豊島屋 〜 伝統の味を守る「タテソース」。定番ソースから「超・激辛ソース」「料亭だし」まで幅広く展開
あなたの家の台所にあるソースは、どんなソースですか?
私の家に子供の時からあるのは「タテソース」。
名前のとおり盾(たて)のマークのソースです。
しかも近所の店の店員が、タテソースのマークが付いた前掛けをしていたのをよく覚えています。
だから、私にとってソースといえばタテソースなんです。
そんなタテソースを製造しているのは、倉敷市西部・玉島地区にある「豊島屋(てしまや)」という会社。
豊島屋は江戸時代中期に創業した老舗で、中国地方でも早い時期にソースの製造を始めました。
地元・岡山県周辺では、タテソースはおなじみのソース。
家庭だけでなく、多くの飲食店でも愛用されているんです。
そして、辛いもの好きやソース好きのあいだでは「超・激辛ソース」の製造元として全国的に有名。
多くのマスメディアに取り上げられて、話題になったんです。
そんな倉敷市有数の老舗企業である「タテソース」の会社・豊島屋を紹介します。
豊島屋は「タテソース」で知られる老舗のソース・調味料メーカー
豊島屋があるのは、倉敷市の西部にあたる玉島地区。
玉島地区の中心市街たる玉島中央町です。
豊島屋の歴史は古く、なんとなんと創業約300年!
「タテソース」ブランドの各種ソースの製造をメインに、つゆ・たれ類、醤油、酢などの調味料・加工食品を製造。
また、業務用と家庭用を製造していて、業務用が約65%、家庭用が約35%です。
令和6年(2024年)現在は、大野 豊(おおの ゆたか)さんが代表取締役を務めています。
創業は江戸時代中期、店名は創業家のルーツの地に由来
豊島屋の創業は、なんと江戸時代中期にまでさかのぼります。
享保5年(1720年)に、綿や海産物などを扱う問屋として豊島屋は創業しました。
現在の玉島中心部は、備中松山藩が港を造成するために海を干拓して生まれた場所です。
豊島屋は一大物流拠点だった玉島の港町で商売をはじめました。
創業した地は、現在の通町商店街。
豊島屋という屋号は、創業家の大野家が武蔵国(むさしのくに)の豊島郡(としまぐん)から移住してきたことに由来しています。
豊島郡は、現在の東京23特別区の中部から北部にかけての地域です。
なお、武蔵・東京の豊島は「としま」と読みますが、豊島屋は「てしま」と読みます。
昭和8年よりソースの製造を開始
綿や海産物などの問屋として創業した豊島屋ですが、やがて醤油の醸造などもおこなうようになります。
そして、明治23年(1890年)に醤油醸造専門に業態を変えました。
大正3年(1914年)には、酢の醸造も開始。
昭和5年(1930年)になると、現在の豊島屋がある場所に酢醸造工場を建設します。
その後、昭和8年(1933年)にソースの製造を開始。
そして、昭和23年(1948年)に「株式会社 豊島屋」が設立されています。
「タテソース」のブランド名は幕末の国学者の詠んだ歌から
▼豊島屋といえば盾(たて)のマークの「タテソース」。
このタテソースのブランドは昭和8年のソース製造時から使われています。
「タテ」という名前と盾のマークは、幕末に活躍した国学者・鈴木 重胤(すずき しげたね)が詠んだ、以下の歌から取られています。
天皇(おおきみ)の御楯(みたて)となりて死なむ身の心は常に楽しくありけり
なお、酢や醤油など一部の商品では「ヤマテ」のブランドもあります。
これは豊島屋の頭文字「て」に、縁起をかついで「山」を組み合わせたものです。
豊島屋の建物は歴史を感じさせる雰囲気
玉島中心部は、昭和中期の面影を残す古い町並が多くあります。
そのため『ALWAYS 三丁目の夕日』などの映画のロケ地になりました。
▼豊島屋の建物も歴史を感じさせます。
豊島屋の建物は昭和8年のソース製造開始時のものなんです。
味や会社だけでなく、建物も今に受け継がれているのも魅力だと感じました。
豊島屋の家庭用商品はオンラインで購入可能
