定年も加齢も怖くない!人生後半を充実させるためのメンタルシフト【大学教授・齋藤孝さん解説】
人生100年時代、60代は新たなスタートラインです! そんな大切な時期をいきいきと過ごすための、頭と心のコンディショニング法を紹介しているのが大学教授・齋藤孝さんの著書『60代からの知力の保ち方』(KADOKAWA)。本書は日々のちょっとした習慣を通して、60代からの知力を無理なく、そして楽しく保つ方法を優しく解説します。「まだまだこれから!」という意欲を応援し、後半生をより豊かにするためのヒントが満載です。60代は、これまでの役割が変わり、自分を見つめ直す時期。脳と心と体をバランス良く整え、知的な活力を高めていきませんか?
※本記事は齋藤孝著の書籍「60代からの知力の保ち方」から一部抜粋・編集しました。
加齢は恐るるに足らず
私は四十五歳の時の病を機に、人より早い段階で、仕事上でもメンタルの上でもシフトチェンジをしたのです。はっきりした意識の変革でした。
会社に勤めている方は、定年に向かい年齢が進むにしたがって、不安が大きくなるケースが多いと思います。属していた組織がなくなる、仕事がなくなることによって、社会から重要視されなくなっていくことを恐れる気持ちは私もよくわかります。
しかし不安との闘いは消耗します。恐怖は具体的な何かが怖いという感情ですが、不安は恐怖と違って、漠然としています。不安を抱いた時にはまず、消耗を抑え、充実した感覚、安らいだ感覚が内側から湧いてくる状況に自分を置く、シフトチェンジが必要です。
基本となるのは、自分と折り合いをつけることです。若いうちは自分に無限の可能性も感じますし、社会の行き先も不透明ですから、折り合いをつけることは難しいでしょう。
しかし五十歳になれば、世の中がどういうものかわからない方は、少ないはずです。自分の能力や状態と社会をすり合わせ、折り合いをつけてきたはずです。それが成熟ということですから、同じすり合わせが、定年という事態を前にしてもできないわけはありません。
定年も加齢も、恐るるに足らずなのです。
世界的に見て、日本は少子高齢化のトップランナーです。2022年には出生数が八十万人を割り込みました。一方で2024年九月に総務省が発表した人口推計によると、高齢化率(六十五歳以上人口)は、29.3パーセントと過去最高になりました。
すでに2020年の段階で、高齢化率は世界一です。
ロンドン・ビジネススクール教授のリンダ・グラットンとアンドリュー・スコットは、こうした日本の現状を踏まえ「過去のロールモデル(生き方のお手本となる人物)があまり役に立たない」(『LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略』池村千秋訳 東洋経済新報社)と、指摘しています。
他の国を参考にすることはなかなかできない状況で、私たちは自分たちのライフスタイルをこれから作っていかなければなりません。