恋愛×ギャグで心がほっこり! ロボットメイドと御曹司のラブコメ――秋アニメ『機械じかけのマリー』主演 東山奈央さんインタビュー|ロボットと人間、2面性を持つキャラクターを演じる難しさ
2025年10月5日から放送中のアニメ『機械じかけのマリー』は、花とゆめコミックスで全6巻が発売中の大人気作品。物語の内容は元天才格闘家の主人公マリーと、大財閥の御曹司アーサーの交流を描いたハートフルラブコメディ。マリーは自らを“機械人形(ロボットメイド)”と偽り、人間が苦手なアーサーの屋敷で働くことになる――。
今回は放送を記念して、主人公マリー・エバンスを演じる声優の東山奈央さんにインタビュー! 感情を表に出さないロボットメイド“マリー”を演じた感想や気をつけたポイント、作品の魅力についてたっぷり語っていただきました。
【写真】秋アニメ『機械じかけのマリー』東山奈央インタビュー|2面性を持つキャラクターを演じる難しさ
ハラハラドキドキなハートフルコメディ『機械じかけのマリー』の魅力は要素の多さ
──『機械じかけのマリー』の作品について、どのような印象をお持ちですか?
東山奈央さん(以下、東山):原作の漫画がテンポよく進むので、サラサラっと読めるおもしろさがあります。さらに登場人物がとても生き生きしていて、誌面のなかでキャラクターが動いているんじゃないかと思うくらいアクションシーンが豊富です。そして、ハートフルなシーンも外せません! 『機械じかけのマリー』は一言で表せないくらい、いろんな要素がギュッと詰まっている作品です。
──恋愛と笑い、アクションなど、この作品は本当に要素が多いですね!
東山:そうなんです。私が特に好きなのは、登場するキャラクターがみんなチャーミングなところです。アニメのアフレコでの事前打ち合わせでは、音響監督さんは「各話いろんな殺し屋の方が現れますが、殺意むき出しな感じではなくて、人の良さが垣間見れるキャラクターたちです。本人たちは一生懸命任務を遂行しようとしてるけど、視聴者からはおもしろおかしく見えるようにしたい」と語っていました。
──おもしろおかしい暗殺者ですか?
東山:はい。実際にどの登場人物も憎めないんです。殺し屋ではあるんだけど、見ていてほっこりすると思います。そして私が演じるマリーも、ロボットメイドのふりをしていますが本当は人間です。でも、アーサーにバレたら命が危ない……。「バレないわけあるかー!」と思われるかもしれませんが、どこか抜けていておもしろい、平和な感じのお話です。ぜひ見ていただきたいです。
──東山さんが演じる主人公“マリー・エバンス”の紹介をお願いします。
東山:マリーは御曹司“アーサー”のお屋敷にロボットメイドとしてやってくる女の子です。というのも、アーサーはいままでに何度も命を狙われているので、人間不信になってしまいました。だからマリーはロボットメイドとして、アーサーのもとに送り込まれたんですね。
──なるほど! 設定からコミカル(笑)。
東山:そういう事情なので、マリーは自分が人間だとバレちゃうと仕事を首になるどころか、命も危ないんです。だからマリーはアーサーの前ではご飯をたべることもお風呂に入ることもできません。ロボットとして振る舞わなければならないんです。
──生活が徹底してますね。
東山:そのかいもあって、アーサーはロボットメイドのマリーに心を許してくれます。人間不信なアーサーが、メロメロのデロデロになって膝枕まで頼んでくるんです! 「女の子の膝枕なんてふわふわだからバレるだろー!」って思われるじゃないですか? でも安心してください。マリーは元格闘家なので、めちゃくちゃ筋肉質! だから太ももはカチンコチンなんです(笑)。
──そんなバカな(笑)。
東山:アーサーは「わー、すごい。機械だから硬いんだな~」とか言って、気づいてないんです。そんなこんなで、お屋敷でマリーはいろいろな秘密を抱えながら、ロボットメイドとして仕え続けるんです。そんなハラハラドキドキの生活の中から芽生える、マリーとアーサーの恋を楽しんでいただける作品となっています。
──東山さんから見た人間不信なアーサーは、どこが魅力だと思いますか?
東山:真面目なんですけどチャーミングで、意外と“ヌケている”のも人間として魅力的です。人の上に立つものとしての自覚を持っている男の子なので、普段は堅物だし厳しいのですが、マリーと二人っきりになると、人が変わったように甘えてくるかわいい男の子です。このギャップが一番の魅力でしょうね。
──普段アーサーは、相当なストレスを抱えながら生活してそうに聞こえます。
東山:でしょうね。マリーを演じているからかもしれませんが、とても母性本能をくすぐられるキャラクターです。普段は肩肘張って生きなきゃいけない人間だから、等身大の自分をさらけ出せない。だから「この人の居場所を守ってあげたい」と思わせる人です。
ロボットメイドと人間のマリーは正反対、2面性を持つキャラを演じる難しさ
──役作りについて伺います。ロボットのフリをしながら生活する女の子マリーを演じる上で、注意した点は?
東山:マリーの役作りは、かなり難しかったです。というのも、マリーはもともとロボットのように見えるくらい感情表現が乏しいんです。機械のような人間なのが、彼女の個性です。でも、無機質のようでありながら、どこかにかわいらしさが残っている……そんな部分を大切にしたいと思って演じました。
──聞いているだけで難しそうです!