豊島屋の家庭用商品は、岡山県内のスーパーマーケットや食品販売店で購入できます。
県外の一部の店でも取り扱っている店があるほか、東京都新橋にある岡山県・鳥取県の合同アンテナショップ「とっとり・おかやま新橋館」でも販売。
また、豊島屋の本社事務所でも購入できます。
本社での支払いは、現金のみです。
さらに、豊島屋の公式オンラインショップもあり、オンラインで購入もできます。
ぜひ利用してみてください。
▼以下は、豊島屋 公式オンラインショップの主要な商品です。
なお、オンラインショップでは一部の業務用商品も販売しています。
豊島屋のおすすめ商品・人気商品
豊島屋は、非常にたくさんの商品を扱っています。
家庭用だけで、なんと約50種類。
▼豊島屋の主要な家庭用商品は、以下のようなラインナップです。
そこで、豊島屋の家庭用商品の中から、おすすめの商品・人気の商品を紹介します。
価格は消費税込み。商品名・容量・価格は、令和6年(2024年)10月時点のもの
「超・激辛ソース」は全国の激辛ファン・ソース好きが注目!
▼地元・岡山県周辺ではおなじみのタテソースですが、タテソースの名前を一躍全国区にしたのは「超・激辛ソース」という商品です。
岡山県以外の人でタテソースを知っているとしたら、この超・激辛ソースを思い浮かべるのではないでしょうか。
激辛好きやソース好きのあいだで超・激辛ソースが人気に。
さまざまなメディアで取り上げられ、タテソースの名前が一気に全国に広まったのです。
もちろん、超・激辛ソースは、豊島屋の家庭用商品のなかで人気の高い商品。
平成30年(2018年)では、超・激辛ソースは360ミリリットル換算で年間およそ4万8,000本の売上がありました。
▼超・激辛ソースのラベルは、いかにも激辛そうな印象が伝わってくるラベルではありませんか!
超・激辛ソースは、唐辛子エキスやブラックペッパーをたくさん配合している濃厚ソース。
唐辛子にふくまれている辛味成分のカプサイシンが、豊島屋のほかのソースの100倍配合されています。
これが、激辛好きやソース好きの心をくすぐる、クセになる味なんです。
しかも、超・激辛ソースは辛いだけではありません。
▼タテソースの定番ソースのひとつ「お好み DRY」という商品が、超・激辛ソースのベースになっているんです。
お好みDRYは、厳選された野菜・果実をたっぷり使用していて、甘味・辛味・酸味のバランスがよいフルーティーな味わい。
▼超・激辛ソースは、かなり粘りが強いです。
タコ焼きに少しだけつけて食べましたが、この粘りのおかげでタコ焼きの上に少量でもちゃんとつけられました。
思ったより甘みがあり、適度な酸味と同時に、少量なのにピリリとした刺すような刺激があります。
でも、タコ焼きを食べ進めると、意外と辛さを意識しませんでした。
とはいっても、かけ過ぎは注意です!
大野社長の話では、超・激辛ソースはカレーライスを引き立てるソースとか。
ぜひ、試してみてください!
▼超・激辛ソースの容量・価格は、以下のとおり。
もちろん、公式オンラインショップでも購入できます。
ウスターからお好み・とんかつ用まで豊富な定番ソース
▼昔から豊島屋が製造している定番のソースの数々。
ウスターソースの「ウスター」から、中濃ソースの「ソフト」、さらに濃厚ソースは用途ごとに「とんかつ」「お好み焼き」「お好みDRY」「焼そば」などがラインナップ。
私が小さいころ、自宅にはタテソースのウスターやとんかつ・お好み焼きなどのソースが置いてあったのを、今でも覚えています。
しかも、ラベルのデザインもほぼ同じです。
このレトロなラベルも、タテソースのポイントだと思います。
豊島屋のタテソースは、今も地元では安定した人気のある定番ソースです。
▼取材時、ウスター・ソフト・お好みDRYの3種を自宅用に購入。
▼ウスターは、とろみがないサラリとしたソースです。
甘味と酸味がジワッと口に広がります。
「甘味・辛味・酸味」のバランスがよいので、串カツソースとしてもおすすめ!
