心地よい空間と美味しい料理でもてなす、加茂の「隠れ家Hiziri」。
加茂の駅前商店街を少し外れた裏路地にひっそりと店を構える「隠れ家Hiziri」は、今年で10年目を迎えます。老舗料亭で和食の腕を磨いた店主・石塚さんが供する料理の美味しさと、静かにお酒を楽しめる隠れ家的雰囲気が自慢で、毎晩グルメな大人たちが集う場所なんです。石塚さんにこれまでを振り返ってもらったら、「自分でお店やるなんて当時は考えてなかったんですけどね」と、笑って話してくれました。
隠れ家Hiziri
石塚 恵太 Keita Ishizuka
1985年加茂市生まれ。にいがた製菓・調理専門学校えぷろんを卒業後、中央区の老舗「日本料理 行形亭」や「よね蔵グループ」などで和食の腕を磨き、2015年に「隠れ家Hiziri」をオープン。お金について勉強中で、最近は仕込み中に税理士のYouTubeを流している。
偶然が重なり、自分のお店をもつことに。
――オープン10周年、おめでとうございます!
石塚さん:ありがとうございます。気づいたら10年経ってましたね。
――石塚さんは、昔から自分のお店を持つのが夢だったんですか?
石塚さん:いや、それが実はまったく考えてなかったんですよ。
――と、いいますと?
石塚さん:両親が「い志津か」という小料理屋をやってるんです。その店をいずれは継ぐつもりでいたので、自分でお店を持つ考えは一切ありませんでした。
――では、どういうきっかけでお店をオープンすることになったんですか?
石塚さん:勤めていたところを辞めて、実家に入ろうとしていたタイミングがちょうど下の子の生まれるタイミングと重なって。この仕事はなかなか子どもと一緒にいられる時間が取りにくいので、せっかくなら、ちょっとゆっくりしようかなと思ったんですよね。
――お子さんとの時間を優先させたんですね。でも、なぜそれがお店の開業に至ったのでしょうか?
石塚さん:従兄弟から、ここが空き店舗になるって紹介されたのがきっかけです。僕はそのとき近くの飲食店でアルバイトをしていて、紹介してくれた従兄弟は実家がスナックで、彼もバーテンのような仕事をしていました。料理を作れるやつと酒を作れるやつがいるじゃん、店やれんじゃん、やってみるか、みたいなノリです(笑)
――決断力がいいですね(笑)
石塚さん:いろいろ条件が重なったおかげで、逆に「お店をやらない」理由があんまりなかったって感じですかね。
――でも、お店をオープンさせるのは大変だったのではないでしょうか?
石塚さん:大変は大変でしたけど、ここも居抜きで使えたので、話をもらってからオープンまでは3ヶ月くらいかな。僕も従兄弟も家業が飲食関係で、お店のことは家族に何でも聞ける環境だったのが大きいです。
――なるほど、いろんな好条件が重なったんですね。それにしても、オープンまで3ヶ月はすごい。
石塚さん:その頃はまだ若かったのもありますね、勢いって大事だと思います。
毎日食べても、飽きない料理を。
――このお店のメインはお肉料理ですか?
石塚さん:そうですね、オープン当初からおすすめは「特製モツ煮込み」と「村上牛の握り」です。
――美味しそうですね。メニューはどうやって考えているのでしょうか?
石塚さん:目新しいものはそこまでないんですけど、子どもの意見は結構聞きますね。家の食材で試すときもあって、そうすると一丁前に「これ美味しいからお店で出しなよ」とか言ってくるんで、参考にしてます(笑)
――貴重なアドバイスですね(笑)。これまででメニューづくりやお料理に関して苦労したことはありましたか?
石塚さん:メニュー開発という点からは少し外れるんですが、以前週5でうちに通ってくださっていた方がいまして……。
――週5!?
石塚さん:週6で飲みに出られていて、そのうち5日はうちにきてくれていたんですが、メニューを指定されないんですよ。なんでもいいから美味いものを出してくれって。
――ええ……、それを週5で提供するのは緊張しますね。
石塚さん:次の日も来てくださるのが分かっていたんで、どうしたら飽きずに食べてもらえるだろうって考えてましたね。ただ、何を出しても文句は絶対に言わず、美味しそうに召し上がってくださる素敵な方でした。今はお引越しされて、県外にいらっしゃるそうです。
隠れていない「隠れ家」のこれから。
――「Hiziri」って、こんなにおしゃれで料理も美味しいのに、なかなか情報が出てこないんです。もしかして、取材NGだった時期があるんですか?
石塚さん:まったくないです! 単純に発信が苦手で……。SNSも更新しなきゃとは思いつつ、何を投稿したらいいか分からなくて放置してます(笑)
――オープン当初も広告は打ってないんですよね?
石塚さん:一切してないですね。当時、SNSはFacebookしか知らなかったので、そこでオープンしますってお知らせだけしました。雑誌とかの取材がきたこともないですし。
――これまで、どんなお客さんが多かったのでしょうか?
石塚さん:最初のころは、飲食のつながりでお客さんがきてくれたり、市内の会社に勤めてる方がきてくれたりしました。このあたりは自分で商売をしている少し上の年齢層の方が多くて、そういった方がうちを気に入ってFacebookにあげてくれたことで、いろんな人に知ってもらえるようになりました。
――落ち着いた年齢層の間で、口コミが広がっていったんですね。
石塚さん:そうそう。最初は20代前半とか若い人が集まれる場所にしたくて、価格も安かったんですけどね。オープンしてすぐ若い子たちは飲みに出ないことに気づきました。客層が30~40代くらいの方がメインになっていたので、メニューや価格帯を変更して、今のかたちに落ち着きました。
――「Hiziri」は確かテイクアウトもありますよね。
石塚さん:そうですね、今も近所の方から注文をもらってご自宅まで届けることもあります。大晦日はオードブルに対応してますし、事前に予約をもらえればイベント用に作れるので、気軽に使ってもらえると嬉しいですね。
――最後になりますが、これから先お店をどういうふうに盛り上げていきたいですか?
石塚さん:オープン当初からやってることは変わりませんが、お客さんに美味しいものを提供して、楽しい時間を過ごしてもらいたいですね。隠れ家って名前はついてますが隠れてないんで(笑)、気軽にきてもらえるようにまずは苦手なSNSをがんばります。
隠れ家Hiziri
加茂市穀町8-7