片寄涼太「tenkiame / 今夜はブギー・バック feat eill / prod Shin Sakiura」インタビュー――カッコつけないど真ん中のJ-POP / いまの世代のブギー・バック
――ソロの最新曲「tenkiame」と「今夜はブギー・バック feat. eill / prod. Shin Sakiura」は、タイプの異なる素敵な2曲となりましたね。
「ありがとうございます。これまでソロ曲は配信でのリリースはしていたんです。でもそのたびに応援してくださる方の手元に形として残る音楽を届けたいなと思っていたので、30歳になる節目のタイミングで、フィジカルで残るシングルをリリースできて良かったなと思っています」
――今回、「tenkiame」の楽曲提供はシンガー・ソングライターのeillさんですが、どのような出会いで実現したのでしょうか。
「僕のソロ活動では、これまでいろんなアーティストさんからの楽曲を頂いていて。その流れで、今回はどんな方と一緒にやりたいかなと思った時に、eillさんの名前が挙がったんです。もともと個人的に楽曲も聴かせてもらっていましたし、すごく好きな音楽性でもありましたし、なによりも女性の方が書き下ろす歌を僕が歌うということに新鮮味があるのかなという楽しみがあったんです」
――eillさん自身の楽曲もとても素敵ですよね。
「すごくいいですよね。独特の世界観や、唯一無二の歌声をお持ちですし、楽曲の幅も広大きいところが面白いですよね」
――楽曲についてはどんなオファーをされたのでしょうか。
「実際にお会いして打ち合わせをしたときに、自分が聞いてきた2000年代のR&Bテイストでありながら、J-POPという、あくまでもポップスであることは貫きたいということを伝えました。さらに、悲しかったり悔しかったり、落ち込んだ出来事を洗い流してくれるような“天気雨”をテーマにして、最終的にポジティブになれるような曲にしたいというアイディアもお話させていただいたんです。eillさんはそれらをすべて受け止めてくれて、楽しく作りますと言ってくださったので、その時点からどんな曲ができるのか、すごく楽しみでした」
――実際に出来上がってみた時はどんな印象でしたか?
「実は最初にトラックを聴いたときに、新鮮さが際立っていて、一体どんなものになるのか、レコーディングをしてみないとわからないなと思っていたんです。でも、レコーディングの時にeillさんとともに一緒に作りながら歌うなかで、最終的には思っていた以上に晴れやかでポジティブな楽曲に仕上がった気がします」
――いま、日本の音楽界ではダンストラックが主流ですが、この曲はものすごくキャッチーだと感じました。
「そうですね。グループだと、もっとダンサブルな曲に寄るんですが、ソロで歌を出すときに、あえて王道っぽいことをやりたいって思っていたんです。カッコつけずに、ど真ん中のJ-POPを歌いたかったので、あらためてすごくいい曲になったなと思いました」
――聞きやすい、歌いやすい楽曲だからこそ、歌詞にある恋が実らなかった主人公の物語がグッと心に刺さりました。
「すごく切ないですよね。サウンドはポップスで、すごく爽やかなんですが、憂いがあって。主人公がいろんな感情を飲み込んで大人に成長していくところもリアルですし。でも女性目線の歌詞だからこそ、つらいことを乗り越えた先の何か、清々しくも勇ましくあるような部分を表現できたらいいなと思いながら歌いました。悔しさも残るし、忘れられないけれど、すごく後味がよく、最後はシンガロングして終わるんですよ」
――なかなかそうはなれないかもしれないけれど、そうありたいですよね。
「そうですね。このタイミングでリリースする僕のソロ曲として、ファンの方への感謝ともとれる言葉がたくさん詰まっているので、そういった角度からも楽しんでもらえたら嬉しいです」
――レコーディングはいかがでしたか?
「すごく楽しかったです。ソロだからといって肩に力をいれなくてもいい部分もありますし、自分が描いたイメージをすんなりと自然に表現できた気がします」
――ジャケットやアートワークもすごく素敵ですね。
「この写真は、実は「今夜はブギー・バック」のMVの撮影中に撮ったんです。僕の表情は、希望にも取れますし、自分自身の今後の未来、今までのキャリアを振り返りつつも、今後を見据えて新たなキャリアをスタートさせるような節目となる写真でもあるのかなと思い、この写真をジャケットにしました」
――たしかに、すごく吹っ切れたような表情ですね。なぜいま「今夜はブギー・バック」をカバーしようと思ったのでしょうか?