▼ソフトソースは、とろみがあるタイプ。
ソフトソースは、いわゆる中濃ソースと呼ばれるものです。
濃厚ソースよりとろみはやや弱め。
といっても、しっかりとしたとろみがありました。
また、甘さが特徴的で、ソースだけでもおいしいです。
我が子は、ソフトソースだけペロペロなめて味わっていました。
▼さきほど紹介したように、お好みDRYは超・激辛ソースのベースになっているソースです。
お好みDRYソースは濃厚ソースの一種なので、とろみが強めです。
甘さもありながらフルーティーさもあるので、サッパリとした後口。
ソフトソースと同じく、ソースだけでもおいしいです。
▼定番ソースの種類と価格は、以下のとおりです(業務用のぞく)。
公式オンラインショップでもソースは購入できます。
「料亭だし」はいろいろな料理に応用できる万能選手
▼超・激辛ソースに次ぐ豊島屋の人気商品が「料亭だし」。
もともと、うどん店向けの業務用のつゆ「かけ自慢」という商品でした。
大野社長が子供の運動会に参加したとき、うどんを提供することに。
そのとき、かけ自慢1:湯10でダシをつくって、うどんを出しました。
すると、保護者たちから「おいしいので家庭用も販売して欲しい」との声が多く寄せられ、商品化。
平成3年(1991年)に「簡単・便利・楽しい」をキャッチコピーにして、「料亭だし」の名前で販売をはじめました。
すると、たちまち人気商品になったのです。
▼取材時、実際に大野社長が料亭だしでうどんつゆをつくり、味見をさせていただきました。
▼飲む前からダシのよい香りがしてきます。
飲むとダシのよい風味が口の中に広がり、深い味わいで、うどんのつゆのほかにもいろいろな料理に活躍できそうでした。
実際、料亭だしは以下のような料理にピッタリ。
ほかにもいろいろ応用できそうです。
▼便利な料亭だしは、以下のような容量・価格です。
料亭だしも、公式オンラインショップで買えます。
「ぼっけぇ旨辛醤油」も激辛ファンから人気
▼「ぼっけぇ旨辛醤油」は、超・激辛ソースの醤油版のような商品です。
ぼっけぇ旨辛醤油は、平成19年(2007年)に発売されました。
醤油の中に、唐辛子辛味成分のカプサイシンが配合されています。
「ぼっけぇ」は、岡山方言(備中方言)で「ものすごい」という意味。
▼よく見ると、醤油の中に細かくなった唐辛子が確認できます。
ぼっけぇ旨辛醤油を卵かけごはんや豆腐に少しだけかけて、食べてみました。
少量でも、醤油の甘辛い風味ともに唐辛子成分のピリ辛さを感じます。
料理の味がピシッと引き締まった感じ!
