秋アニメ『しゃばけ』キャラクターデザイン・総作画監督:皆川愛香利さん インタビュー|一太郎・仁吉・佐助のこだわり、人と妖で異なる「瞳」の表現とは?
シリーズ累計発行部数1000万部を突破した畠中恵氏の妖怪時代小説『しゃばけ』シリーズのテレビアニメが、現在、全国フジテレビ系“ノイタミナ”にて絶賛放送中です。
本作の舞台は江戸時代。日本橋有数の大店である長崎屋の若だんな・一太郎が、“白沢”の仁吉と“犬神”の佐助をはじめとした妖と協力しながら猟奇的な殺人事件を解決していく、江戸の町人と妖たちが織りなす愉快で不思議な時代劇ミステリー。
アニメイトタイムズは、今回、キャラクターデザイン・総作画監督の皆川愛香利さんにインタビューを実施。主要キャラクターである一太郎、仁吉、佐助のこだわりから、人と妖で異なるデザインの工夫などを語っていただきました。
【写真】秋アニメ『しゃばけ』キャラクターデザイン・総作画監督 インタビュー
基本シルエットが同じだからこそ、一目でわかるようなキャラデザに
——最初に、作品への印象を踏まえ、キャラクターデザイン・総作画監督として、本作に参加することが決まった際の心境をお聞かせください。
キャラクターデザイン・総作画監督:皆川愛香利さん(以下、皆川):びっくりしたのと、嬉しかったです。最初に感じた作品の印象については、江戸時代と妖怪の話で面白いなと思いました。
——どのような経緯でキャラクターデザイン・総作画監督を担当されることになったのでしょうか。
皆川:(その場に居合わせたスタッフへ)どんな経緯だったかな……?
制作スタッフ:今回、アニプレックス様より小説の挿絵やコミカライズの絵ではなく、アニメオリジナルのキャラクターデザインで映像制作をお願いしたいとお話を頂きました。
ですので、数人の方にオーディションをさせていただきまして、そこで皆川さんの絵が選ばれたという経緯になります。
——アニメ化にあたって、大川監督やプロデューサー陣からはどのような方針やお話がありましたか?
皆川:確か、あまりなかったような気がします。
制作スタッフ:そうですね。“ちょんまげと月代”はありでお願いします、というぐらいでしょうか。
今回の作品をやるにあたって、皆川さんの絵が1番落とし込まれている印象でしたので、デザインが決まってから追加でこうしてほしいという要望はなかった気がします。
最初に、リアルに描きたいという話をさせていただきました。
——皆川さんは『銀魂』や『大奥』など、江戸時代を描いた作品で作画監督を担当されていましたが、今回の『しゃばけ』におけるキャラクターデザインで難しかった点、苦労した点はありましたか?
皆川:着物や髪型は現代ではなかなか見ないものでしたので、難しかったです。特に、着物を動かしたらシワとかがどうなるのかがまったく想像できなかったこともあり、いろいろと調べた記憶があります。
——具体的に、どのようなものを参考にされたのでしょうか?
皆川:着物を着ている人の本だったり、YouTubeで着物の着方や所作を教えている人の動画を見たりしました。
みんな“ちょんまげ”でちゃんとした着物を着ていて髪の毛も真っ黒ですから、基本のシルエットが同じなんです。
なので、一目でそのキャラクターだとわかるようなデザインを意識しました。
穏やかな一太郎、男前な仁吉、逞しい佐助
——一太郎、仁吉、佐助のデザイン面におけるこだわりを教えてください。
皆川:一太郎は穏やかさを意識しました。また、作中で“綺麗な顔”と言われていたこともあって、凛々しさと聡明さも出せたら良いなと。
仁吉は男前という設定があったのでカッコいい感じにして、佐助は廻船問屋で働いていて背も高いキャラクターなので逞しい感じが出るようにデザインしました。
——皆川さん自身、お気に入りのキャラクターや描いていて楽しかったキャラクターは誰でしょう?
皆川:私自身、可愛いものが大好きなので、「鳴家」は描いていて楽しかったです。“可愛い感じに”というオーダーがあったので、自分が可愛いと思う形になればなと思いデザインしました。
——鳴家といった可愛い妖怪、屏風のぞきといった色っぽい妖怪とさまざまな妖怪が登場しますが、人と妖を描く本作で、両者のデザインに何か違いを持たせているのでしょうか。
皆川:確か、監督からのオーダーで“人間と違う感じに”とおっしゃっていましたよね。仁吉と佐助は人間界に馴染もうとしているから人間っぽい見た目ですけど、妖たちは思い思いに生きているから人間のルールには則ってなくて良い、みたいな。
制作スタッフ:そうですね。確かに、そのようなことを監督はおっしゃっていましたね。
皆川:なので、妖怪っぽくというか、その時代の人間とは違うような見た目になればなと思い、結構「瞳」とかを特徴的にしています。
——妖怪の「瞳」ですか。
皆川:はい。妖怪の瞳は色数を多めにしています。逆に、江戸時代の人たちの瞳は、黒目に少し色をつけたぐらいの落ち着いた色味です。妖怪の瞳は明るい色にして、その辺の人間とは違う感じを出しています。
——周囲のスタッフの方とのやり取りを踏まえ、作画面で特に印象に残っているキャラクターはいますか?
皆川:う〜ん……誰だろう。
制作スタッフ:皆川さんがさらっと描いてくださった「屏風のぞき」とか、みんな喜んでいましたよ。
皆川:社内の女性陣の間では「屏風のぞき」が人気で、“カッコよく描いて”というリクエストが結構ありました(笑)。
試行錯誤した第一話、衝撃的な第十話
——皆川さんは総作画監督も担当されています。江戸を舞台にした人と妖の物語という世界観の中で、総作画監督としてキャラクターを動かす際に心がけたことはありますか?
皆川:江戸時代の所作というのが今と違うので、着物をシュッとさばく動きや座り方など、所作のひとつひとつに気をつけました。
——現在、第十話まで放送されていますが、総作画監督として印象に残っている回があれば教えてください。
皆川:印象に残っているのは、やっぱり試行錯誤して描いた第一話ですね。着物姿のキャラクターが多かったので、動きが変になっていないか気をつけました。
あと、松之助回も印象に残っています。それまで何回か登場していましたが、いざ松之助回になると描き慣れていなくて大変でした。一太郎のお兄ちゃん感はありつつ、でも一太郎とは違って松之助には原作で美形という表現がされていなかったので……。
——どこか“お父さん”のような、さらに落ち着いている雰囲気がありますよね。そんな松之助を含め、一太郎たちが追っている事件の謎がどのように明かされるのか楽しみです。
皆川:制作が結構前ということもあって、私自身も大筋はわかるけど細かいところを覚えていなかったので、先日見直したとき「こんな話だったんだ!」と素直に楽しんじゃっていました(笑)。
——(笑)。視聴者として改めてご覧になってみて、いかがでしたか?
皆川:やっぱり第十話はすごく衝撃的でしたね。一太郎の出生の秘密が明かされるんですけど、まさかの経緯に驚きました。
——最後に、『しゃばけ』原作ファンの方、視聴者の皆さまへメッセージをお願いいたします。
皆川:一太郎が付喪神のなりそこないと対峙する決意をしました。
あの気弱な一太郎がどんな戦い方をするのか、どういう成長を見せるのか、どういう形で妖たちとの絆が見られるのか、個人的に楽しみです。
第十話で衝撃的な事実が発覚して、これからますます面白くなると思うので、ぜひ見届けてください。