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【梅川レポート】新潟県上越妙高で半世紀、こだわりのジーンズ店 「たかがジーンズ、されどジーンズ」 マルニのさらなる挑戦

にいがた経済新聞

創業から50年近い歴史を刻む、妙高市姫川原にあるジーンズ専門店「マルニ新井本店」

新潟県妙高市に、創業から50年近い歴史を刻むジーンズ専門店がある。妙高市姫川原の「マルニ新井本店」。全国の百貨店から催事出店の依頼が絶えず、その商品は熱心なファンに支持されている。看板を見落とせば通り過ぎてしまいそうな静かな立地にありながら、その存在感は全国区だ。

店舗を経営するのは「マルニ西脇株式会社」代表取締役社長の西脇謙吾氏。同社は1972年、西脇氏の父・正信氏によって創業された。当時、正信氏は長野県でバス会社に勤務していたが、流行の兆しを読み取り、脱サラして新潟県上越市本町に「マルニ」を開店、輸入ジーンズを扱う店としてスタートを切った。1977年には新潟県新井市(現妙高市)姫川原に移転。クルマ社会の進展を見越し、交通の便を考慮した判断だった。

1990年からは本場アメリカへの視察を重ね、オリジナルジーンズの研究を開始。ジーンズの元祖とも言える米国リーバイス社へ視察にも行った。そして1997年には、自社ブランド「マルニジーンズ」のファーストモデルを発売。2005年には新たな方向性を見据え、新品番の開発を本格化する。伝統と革新の両立を図ってきた。

1960年代の外国製ミシンで自らデニムの裾上げを行う西脇社長。「このミシンで30億は稼いだな」と笑うひとコマも

マルニジーンズの最大の特長は、「糸からこだわる」製品作りにある。縫製やデザインだけでなく、原材料の段階から品質に徹底的に向き合い、染料に天然藍を用いて長く使い続けられるジーンズを生み出している。「私はジーンズマニアではない。糸からこだわって作る。穴あきなどを修理してずっと使えるジーンズにする。国産ジーンズの先駆者である大石哲夫さんから言われた『たかがジーンズ、されどジーンズ』という言葉を大事にしている」と西脇社長は語る。

マルニの看板ブランドは純国産の「毘沙門ジーンズ」だ。価格は1本2万5,000円以上と、海外著名ブランドの2倍以上、ファストファッションチェーンの4倍以上でありながら、ここにしかないデニムを求めて、全国からジーンズ愛好家が妙高の地を訪れる。

「妙高から全国へ」、「妙高から世界へ」を実践しているマルニ

「毘沙門ジーンズ」はアパレル産業の淘汰が進む当時を戦国乱世になぞらえ、地元の英雄・上杉謙信にあやかり「毘沙門天ジーンズ」を2009年に発売した。バックラベルに上杉謙信が信奉した毘沙門天の「毘」の文字、バックポケットには刀を模したステッチを入れ、時代を切り開く気概を込めている。「林泉寺、春日山神社には事前に説明に行った。物事には筋道がある。筋を通さなければいけない」と西脇社長は当時を振り返る。

製品には新潟の伝統技法「雪さらし」も活用している。小千谷縮に見られるような白さと風合いをデニムに取り入れた「Blue Snow White」は、2017年に商標登録されており、地域性を活かした独自のブランド価値を高めている。こうしたこだわりは単なる製品開発にとどまらない。西脇社長は「ブランドは他者評価。ブランドはお客様のもの」と語り、顧客の声や評価を製品づくりに反映させる姿勢を貫いている。加えて、「小売業は変化対応業、在庫管理業」とし、市場や環境の変化に柔軟に対応することが経営の要と考えている。

2014年には中小企業庁の「JAPANブランド」に認定。地域から全国、そして海外へと視野を広げる契機となった。2020年からはデニムの横糸に独自の工夫を加えたオリジナル素材の製品化にも成功している。

同社は新潟伊勢丹のほか、東京や全国の百貨店のポップアップストアで催事販売も行うほか、ネット販売で北米や欧州などへも販売しており、まさに「妙高から全国へ」、「妙高から世界へ」を地で行っている会社である。

創業から50年を迎えた2022年には、社史「MARUNI 50」を刊行。これまでの歩みと、地域に根ざしたジーンズ作りの記録を残した。組織体制も刷新され、西脇謙吾氏が代表取締役に就任、母・久仁枝氏は会長職に就いた。

「ブランドは他者評価。ブランドはお客様のもの」と話す西脇社長。長い間に培った深い経営哲学が垣間見える

周囲に目立った商業施設もなく、都会的なにぎわいとは無縁の地に根を張り続けてきたマルニ。その背景には、家族経営の地道な努力と、確かな信念がある。西脇社長の言葉に、「たかがジーンズ、されどジーンズ」という想いが込められている。派手さを追わず、品質と信頼を積み重ねてきた同社のジーンズは、今も妙高の地で静かに、そして力強く紡がれ続けている。

(文・撮影 梅川康輝)

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