漬物や焼き魚のかけ醤油としてもおすすめです。
もちろん、ぼっけぇ旨辛醤油もかけすぎ注意です。
▼ぼっけぇ旨辛醤油の容量・価格は、以下のとおりです。
ぼっけぇ旨辛醤油は、公式オンラインショップで販売されています。
「ホルモン焼のたれ」はホルモンうどん以外にも幅広く活用できる
▼「ホルモン焼のたれ」は、岡山県津山市などのご当地料理の「ホルモンうどん」用のたれです。
津山のホルモンうどんが、津山のご当地グルメとして注目されはじめたときに新発売しました。
そのため、名前が「ホルモン焼のたれ」となっていますが、実はとても便利な「焼肉のたれ」なんです。
豊島屋のホルモン焼のたれは、ホルモンうどん以外にも幅広く応用できるのが特徴。
豚丼や肉野菜炒め、チャーハンなどに使ってもおいしいんです。
牛・豚・鶏肉・海鮮・野菜など、いろいろなものと合います。
・焼肉
・野菜炒め
・海鮮焼き
・生野菜
・チャーハン
▼ホルモン焼のたれは、本醸造醤油・みりん・清酒・味噌をバランスよく配合しています。
たっぷり入っているリンゴと、隠し味の鶏肉スープがポイントです。
そのため、ホルモン焼きのたれは、まろやかな味わいで食べやすいと思いました。
生野菜のサラダにかけてみましたが、意外とアリだと思います!
ホルモン焼のたれは、平成21年(2009年)に発売されました。
▼ホルモン焼のたれは、以下のようなラインナップです。
ホルモン焼のたれも、公式オンラインショップで取り寄せできます。
「塩だれ」は粗挽きの黒コショウがスパイシー
▼「塩だれ」は、名前のとおり塩味のたれです。
塩だれは、平成14年(2002年)に発売されました。
▼一口なめてみると、口の中に一気にサッパリとした塩味とともに、荒挽きの黒コショウのスパイシーな風味が広がっていきました。
これで肉を焼いたらおいしそうだと、なめた瞬間に感じます。
塩だれは、荒挽きの黒コショウやニンニクに、塩をバランスよく配合。
肉・魚介・野菜など幅広い料理に活躍します。
ほかに、焼き鳥などにも合いそうです。
塩カルビ丼や塩焼きそばもおいしいと思います。
▼塩だれの容量・価格は、以下のとおり。
もちろん、塩だれも公式オンラインショップで扱っています。
他社とのコラボ商品も!
長きにわたり地元で愛されている豊島屋の商品。
そのため、他社とのコラボレーションした商品も登場しています。
そこで、他社とのコラボ商品の一部を紹介。
「玉ノ浦 醤油パイ」はひらいと豊島屋の醤油「味露」のコラボ
▼「玉ノ浦 醤油パイ」は、玉島の和菓子店・ひらいと、豊島屋の醤油「味露(みーろ)」のコラボレーションです。
ひらいは、玉島銘菓「良寛てまり」の製造元として知られています。
味露は本醸造こいくち醤油で、深いうまみと豊かな香りが人気の商品。
▼玉ノ浦 醤油パイは、パッケージもおしゃれで上品な印象です。
▼葉っぱのような形で、表面には米菓子が。
▼裏側はこんな感じ。
サクサクとしたパイ独特の軽やかな食感です。
そして甘いパイのバターの香りとともに、醤油の甘く香ばしい上品な味わいがしました。
これは、かなりおいしいです!
ちなみに商品名の「玉ノ浦」は、玉島が江戸時代の干拓前に海だった時代の名前です。
玉ノ浦の名は『万葉集』にも出てきます。
「塩だれ味 横綱一番」「塩だれ味 おかき」は花田食品と豊島屋の「塩だれ」のコラボ
▼「塩だれ味 横綱一番」「塩だれ味 おかき」は、花田食品と豊島屋の「塩だれ」とのコラボレーションです。
花田食品は、豊島屋と同じく玉島にある菓子やポリ容器入り清涼飲料水の会社。
花田食品の人気商品である横綱一番・おかきを、豊島屋の塩だれの味に。
塩だれ特有のスパイシーな風味が楽しめます。
創業から約300年、タテソースの製造開始から約80年という老舗である豊島屋。
地元に愛されつつ、超・激辛ソースなどで全国的にも注目されています。
そんな豊島屋の代表取締役 社長・大野 豊(おおの ゆたか)さんにインタビューをしました。
豊島屋の代表取締役・大野 豊さんにインタビュー
豊島屋の代表取締役 社長・大野 豊(おおの ゆたか)さんにインタビューをし、超・激辛ソース誕生秘話や、豊島屋の特徴、今後の抱負などを聞きました。
インタビューは2020年1月の初回取材時に行った内容を掲載しています。
「超・激辛ソース」で全国から注目されるように
──「超・激辛ソース」はいつ頃から注目されるようになった?
