【2024年版】ふるさと納税を利用した寄附で城の整備や復興を応援しよう!
全国の自治体で受付中の様々なふるさと納税の中には、お城の整備や復興を目的とした寄附があります。また、お城に関わりがある市町村に寄附するという考えもあります。今回ご紹介するふるさと納税を通じて寄附をすれば、それをきっかけにお城がもっと身近な存在になるかもしれません。※2024年4月26日 玖島城追記
■ふるさと納税を活用した城への寄附
2021年春に天守閣が完全復旧し内部公開もスタートした熊本城(熊本県)や、2019年に火災で焼損した正殿等を復旧中の首里城(沖縄県)を筆頭に、城の復旧や保存・整備を目的とした、「ふるさと納税」による寄附が注目されています。
1622年の築城時の姿を再現する福山城天守(福山城博物館)リニューアル工事が2022年8月に完了
日本100名城の福山城(広島県福山市)では、2022年に迎える築城400年に合わせて、西国鎮衛として城郭史上価値ある福山城の魅力を現在によみがえらせ、後世に価値を伝える事業として、「福山城築城400年記念基金」を発足。城びとでもおなじみの小和田哲男先生(静岡大学名誉教授)や春風亭昇太さんも応援サポーターとして名を連ねた基金には多額の寄附が集まり、福山城の価値や魅力向上に役立つ事業の財源にあてられました。
■ふるさと納税とは?
2019年の台風19号によって一部浸水した松代城太鼓門前橋。松代城は直接の対象ではないが、長野市はふるさと納税による寄附を募集している(台風19号以前に撮影)
ふるさと納税とは、地元や応援したい地域に寄付ができ、納税者は所得税や住民税の還付・控除が受けられる上に、特産の食材や伝統工芸品などを返礼品としてもらえる制度です。
ふるさと納税といえば返礼品が注目されがちです。もちろん、こだわりの城関連グッズの返礼品もお楽しみですが、返礼をともなわない寄附については、手数料が引かれずに対象の市町村に寄附金がわたります。城ファンにとっては、城の保全や整備に活用され、城が美しい姿を見せてくれるのが、何よりうれしい「返礼品」なのではないでしょうか?
■ふるさと納税で身近に感じる城の保存・整備
クラウドファンディング特典で山中城障子堀に入ったという「城びと」読者の声が寄せられている
ふるさと納税を通じて、城の保存・整備の実態を肌で感じることもできます。
山中城(静岡県三島市)を例にとると、日常的に維持管理していくために毎年1500万円以上のコストがかかります。しかも台風や豪雨によってたびたび被災し、その保護・維持管理は一筋縄ではいきません。
そこで三島市は山中城の維持管理にあてることを目的に、2018年から毎年、クラウドファンディング『日本が誇る貴重な文化財「山中城跡」を後世へつなげたい。』を実施。4年間で66万円近くもの寄附金が集まり、山中城の保存・整備かかる費用を身近に考えるきっかけとなっています。
■天災の被害を受けた自治体への支援
熊本城や首里城のように城の復旧を直接目指したふるさと納税ではないものの、城を有する市町村に、ふるさと納税を活用して寄附をするという形もあります。
久留米城がある福岡県久留米市は、令和2年7月および令和3年8月の豪雨災害による大きな被害を受けた
日本100名城・続日本100名城の城がある市町村では、山形県鶴岡市(鶴ヶ岡城)、石川県七尾市(七尾城)、岐阜県恵那市(岩村城)、福岡県久留米市(久留米城)、熊本県人吉市(人吉城)・八代市(八代城)、大分県玖珠町(角牟礼城)、長崎県対馬市(金田城)・五島市(福江城)などが挙げられます。
薩摩と肥後の国境に築かれ、石垣造りの桝形が駆使された佐敷城
日本100名城・続日本100名城ではありませんが、加藤清正時代に築城された佐敷城がある熊本県芦北町も大きな被害を受けました。城めぐりを通じて思い入れの強い市町村に、ふるさと納税を活用して寄附するのも、城好きならではの貢献ではないでしょうか。
■“お城らしい返礼品”がもらえるふるさと納税
城の整備・復興を目的としたふるさと納税の中には、城由来の返礼品を贈っている自治体も多くあります。その一例をご紹介します。
熊本市ふるさと応援寄附金(熊本県熊本市)
