旅の途中の「車窓」に注目!都心から特急でわずか1時間半 絶対見ておきたい中央本線の列車の絶景車窓!
text & photo:鉄道ホビダス編集部
旅の途中、山間を走っていたと思ったら、ふと窓の外に広がる景色に息をのむ──そんな経験、ありませんか?雄大な山並みを背に開ける景色、遠く向こうへと沈みゆく夕陽、遥か眼下に広がる街の灯り──。それらはすべて、車窓から偶然のように現れては、あっという間に過ぎ去っていく。しかしその一瞬が、旅の記憶を鮮やかに彩ってくれるのです。
実はこうした“絶景車窓”になるのには理由があります。鉄道は、山あり谷ありの地形に逆らいきれないながらも、基本的に急勾配を避けるよう峠を越えていきます。線路を敷くにも列車を走らせるにも苦労の連続です。でもだからこそ、列車はときに山肌を撫でるように、ときに崖沿いを縫うように進み、自然が作り出したダイナミックな風景と出会わせてくれるのです。
本連載は、そんな「乗るだけで絶景と出会える」車窓風景の中でも、まるで展望台とも思えるような景色にフォーカス。鉄道旅の中でも特に心に残る、全国の“見晴らしのいい列車たち”をピックアップしてご紹介します。日常を離れて、ちょっと高いところから世界を見下ろしてみませんか?
【写真】中央本線に乗った時は見ておきたい!絶景車窓ポイントの写真をもっと見る
題して「全国絶景見晴らしの旅」、第一弾は都心からもすぐに行ける、中央本線の勝沼ぶどう郷〜塩山間の車窓を取り上げたいと思います。
■勝沼ぶどう郷駅を越えて始まる美しい車窓
▲初夏の夕暮れ時の車窓。遠く甲府盆地を見晴らせる。
東京から中央本線に揺られて西へ向かうこと、特急でおよそ1時間半。列車は笹子トンネルを抜け、甲斐大和の駅を過ぎると、再びトンネルに入ります。下り線は崖にしがみつくように日川の谷に沿って走っていくと、今度は新深沢第二トンネルに入り、深沢川を渡るために一瞬顔を出すと、次は新大日影第二トンネルに入ります。
トンネルに入って1分ほど。車内に光が差し込み、勝沼ぶどう郷駅に差し掛かると、進行方向左手には甲府盆地が開けます。ですが、勝沼ぶどう郷駅の近辺は線路に沿って桜並木が並んでいるに加え、駅の東には列車の目線と同じくらいの高さの「勝沼ぶどうの丘」があり、眺望はそこまでよくありません。本番はここからです。
■いよいよ車窓がダイナミックに!
勝沼ぶどう郷駅から北に500mほど進み、市道をくぐると第一のシャッターチャンスがやってきます。ここでは眼下には畑と果樹園が広がり、その先に甲府盆地、遠くには南アルプスの山々を見ることができます。この区間が最も南アルプスの山並みを綺麗に眺められるところですが、ここではそこまで長い間景色を楽しむことはできません。列車はまもなく、わずかながらトンネルに入ります。そして一瞬トンネルが途切れますが、再びトンネルに入ってしまうので、ここでは無理にシャッターを切ろうとしない方がよいでしょう。
そしてこのトンネルを抜けたときが第二のシャッターチャンス。ここでは眼下に果樹園と甲州市・山梨市の街並み、遠くに甲府の北に連なる山々を眺めることができます。しかし、この区間は車窓が西北西を向いているため、甲府盆地を遠くまで眺めることはできません。ここで列車は塩山到着前最後のトンネルに入ります。
トンネルをくぐり抜けると、第三のシャッターチャンスが訪れます。列車は塩山の街中に入るために山肌に沿いながら少しずつ進路を西に傾けていくと、車窓には遠くまで広がる甲府盆地が映り、その向こうには再び南アルプスの山々を遠く見渡すことができるようになります。列車はそのまま山肌を撫でるように標高を下げていくと、やがて重川を渡り、塩山駅へと滑り込んでいきます。
▲夏の車窓。四季折々の顔を見せてくれるのも魅力の一つである。
また、この区間で見晴らす甲府盆地は、甲府を中心として人口が密集しており、夜には美しい夜景を見ることもできます。甲府・松本方面に出かけた帰り、上りの車内から見る夜景には、きっと後ろ髪を引かれる思いになるでしょう。
▲勝沼ぶどう郷駅ホーム。駅前からの景色もよい見晴らしであるほか、駅から歩いて行ける距離に「勝沼ぶどうの丘 天空の湯」という温泉施設があり、途中下車するのもおすすめ。
さて、「全国絶景見晴らしの旅」、第1回は中央本線 勝沼ぶどう郷〜塩山間の車窓をお届けしました。この区間は東京からも近く、都心から日帰りで訪れることも可能と、首都圏在住の方であれば気軽に行ける区間とも言えます。四季折々の様々な顔を見せてくれるに加え、時間帯によっても異なる魅力を見せてくれます。鉄道旅初心者の方から玄人の方まで、万人が何度でも楽しめる景色のはずです。
暑い日が続いていますが、体調管理に気をつけつつ、時には日常を抜け出して、車窓からの絶景を見晴らしに行きませんか?