大野────
超・激辛ソースは、最初は業務用だったんです。
発売は平成9年(1997年)。
それが、テレビや雑誌などのメディアで取り上げられて、徐々に注目度が高まっていきました。
やがて、家庭用も出して欲しいという要望に応え、平成12年(2000年)に家庭用の超・激辛ソースを販売開始したんです。
当初は、360ミリリットル換算で年間およそ500本強くらいの売り上げだったかなぁ。
それが、辛いもの好きやソース好きのあいだで口コミで人気が広がっていって、平成18年(2006年)には、360ミリリットル換算で年間およそ1万本を超える売り上げになったんですよ。
その後も口コミに加え、メディアで何度も紹介されたこともあり、今では360ミリリットル換算で年間およそ4万8,000本を売り上げるヒット商品になりました。
関西のソース文化も超・激辛ソースをヒットさせた要因
──超・激辛ソースはオンラインでも販売しているが、どこの地域のお客さんが多い?
大野────
地元・岡山はスーパーなどで買えますので、オンラインの販売は岡山県外が多いですね。
多いエリアは、関西地方と広島県。
どちらも、お好み焼きなどのソースを使う料理が多い地域です。
中でも、大阪府・兵庫県の2エリアのお客さんが多いですね。
というのも、関西のソース好きは一般家庭で複数のソースをブレンドして自分好みのソースをつくる文化があるんです。
そのブレンドするソースのひとつとして、超・激辛ソースがとても人気なんですよ。
実は、山陽自動車道のサービスエリアで超・激辛ソースを販売させてもらっています。
そこで見かけた関西のソース好きのかたが買って帰って「これはブレンドするソースとしていい!」と思っていただき、オンラインショップで超・激辛ソースを購入してくださるというパターンが多いです。
高速道路という人がよく立ち寄る場所で実際にソースを手に取ってもらい、実際に食べて気に入ってくれたから、オンラインショップで買ってくれたんだと思います。
しかも、ソース文化の根付いている関西というエリアの人が。
超・激辛ソースのヒットは、口コミやメディアの影響ももちろんあります。
それに加え、関西のソース好きのかた、高速道路のサービスエリアでの販売、オンラインショップの相乗効果も大きいと感じていますね。
「超・激辛ソース」の誕生は取引先からの要望がきっかけ
──超・激辛ソースができた経緯は?
大野────
きっかけは、取引先からの要望でした。
私たちのソースを納品させていただいている飲食店から「神戸の某ソースメーカーが製造している辛口ソースより、もっともっと辛い、すごく辛いソースをつくってほしい」と言われたんです。
そこで試行錯誤した結果、辛味成分のカプサイシンが当社比100倍のソースが誕生しました。
従業員やいろいろなまわりの人たちに試食してもらい、評判も上々。
こうして、超・激辛ソースが誕生したんですよ。
でも、取引先の要望があって、すぐ試作に取り組めたのは、当社に唐辛子エキス工場があったからなんです。
唐辛子エキスの製造は昭和40年代からのノウハウがある
──唐辛子エキスの工場はめずらしい?
大野────
全国的にも唐辛子エキスの工場を持っているのは、めずらしいですね。
実は、昭和40年代にすでに唐辛子エキスの工場を建てています。
長年にわたって蓄積された唐辛子や辛味成分に関するノウハウがあるからこそ、超・激辛ソースが誕生したんですよ。
なんで、そんな昔から唐辛子エキスを作っているのか気になりますよね?
