声をかけ、パスをつなぎ、釜石を支える 新採用の市職員 ラグビー体験でまちの精神を体感
「鉄と魚とラグビーのまち」とうたう釜石市。近代製鉄発祥の地であり、三陸の海の幸に恵まれるまちに今春、市職員として新たに10人が加わった。初めの1週間ほどは新人研修が設けられ、まちの概要や市の施策などの講義を受ける。座学が中心だが、「ラグビーのまち」の理念を理解してもらうため用意しているのは“実践”。新採用職員たちはボールをつなぐラグビーを体験しながら声がけ、チームワークの大切さを感じ取る機会にする。
ラグビー研修は4日に行われ、場所は釜石鵜住居復興スタジアム(鵜住居町)。市文化スポーツ課職員らの案内で、2019年のラグビーワールドカップ(W杯)日本大会の試合会場となった施設を見学後、W杯誘致の経緯や、「一人はみんなのために みんなは一人のために」というラグビー精神がまちづくりの基本にあること、大会レガシー(遺産)のスタジアムやボランティアとの絆を生かした取り組み、人材育成について座学で学んだ。
その後、近くにある市民体育館に移動。釜石シーウェイブス(SW)RFCの元選手で釜石ラグビー人材育成専門員(市文化スポーツ課所属)の佐伯悠さん(40)が講師を務め、ボールは後ろへ投げるなどルールを説明した。新職員らはパスをつないでトライまでの速さを競ったり、遊びを交えた体験で楕円(だえん)球への感覚を体になじませた。
仕上げは、タグラグビーのミニゲーム。2チームに分かれ、タックルの代わりに腰に付けたひも(タグ)を取って攻撃を止め合い、パスをつないでトライを目指した。体格や運動能力にかかわらず楽しめるのが特徴で、体育館は爽やかな笑顔と笑い声であふれた。
市職員の先輩でもある佐伯さんは「ラグビー精神、やる気を持って業務に臨んでもらえたら。『できない』ではなく、『やってみる』のが大事」とアドバイス。個性的な動きでチームメートの笑顔を引き出した税務課配属の中村翔さん(37)は「初めてのラグビーは面白かった。チーム力を高めるには、声がけが大事。感じたことを生かし、組織作りに取り組みたい。自分も周りの人も笑顔にできる職員になりたい」と汗をぬぐった。
市オープンシティ・プロモーション室への配属が決まっている佐々木優奈さん(22)は、W杯開催時に市内に設けられたファンゾーンで高校生ボランティアとして活動。人々の熱気から「釜石=ラグビー」という印象を強く感じていて、「大事にしたい」とラグビーのまちの理念に理解を示す。「育ててくれた地域に恩返しを」と市職員を選択。研修では新社会人として不安に思う部分があったというが、ラグビー体験で同期の仲間の人柄に触れ、「明るく笑わせてくれたり、悩んでも相談できる」と安心感を得た様子。「地域の方に信頼され、『帰ってきたい』と思ってもらえるまちづくりに貢献できる職員になりたい」と笑みを広げた。