熊本城の復元・復旧にあてられる「熊本市ふるさと応援寄附金」では、1口1万円から受け付けている「復興城主」制度を通じて寄附すると、「城主証」と「城主手形」(熊本市が管轄する観光施設に無料で入場できる)などの特典が受けられます。
熊本城城主証(左)と城主手形。復興城主制度では、これらに加えてデジタル芳名板(大天守4階および復興城主受付横に設置)にも名前が登録される
玖島城石垣の石NFT(長崎県大村市)<PR>
長崎県大村市の大村市ふるさとづくり寄附では、返礼品として「玖島城石垣の石NFT」がもらえます。NFT(Non-Fungible Token。非代替性トークン)とは唯一無二な資産的価値が付与されているもので、「玖島城石垣の石NFT」は玖島城石垣の一つ一つをNFTとして所有することができます。
玖島城の石垣を一切傷つけることなく、未来に資産として受け継がれていくのがすばらしい
福岡城整備基金(福岡県福岡市)
福岡県福岡市が採用している「福岡城整備基金」は、主に福岡城跡の歴史的建造物(櫓・門等)の復元整備に係る経費に活用するものです。藩主の出入りや公式行事に用いられた上之橋御門(かみのはしごもん)や、三の丸北西隅に立っていた潮見櫓の復元を目指しています。1万円以上寄附した希望者を城内の三の丸スクエアに芳名板を掲示しています。
福岡城の芳名板。金額に応じて大きさが異なり、1万円で通常のもの、50万円以上で大きなプレミアム芳名板が掲示される
丸亀城石垣修復プロジェクト(香川県丸亀市)
2018年7月の西日本豪雨の影響により南西部付近の帯曲輪石垣が崩落、さらに9月後半に発生した台風の影響で帯曲輪西面石垣及び三の丸石垣が崩落した丸亀城。香川県丸亀市のふるさと丸亀応援寄附金の丸亀城石垣修復プロジェクトでは、石垣が復旧するまでの間、丸亀城の天守の観覧料が無料となる「丸亀城石垣復興城主証」が贈られます。
カードサイズの丸亀城石垣復興城主証。丸亀城石垣が復旧するまで天守の観覧料が無料となるので、復興状況の確認がてらに何度でも訪れたい
また、寄附金の使い道をお城に指定しているわけではないものの、返礼品としてお城グッズがもらえる地域もあります。
長野県諏訪市では1万円以上の寄附で日本三大湖城の一つに数えられる諏訪高島城のプラスチックキットを、福井県大野市では2万円以上で北陸の天空の城・越前大野城のジオラマを選ぶことができます。オリジナルのお城グッズを返礼品として用意しているのが富山県砺波市で、1万円以上の寄附への返礼品として「増山城登城記念手形・増山城戦国米」をセットで贈呈。島根県松江市では、2万7000円以上の寄附で、松江城が描かれた横に自分の名前が入ったハンコ「まつえイラスト印鑑」を作ってもらうことができます。
越中三大山城の一つに数えられる増山城の登城記念手形。材料のマスヤマスギは流通量が少なく、とても希少なのだとか!
他にも今人気の御城印を贈呈している自治体もあり、ユニークな制度として兵庫県姫路市が2023年11月から始めたのが「累積ポイント型返礼品」。寄附金額に応じた姫路市独自のポイント「石(こく)」が寄附者に付与され、貯まった「石」のランクに応じて次の称号やオリジナルの御城印などを贈呈するというもの。各称号(ランク)到達時に姫路市オリジナル御城印とエッチングプレートがもらえるほか、「銀冠城守」到達時には御城印用アクリルケース、「金冠城守」到達時には専用の収納桐箱が贈呈されます。
■他にもふるさと納税を活用した城の復興支援が
ふるさと納税を利用した城に関する支援の一部を城びとサイトでリストを公開中です。城の保存・整備にしても、災害からの復興にしても、実際に関わりをもつことで、もっと城が身近に感じられるはず。ふるさと納税をきっかけに、思い入れのあるお城と、関わりを深めてみてはいかがでしょうか?
執筆・写真/藪内成基(やぶうちしげき)・城びと編集部
国内・海外で年間100以上の城を訪ね、「城と旅」をテーマに執筆・撮影。『地図で旅する! 日本の名城』(JTBパブリッシング)や『親子でめぐる!御城印さんぽ』(青春出版社)などを執筆。城めぐりツアー(クラブツーリズム)の監修・ガイドを務める。
※歴史的事実や城郭情報などは、各市町村など、自治体や城郭が発信している情報(パンフレット、自治体のWEBサイト等)を参考にしています。