発達障害息子、中学進学で中高生向けの放課後等デイサービスへ。小学生時代と違った支援内容は?
監修:室伏佑香
東京女子医科大学八千代医療センター 神経小児科/名古屋市立大学大学院 医学研究科 生殖・遺伝医学講座 新生児・小児医学 博士課程
中学生になり、新しい放課後等デイサービスへ
わが家の息子のトールはこの春小学校を卒業し、中学1年生になりました。ASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如多動症)の診断を受けていて、小学校から引き続き、中学校でも特別支援学級に在籍しています。
トールは小学2年生の秋から小学6年生まで、ずっと同じ放課後等デイサービスに通っていました。その施設での支援内容は、集団で過ごすスキルを身につけるためのものが多かったように感じます。ゲームや遊びを通して、順番を守ることや勝ち負けに対する捉え方、お友だちに声をかける時の言葉の選び方、ケンカやトラブルになってしまった時の対応など、周りの人との関わりについて学んでいました。
トールは小さな頃から自分の好きなものに関して話を聞いてもらいたい気持ちが強く、相手の反応などお構いなしに話し続けてしまうことがありました。相手が全く分からないようなマニアックな内容でも話し続けてしまうので、嫌な気持ちにさせてしまうのではないかと心配していたのですが、小学校高学年の頃には相手に合わせて話の内容を変えることができるようになってきました。放課後等デイサービスの職員の方に様子を聞いてみたところ、利用しているお友だちの中でも、話したい内容について知識のある人や興味を持っている人にその話をし、そうでない人と話す時には別の話をするなどの対応ができるようになっていたようです。
こちらの放課後等デイサービスにはとても楽しく通っていたのですが、小学生のみを対象にしている施設だったため、中学進学に伴い、同じ系列の別の放課後等デイサービスに通うことになりました。
小学生向けの放課後等デイサービスとの違いは?
中学生になってから通い始めた施設は、中学生と高校生のみが在籍しています。対人スキルに関しても引き続き学んでいることとは思いますが、もっと自立に向けての支援内容が増えてきているようです。
実際に市で配布しているゴミの分別表を見ながらゴミの仕分けをする、掃除機をかける、シャツやズボンを畳む、トイレ掃除をする……など、日常生活で必要な家事に繋がる作業を行っているようです。今まで通っていた放課後等デイサービスでも、テーブルを拭く、おやつのお皿やコップを片づけるなどの簡単な作業はやっていましたが、内容がよりレベルアップしているように感じます。
また、姿見を使っての身だしなみのチェックも自分たちでしているようです。外出の前には、制服のシャツがだらしなく出ていないか、髪が乱れていないか等チェックしていると聞いています。
発達段階や年齢に応じた支援に、心強さを感じて
これから思春期に入る息子に、このような日常生活に沿った内容を改めて教えるというのは、家庭だけではなかなか難しい面もあったかもしれません。また、中学校での定期テスト対策や高校進学のことなど、いろいろと考えなければならないことが増える中で、放課後等デイサービスで「将来の自立に向けての支援」に取り組んでもらえることは、非常に助かると思っています。
もともと、学校のほかにも居場所ができたらいいなと思って通い始めた放課後等デイサービスですが、同年代の子どもたちと過ごす時間を通して学べることも多く、成長につながっていると感じています。新しい施設での支援を通して、これから先どのように成長していくのかとても楽しみです。
執筆/メイ
(監修:室伏先生より)
放課後等デイサービスでのトールくんの学びや成長に関して、共有くださりありがとうございました。新しい施設では、生活スキルの支援が行われているとのこと、思春期真っ只中のお子さんに家庭だけで教えようとすると、親子関係がストレスになったり、タイミングや方法が難しい場面もありますよね。そうした部分を友人と一緒に外の環境で学べる機会があるのはとても心強いことだと思います。
ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如多動症)のお子さんにとって、生活スキル獲得のための支援はとても重要です。お子さんのもつ特性により、生活スキルの習得は一筋縄ではいかないこともあるからです。ASD(自閉スペクトラム症)のお子さんでは、生活スキル(身支度、掃除、整理整頓、服の管理、金銭管理など)といった日常的な活動には興味が湧かず意欲的に取り組むことが難しかったり、「なぜ必要なのか」が抽象的に理解しづらく自分にとっての意味やメリットが見えにくいこともあります。ADHD(注意欠如多動症)のお子さんでは、「先の見通しを立てにくい」「衝動的に行動しやすい」「ものの管理が難しい」「同時進行で複数の事柄に気を配って進めることが難しい」などがあり、予定の管理、金銭管理、整理整頓などに苦手さが出やすいです。
これらの特性を意識的した関わりや、学びを得るための環境はとても大切で、「明確な見通しを持たせる」「視覚的な支援を用いる」「小さな成功体験を積めるようにする」「興味と結びつけて取り組む」といった工夫が有効です。例えば、視覚的に分かりやすいカレンダーやチェックリストなどを作成したり、物の場所を写真やラベルで明示したり、1回の片づけの範囲を区切ったり、などが効果的なこともあります。幼児期や小学生のうちから取り組みを開始しておくとスムーズに導入しやすいですし、最終的にはご自身で困りごとへの工夫をされる姿も見られるようになってくると思います。
生活スキルの習得は一朝一夕にはいきませんが、日々の中で小さな成功を積み重ねていくことがとても大切です。お子さん一人ひとりのペースを大切にしながら、興味や得意なことを活かした支援を工夫していけると良いですね。家庭や学校、支援の場が力を合わせて見守っていければ、きっと大きな成長につながっていくはずです。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。