市政施行70周年に初回顧展「自然、生命、平和 私たちは見つめられている 吉田遠志展」7月20日(土)~府中市美術館
地図の上では日本橋から西へ30㎞といっても、東京都のほぼ中央に位置する緑豊かな府中市は、1954年の市政施行から70周年を迎えた。府中市美術館ではその記念の企画として、版画家であり画家の吉田遠志(よしだとおし)の初回顧展が開催される。テーマは、「自然、生命、平和 私たちは見つめられている 吉田遠志展」。2024年7月20日(土)〜9月6日(金)
吉田遠志の父は明治の天才画家、吉田博。母ふじを、弟の穂高、その妻千鶴子も版画家という芸術家ファミリーで、息子の司、姪の亜世美も世界で活躍し続けるアーティストである。遠志は、父・博のもとで日本の伝統的な木版画の技術を磨き、木版画の実演と講習で全米、欧州を巡遊し、取材はアフリカや南極など世界各地に及んだ。
遠志は幼少期から動物園に親しみ、動物の写生に飽きることなく没頭した。彼の画題は野生動物であり、また顕微鏡で見える微生物にも関心を寄せた。制作意図は、「生命の根源」を探求することに向けられていった。遠志は幼い頃、病気で片足が不自由になり、その孤独感を埋めるように、絵を描くこと、動物と心を通わせることに没頭したのである。
「可愛いだけが動物ではない、弱肉強食だけでもない。アフリカで水辺を譲り合って仲良く暮らす野生の動物たちの平和な〝共存共栄〟の姿は、地上の原理を人間も守れと、描いて訴えている。野生動物は、愚かな人間をじっと見つめている」とは、本展の趣旨。
遠志は木版画、水彩画、油絵を描いたが、晩年には色鉛筆を駆使して絵本「動物のはなし」の制作に取り組んだ。計画は20巻であったが、17巻でその生涯を終えた。これら遠志の生涯と作品が紹介されるのは、府中市美術館では初めて。
▲マチャプチャリ Sacred Mountain in Nepal
吉田遠志(よしだとおし 1911~1995)
画家・吉田博とふじをの子として東京に生まれる。1歳でポリオに罹患、足を患う。幼少時は祖母と動物園にスケッチに行くのが楽しみであったという。1924年、伝統的木版画制作を開始。1930年には、父とインド、東南アジアを写生旅行。太平洋美術学校で絵を学び、以後同会展、日展、アンデパンダン展などに出品を重ねる1953~54年にかけ、ニューヨークジャパンソサエティの協力のもと、全米で木版技法講演を行っている。1972年にアフリカの自然公園を訪れ衝撃を受ける。1979年には長野県・美麻村に美麻文化センターを創立。1982年から動物絵本シリーズを計画し、1993年までの間に17巻を刊行。遠志の絵本は様々な賞を受賞している。1995年7月逝去。
市制施行70周年記念 自然、生命、平和 私たちは見つめられている 吉田遠志展
会期:2024年7月20日(土)〜9月6日(金)
会場:府中市美術館 東京都府中市浅間町1丁目3番地(都立府中の森公園内)
開館時間:10:00~17:00(最終入館16:30まで)
休館日:月曜日(8月12日は開館、翌13日(火)は休館)
お問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)
【府中市美術館 公式サイト】https://www.city.fuchu.tokyo.jp/art/