地域、世代、国籍超えて… みんなで楽しむ盆踊り 被災の鵜住居に新たな活力 地元商店会企画
釜石市鵜住居町の駅前公共施設「うのすまい・トモス」の広場で24日、納涼盆踊り大会が開かれた。鵜住居商店会(中里充良会長、31店)が主催。釜石市、かまいしDMC(河東英宜代表取締役)、鵜住居地域会議(古川幹敏議長)が後援した。会場にはキッチンカーなどの出店が並び、町内外から訪れた人たちで大にぎわい。やぐらを囲んで踊りの輪ができ、幅広い年代が夏の風物詩を楽しんだ。
同盆踊りは2019年、釜石鵜住居復興スタジアムが会場の一つとなったラグビーワールドカップ(W杯)日本大会開催に合わせて初めて企画された。20~22年は新型コロナウイルス感染症の影響で中止を余儀なくされ、昨年4年ぶりに復活。今回で3回目の開催となった。
会場は2011年の東日本大震災の津波で甚大な被害を受けた町中心部。被災後、一帯は犠牲者を慰霊する「釜石祈りのパーク」、震災伝承・防災学習施設「いのちをつなぐ未来館」、観光拠点施設「鵜の郷交流館」が一体的に整備されていて、中央の広場が盆踊り会場となっている。
広場にはちょうちんで飾ったやぐらが組まれ、地元の舞踊愛好者らが踊りを先導。「炭坑節」「三陸みなと音頭」など盆踊りの定番曲に加え、フォークダンスでもなじみの「マイム・マイム」、再ブレークで注目された「ダンシング・ヒーロー」も用意され、来場者がさまざまな踊りを楽しんだ。
この日は日中の最高気温が35度に達する猛暑日となり、盆踊り開始時刻の午後5時時点も蒸し暑さが残った。市内外のキッチンカー11店が並んだ飲食スペースでは、かき氷やアイスの販売に長い列ができた。大人たちは冷えた生ビールや缶ビールで喉を潤した。商店会は綿あめ、ポップコーンを無料で配り、子どもらが笑顔を広げた。
参加者には浴衣姿の人も多数。商店会では事前予約で浴衣のレンタルや着付けのサービスも行っていて、会場は夏ならではの華やいだ雰囲気に包まれた。大人と子ども20人以上の着付けを手掛けた寺前美容室店主、菊池リツ子さん(68)は「市内で働くベトナム人の若者たちは初めて着る浴衣に大喜びだった。鵜住居内外からこんなにも多くの人たちが来てくれるなんて…。みんなが楽しんでいる姿を見るとこちらもうれしくなる」と顔をほころばせた。
甲子町の黒澤颯吹さん(10)は「最高です。コロナ禍でにぎやかなイベントがなかったのですごく楽しい」とにっこり。母史枝さん(41)も2人の子どもが楽しむ姿を喜び、「みんなで集まれる場があるのはいいですね」と共感。震災前は鵜住居に暮らしたが、被災して甲子に移り住んだ。「(距離もあり)なかなかこっちに来られないが、こういう催しがあると足を運ぶきっかけになる」と夏の夕べのひとときを満喫した。
人口が多かった時代には市内各所で行われていた盆踊りだが、人口減や高齢化による担い手不足、さらには震災による地域コミュニティーの変化などで、その数は大幅に減った。鵜住居商店会の盆踊りは地域を限定せずに誰でも気軽に足を運べる形にし、市広報への掲載、新聞折り込み、SNSでの情報発信などPRにも力を入れてきた。
実行委員長の岩﨑健太さん(40)=岩崎商店専務取締役=は「おかげさまで大勢の方に来ていただいた。来場者数は昨年よりも多いかも」と手応えを実感。イベントの目的の一つとして「日々の生活の中で皆さんが集まり、会話して一緒に盛り上がれるような場を提供できればという思いがあり、それを体現できてうれしい。子どもたちの参加が多いのも地域の活力になる」と喜んだ。
最後は恒例の餅まきも行われ、パンや菓子を含め計約2500個を大盤振る舞い。やぐらの周りには大勢の人たちが詰めかけ、大変な熱気のうちにイベントは終了した。