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【にいけい編集部発】記者コラム&今週の主なニュース 11月24日〜11月30日

にいがた経済新聞

記者コラム

3カ月前のSNSを見てみた

何を話題にしようかと思ったが、やはり斎藤元彦氏が再選を果たした兵庫県の出直し知事選に触れずにはおけまい。

詳細については割愛するが、流れは多くの読者がご存じだろう。ふたを開けたらほぼゼロ打ち(開票率0%で当確)の10万票差をつけて斎藤氏が圧勝。新潟にいて、この間に兵庫県で何が起こっていたのかは肌感覚ではわからないが、県議会全会一致で不信任とされ失職した知事が圧勝で再選を果たす状況というのは、やはり既存の選挙に対する考え方では割り出せなかった。

ワイドショーの司会者は結果を受け「大手マスコミが敗北した」と発言したが、その発想もどうかと思う。

2024年に行われた、数々の選挙を思い出してほしい。前安芸高田市長の石丸伸二氏が躍進した東京都知事選、自民党総裁選の高市早苗の得票、衆院選の国民民主党の躍進(一方で大きく議席を伸ばしたはずの立憲民主が空気)など、ネット・SNSが大いに影響したと言われている。果たしてそれは既存メディアの「大人たち」が危惧するような「脆い時流」なのか。いや、ネットやSNSが選挙や政治で最も影響力を持つのは欧米では既に当たり前で、ロシア・ウクライナ戦争を見ても、戦争にまでSNSのプロパガンダは利用されている。その流れが日本にも来たというのが大きく背景にあるという指摘もある。

テレビのコメンテーターはこんなことを言う「SNSの情報は不確実で危うい。テレビや新聞はちゃんとしたファクトチェックを経て報じられる」と。これはSNSユーザーがどのようにSNS上の情報を摂取しているのかを理解していない証拠だ。はなからユーザーはSNS情報を「その程度」にしか信用していないから幾層の「フィルター」を通って似非情報は淘汰されていく。YouTubeなどのコメント欄等を見ても、質の悪い情報はほとんど相手にされない。

一方で「ファクトチェックされている」と声高なテレビの情報が、今回のように圧倒的な破綻があったとしたら(少なくとも百条委は『パワハラは確認されなかった』と結論付けている)、それに対する反発の大きさは覚悟しなければならない。これは「もうテレビの時代ではない」とか「オールドメディアなのだ」とかそういうことではなく、がたいが大きい分、いったん恣意が働いた報道を引き戻せないのだ。だから「大手メディアの敗北です」なんて、酔いしれた発言はやめていただきたい、気持ち悪いので。

要は圧倒的なスピード感に既存メディアは置き去りにされているのだ。まず兵庫県知事選で見せたN党の立花孝志の動きにテレビが対応しきれていない。こうしている今も、立花氏は、「公用PC(自ら命を絶った県民局長の)の中身(と言われる情報)」をどんどん開示して、百条委を煽り続けているが、テレビ・新聞はこれには触れず、「斎藤氏の当選は公選法違反で無効だ」などと、結局選挙前のトーンに戻している。

都知事選では、以前からYouTube動画で驚異の再生数を叩きだしていた安芸高田市議会の情報を咀嚼しきれずに石丸伸二という存在を無視し続けたことも含めて、スピードに着いていけない現れだなと感じる。

兵庫県知事のパワハラ問題について、3カ月前に流れたYouTube動画が、どういうわけか今また流れていた。当時はテレビのバッシングがピークにひどい時期で、本編もやはり酷くこき下ろした内容になっており「やはりファクトチェックは必要だな(笑)」と思った。コメ欄をひっくり返して見ても、本当に口汚く斎藤氏を揶揄する内容が多い、ひどいものだ。一方で、ごく少ないものの中には3カ月前なのに「パワハラの証拠が出ていないのに大丈夫か」や「2年間で公約達成の結果を出している」など支持したり評価したりする声もあるにはある。

このように令和において物事の態勢は刻々と変わる。SNSやYouTubeは確かに玉石混交なのだが、シャワーのように巷にあふれる発信情報の中で、情報それ自体がぶつかり合い、少しづつ研がれ磨かれて球体に近づいていくように感じる。それも、実に短いスパンの中でそれが行われる。いったい恣意の働く内部のファクトチェック一発と、どちらがまともなのだろうか。

(営業記者 伊藤 直樹)

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