「この曲は1994年という、僕が生まれた年にリリースされた曲なんです。その曲を、30年が経ったいま、カバーするということに意味があるなと思いましたし、僕にとっては、清水翔太さんと加藤ミリヤさんがカバーしたバージョンの方がなじみがあるんですよね。その曲は加藤ミリヤさんがメインで歌い、清水翔太さんがラップをするというスタイルだったので、その逆として、僕が歌い、今回「tenkiame」で楽曲を提供してもらったeillさんにラップをしてもらう新しい解釈で完成させようと思ったんです」
――この曲が世代を超えて愛される魅力はどこにあると思いますか?
「歌ってみて思ったんですが――誤解を恐れずに言えば――歌詞の意味があまりよくわからなくて(笑)。でも、だからこそすごく楽しいんですよね。さらに、音遊びや語感などを重視したこの曲は、いまの世代の子たちにも、より響くのではないかなと思ったんです。今回カバーするにあたり、プライベートで親交のあるShin Sakiuraくんにアレンジをお願いして仕上げてもらいました」
――Sakiuraさんとも親交があったんですか?
「そうなんです。彼も94年生まれで同じ年なんですよね。以前から友だちで、一度カフェでお茶をしていたときに、“こういうのをやりたいんだけどどうかな?”と話したら、“ぜひ”という答えをもらえたので、お願いしました。結果的に予想以上にリッチでめちゃくちゃカッコいいトラックを作ってくれたので感動しました。実は、eillさんはラップの経験があまりなかったようで、不安だと言っていたんですが、本番はすごくカッコよくしてもらって、さすがだなと思いましたね。さらに、元々の曲には“ゲップ”というリリックがあるんですが、eillさんが“女子的にゲップはちょっと”ということで“ピース”に変わったんです(笑)。それもあってよりキレイなギャル感が出ていたので、今の世代らしいブギー・バックになったように思います」
――それにしても、eillさんにSakiuraさんと、プライベートでアーティストさんとの交流も多いんですね。
「そうですね。完全にプライベートでライブに行ったりもしますし、ミュージシャン同士で情報交換をしたりしていて。なかでもSakiuraくんはそういった話をすごくしやすいんです。つねに最近した仕事のことや、新しい音楽の話などをしているだけで、次の展開が生まれたりするのですごく面白いですね」
――MVはどのようなものになっているのでしょうか。
「今回は原曲となるブギー・バックのMVのテイストに、なにか都会的なものを融合させ、いいところに落とし込めたらいいなというアイディアから制作をし始めました。監督さんも“令和版ブギー・バック”を作りたいと言っていたので、カットもオリジナルの雰囲気をありながら、ハイウェイをバックに歌う都会的な空気感を残した映像になりました」
――ソロとしてはもちろん、GENERATIONSとしての活動も新たな一歩を踏み出すタイミングになりますね。
「そうですね。GENERATIONSとしてもツアーが控えていますし、新しいGENERATIONSとしての期待値も上がっている感覚があるんです。これから先、より深めて成熟していく部分も見せたいと思っていますし、10周年の節目からさらに進化したアーティスト像を表現していきたいなと思っています。さらに僕がソロで活動しているほかに、他のメンバーもそれぞれ動いているんです。なかでも、(白濱)亜嵐くんのDJ活動にすごく興味あるんですよ。みんながいろんな場所でソロとして活動することでより筋肉?をつけて、グループに還元されて行くことが楽しみですし、(数原)龍友くんのように、バイクやサーフィンなどのカルチャーが好きな人達からの認知が広がり、それぞれが新しいGENERATIONSへの興味の幅を広げていることがすごく面白いなと感じています」
――楽しみにしていますね。そしてプライベートなこともお聞きしたいのですが、いまはどんなことをしている時が一番幸せですか?
「やはり家族との時間は大切な時間ですね。さらに、プライベートではいろんな勉強をしたいと思い、ワインの資格の勉強を始めました。その時間がすごく有意義で、これから30代になるにつれて、よりアーティスト活動のほかに、何かを学び続けていけたらいいなと思っていて。自分にとって、まだまだ足りないことはたくさんあると思うので、たくさん積み重ねていきたいですね」
(おわり)
取材・文 / 吉田可奈
写真 / 野﨑慧嗣
2024年8月21日(水)発売
CD+DVD/RZCD-67079B/2200円(税込)
CD/RZCD-67080/1210円(税込)
rhythm zone
片寄涼太「tenkiame / 今夜はブギー・バックfeat. eill / prod. Shin Sakiura」