農地付き空き家が急増中! その訳と基礎知識をわかりやすく紹介【知っておきたい! 基本のき~農地編~】
「農地付き空き家」制度が出現してから農地取得のハードルが下がったとはいえ、移住者が農地を利用するには覚えておかなければならないことがたくさんあります。ここでは基本的な知識をQ&A形式で解説します。
掲載:2025年4・5月合併号
田んぼで自給用の米を栽培するなら、親しい仲間と一緒に作業したい。楽しみが倍増する。
Q 農地付き空き家ってなんでしょう?
A 農地を取得するには、農業委員会に申請して農地法第3条の許可を得る必要があります。以前は、「都府県で5反歩(1500坪)以上の下限面積」という高いハードルがありました。
しかし、10年ほど前から「農地付き空き家」という取り組みが各地で広がり、移住者の農地取得が容易になってきています(上記の下限面積も2023年に廃止されました)。これは自治体が取り組む空き家バンクの特例で、農地が1aまたは1㎡以上なら空き家と一体で農地取得を認めるもので、面積の制限はないに等しい状態です。
農地法の定めでは、すべての農地を利用する「全部効率利用」、通作できる場所に住んで年間150日以上は働く「常時従事」、無農薬栽培している地域で農薬を使わないなど「地域との調和」といった要件もありますが、実際には住民票の移動と周辺の農地に支障をきたさないこと以外は努力目標と考えていいでしょう。ただ、多少の地域差はあるので、自治体の担当者に取得条件を確認してください。
Q そもそも農地って?
A 農地とは、登記簿に記載された土地の地目が「田」「畑」になっているもので、水田や野菜畑だけでなく、蓮田、桑畑なども含まれます。また、採草(エサや肥料のために草を刈り取る)または放牧に使用している土地も農地法の対象です。地目が「山林」「原野」「牧場」となっていてもこうした農地に該当する場合があります。
土地の広さの単位は、正式には平方メートル(㎡)、アール(a)、ヘクタール(ha)というメートル法を使います。しかし、農村では「この畑は1町2反3畝」といった尺貫法の単位を使うことが多いです。この「町」「反」「畝」は土地の広さを表すもので、町は反の10倍、反は畝の10倍。畳2枚分の「坪」も常用されています。1反歩=300坪=約1000㎡=10aと覚えておけばいいでしょう。1町2反3畝なら3690坪(約1万2300㎡)になります。
Q 近くの遊休農地を借りることはできますか?
A 気に入って取得した空き家に農地が付いていない場合、近くに遊休農地(※)があれば借りたくなるもの。正式にはこれも農地法の対象で、農業委員会に申請して許可を得る必要がありますが、そのプロセスを経ずに農家からタダ同然で借りているケースが多々見られます。
農地は放置すると荒れ放題になるので、貸し借りの話がまとまりやすいのです。出荷しない菜園レベルでおとがめを受けたという話はまず耳にしませんが、念のため「草を生やさない作業委託でお借りします」と一筆書いて地主に渡す人もいます。
※遊休農地とは、農地法で定められた法令用語で、「かつて農地だったが現在農地として利用されておらず、今後も農地として利用される可能性も低い土地」と、「農地ではあるけれど周辺の農地と比較した時に利用の程度が著しく低い土地」の両方のことです。
文・写真/山本一典