであるTHE ALFEE。
有名な「メリーアン」「星空のディスタンス」を歌った桜井賢は「Girl」「ROCKDOM -風に吹かれて-」で “C5(hiC)” の音域まで。「シンデレラは止まらない」「My Truth」を歌った坂崎幸之助は「American Dream」で “G#5(hiG#)” の音域まで。「恋人たちのペイヴメント」「SWEAT & TEARS」を歌った高見沢俊彦は「もうひとつのLast Stage」で “A5(hihiA)” の音域まで出している。
ボーカリスト3人ともハイトーンなのにもかかわらず、高見沢俊彦のハイトーンが特に高く聴こえるのはなぜか。それは、桜井は咽頭共鳴を作ったままの太く芯を保った声、坂崎はハスキーでドライな声なのに対し、高見沢の声は “ラッシュ” のゲディ・リーや “バッジー” のバーク・シェリーのような、女性的で甘いブライトリーな声質のためだ。
ハイトーンな声(高音域まで出る声)とブライトリーな声(高音質な声)をそれぞれ持っているボーカリストはいるが、共に持ち合わせたボーカリストは国内では多くない。
デビュー曲「夏しぐれ」のリードボーカルは高見沢俊彦
THE ALFEEでデビューする以前に、コンフィデンス名義の「昼下がりの夢」でデビューしていたことはファンならば承知のことだろう。コンフィデンス時代、クロスビー・スティルス&ナッシュの「青い瞳のジュディ」をカバーしていたが、メンバー間でいまいちしっくりこなかったという。そんな中、高見沢俊彦がサポートメンバーとして参加。グラハム・ナッシュが歌うハイトーン・パートを担当するようになってから、ハーモニーがピッタリはまったらしい。
その後、高見沢俊彦が正式参加して、アルフィー(ALFIE)名義で1974年にビクターからデビューすることに。デビュー曲「夏しぐれ」は高見沢俊彦がリードボーカルを担当した。当時のメインボーカリストはあくまで桜井賢で、高見沢俊彦はコーラスとギターの担当だったが、ブライトリーな声と中性的なルックスの高見沢俊彦もリードを担当することになる。アコースティックな楽曲やソフトロック路線の楽曲には高見沢の繊細な声がベストマッチだった。
「メリーアン」以降、ハードな楽曲のリードを多数担当
1979年にキャニオン・レコード(現:ポニーキャニオン)より再デビュー。高見沢俊彦が個性を発揮するのが、1982年にリリースした通算5枚目のアルバム『doubt』あたりから。「悲しみをぶっとばせ」や「絶狂!ジャンピング・グルーピー」などの、ハードな楽曲での女声的な高音が強調されたボーカルが、他のミュージシャンの作品には無い個性的なサウンドとなっている。ハードなサウンドでありながらも、高見沢俊彦の甘いボーカルによって、パワーポップに分類してもよさそうなポップな楽曲に仕上がっている。彼のボーカルが無ければ、ごく普通のハードロックに留まっていただろう。
1983年、「メリーアン」でのブレイク後はサウンドがどんどん激しくなっていき、高見沢俊彦自身もハードな楽曲のリードを多数担当して、益々ハイトーン化。パワーメタル・ナンバーの「鋼鉄の巨人」では “D5(hiD)” まで、プログレッシブメタル・ナンバーの「孤独の美学」では “C5(hiC)” まで出している。なお、その後ライブでは、「孤独の美学」はキーが半音上がり “C#5(hiC#)” まで達したようだ。
パワフルなメタルサウンドはなかなかとっつきにくいが、高見沢俊彦のボーカルでポップに味付けされた “THE ALFEE版ヘヴィメタル” から、メタルの世界へ足を突っ込んだリスナーも少なくない。
今なお進化し続け、魅力を放ち続けている高見沢俊彦のボーカル
2000年代以降は、宮藤官九郎が作詞を担当した「騒音おばさん VS 高音おじさん」など、少々ネタ化している高見沢俊彦のハイトーン。そんな中、40年間2000回以上ステージに立ち続けても全く壊れず、桜井賢が “鉄の声帯” とも言っていた高見沢の喉が2014年ごろにブレイクダウン。ハイトーンを失いかける危機に見舞われるが、喉に負担をかけるシャウトを減らし、メロディをより際立たせられる歌唱法を会得して、結果、以前より美しいハイトーンを聞かせてくれている。
高音程まで到達するハイトーンと、高音域を強調したブライトリーな声質の両面を持ち合わせている高見沢の声は、現在でも健在だ。デビュー50周年を迎えても、高見沢俊彦のボーカルは今なお進化し続け、魅力を放ち続けている。