もちろん、自社のソースにも入れたりもしていました。
それ以外に、味付け海苔や明太子などに入れたりする用途で、業務用唐辛子エキスを製造していたんですよ。
実は、豊島屋では業務用の商品もたくさん製造しています。
家庭用の商品は約50種類ありますが、業務用は約80種類ですよ。
取引先の要望に細やかに対応し、お店の味に合わせた調味料を提供
──なぜ業務用が80種類もある?
大野────
私たちは、取引先の要望に応え、小ロットから調味料や調味液を製造しています。
街の飲食店や食品メーカーなどは、店それぞれ、そしてメニューごとの味付けがあるんです。
たとえば、惣菜屋ならひとつの惣菜にひとつの調味液を使っていたりします。
ただ小規模な店や会社の場合、どうしても小ロットでの注文になりますよね。
大手の調味料メーカーだと、小ロットでの製造は対応していないことが多いんです。
そこで私たち豊島屋は、街の飲食店や食品メーカーに合わせ、小ロットでの注文に対応しました。
だから取引先の要望に応えていくうちに、業務用商品が80種類になりました。
お店ごと、商品ごとの味を実現しています。
超・激辛ソースをはじめ、個性的な商品は、そんな経験を生かして誕生したんですよ。
ちなみに、私が試作した商品は200以上あります!
「ご当地ソース」があってもいい
今後の抱負ややってみたいことは?
大野────
ご当地ラーメンやご当地焼きそばがありますよね。
私は、それと同じように「ご当地ソース」があっても良いんじゃないかと思っているんですよ。
日本各地、特に西日本にはたくさんのソースメーカーがあり、地域に根付いた商品を製造しています。
メーカーごと、地域ごとのソースの特徴もあるんですよ。
また、ソースの使い方も地域性がありますね。
実は、津山市など美作(みまさか)地方ではタテソースがよく使われています。
津山はホルモンうどんが有名ですよね。
ホルモンうどんは味噌だれを使います。
でも津山周辺では、焼きそばはウスターソースを使うんですよ!
これ、すごく特徴的ですよね。
しかもタテソースのウスターを使ってくれる店も多くて。
こうした地域ならではのソースの使い方やソースの味などを、もっとたくさんの人に知ってもらいたいですね。
実は、岡山県は全国有数のソース消費量が多い地域。
総務省の統計で、全国1位だったり2位だったりした時期もあります。
私も、なぜ岡山県がソースの消費量が多いのか、理由がわかりません。
このあたりも、探ってみたらおもしろいかもしれませんね。
産業観光に力を入れ、地域の歴史と魅力を全国へ伝えたい
──ほかに力を入れていることは?
大野────
今、産業観光に力を入れているんです。
私は、玉島の観光にもたずさわっています。
玉島地区や倉敷市内の会社をめぐる「産業観光ツアー」に、当社も入っています。
普段、見ることのできないソースの製造風景を見学したり、試食したりできて、たいへん好評です。
玉島をふくめ、倉敷は伝統産業が多く、老舗企業も多い地域です。
新しい企業にも、その魂は受け継がれていると思います。
そうした地域の伝統産業を、少しでも多くの人に知ってもらいたいと思っていますね。
そして、豊島屋は社員一丸となって「熱い心で、ときめく味」「今も受け継ぐ伝統の味」を作っていこうと思っています!
おわりに
私は小さなときから、タテソースになじみがあります。
そんなタテソースが、超・激辛ソースで全国的に知られるようになったのは、とてもうれしいです。
そしてヒット商品が生まれたのは、地元商店ごとの味に応えて、お店の味を再現してきた経験・ノウハウがあったからなのだと思います。
多くの辛いもの好き・ソース好きをトリコにする超・激辛ソース。
そして、そのベースとなっている定番のソース。
さらに料亭だしや塩だれなどの調味料。
老舗メーカーの伝統の味を、食卓に取り入れてみませんか。