東山:淡々としたセリフが続くと、漫画では気になりませんがアニメだとメリハリがなくなってしまいます。また、マリーは表立って出てくる感情は豊かではありませんが、内面の喜怒哀楽は激しい子です。これもアニメになるときに表現するのが難しいポイントでした。感情を声のアップダウンだけで表現しようとすると、ファンのみなさんが思い描いている“マリー像”からかけ離れてしまう……。そうならないように、マリーの口から発してる言葉と、心の中での感情の違いを声で表現するのが、とても難しかったです。
──漫画とアニメの違いについてのお話は、とてもおもしろいですね。
東山:収録時に監督からも指示されましたが、“マリーは機械っぽい女の子”という約束事を、視聴者のみなさんにわかってもらわなければならないんです。それを踏まえたうえで、そこからどんどん自分の恋心に気づいていったり、後半に向かって感情豊かになっていくんです。なので序盤からツッコミセリフも多々ありますが、あまり前のめりにならないように注意しました。前半は抑えるお芝居、後半になるにつれて感情豊かに変化していく……というグラデーションが難しかったです。
──そもそもですが、ロボットメイドと人間のパートの収録は時系列に沿ってアフレコしたのでしょうか? それとも別々に収録したのでしょうか?
東山:時系列に沿って収録しています。キャラがガラッと変わるので切り替えはたいへんですが、タイムラインに沿って演じたほうが作品全体の仕上がりのイメージがつきやすいからです。私自身はとても忙しいけど!(笑)
──2人のキャラを同時に収録しているようなものですよね?
東山:こんなに技術的に難しい演技は初めてです! 第3話くらいまでは、事前に行う台本チェックの方法が定まらなかったです。どうやってメモ書きをしたら、アフレコ現場で演じやすくなるのか……試行錯誤しました。
──どのようなメモ書きで対処できたのでしょうか?
東山:実践してよかったのは、視覚的にわかりやすい“色分け”でした。マリーのセリフとモノローグを、ペンの色を変えてチェックしました。普段は赤ペンだけでチェックすることが多いのですが、この作品では台本がカラフルになりました(笑)。
一同:(笑)
東山:複数のペンを使うのでチェックにとても時間がかかりましたが、こうしておかないと本番で振り落とされちゃいますからね。マリーの感情の変化が目に飛び込んでくるようなメモ書きを意識しながら台本を作りました。
──そんな苦労があったのですね……。
東山:大変ではありましたが、もちろんとっても楽しかったですよ!(笑) 監督さんも音響監督さんも私の悩みに寄り添ってくださり、スムーズにできなかったときは優しくフォローしていただきました。お話を伺ったら、実は監督も私と同じ苦労をされていたんです。いつもは無表情の機械っぽいマリーですが、ふとしたときに見せるかわいらしい乙女の表情が出てくるので、バランスをものすごく考えてアニメを作っていたんです。アニメ作画の難しさと、キャラを演じる難しさ。分野は違えど同じ難題を乗り越えて、視聴者さんが見たときにスッと入りやすい作品ができました。
──いいお話ありがとうございます! チーム全体で作品の完成度を上げている様子が伝わってきます。苦労とは反対に、楽しかった部分は?
東山:この作品は恋愛コメディー作品なので、キュンとするシーンも大切ですがギャグのシーンもすごく魅力です。そこをどこまではっちゃけて演じられるかが楽しかったです。ただ最初に、音響監督さんからギャグシーンについて、「おもしろいでしょ? ここで笑っていいんだよ?みたいに演じると興ざめしちゃうので、そうならないように」というお話もあったので、そこは意識して現場全体で取り組んでいました。
──“サムい”ってヤツですね!
東山:そうです!(笑) この作品のキャラクターたちは一生懸命に生きているんです。「その姿が滑稽に映るのをギャグにしてほしい」とディレクションをいただきました。マリーの表情はコミカルに描かれているので、作画に負けないように、抑制されたなかではありますが生き生きとお芝居するのが楽しかったです。
──エンディングは東山さんが歌うキャラクターソング「Cross heart〜偽りのない気持ち」ですが、この曲も感情を抑えて歌唱されたのでしょうか?
東山:楽曲は恋心のかわいらしさだったり、「恋っていいな」と感じられるストレートでキュンキュンするラブソングです。作中のマリーは淡々とした話し方をしますが、これを意識しすぎると楽曲の良さが伝わりにくくなってしまいます。なのでレコーディング現場のスタッフさんと打ち合わせをして、何回も歌って完成させました。
──何回も歌う?
東山:はい。まず最初にマリーらしく歌い、そこから徐々に「マリーらしさ」を薄めつつ、かわいらしい楽曲に馴染むように歌っていきました。そのプロセスを踏むことで根底にあるマリーらしさを見失わずに歌うことができましたし、もっともバランスのよいテイクを探っていくことができましたし、とてもいい仕上がりになりました!
各声優の技工が光るアニメーション作品
──アーサー役の石谷春貴さんと共演した感想をお聞かせください。
東山:石谷春貴くんとは同い年で、過去にも共演がある仲の良い声優仲間です。今回の作品でも、いいタッグでやらせていただけたと思います。セリフの尺でどちらかが少し押しちゃいそうなときに、事前に声を掛け合って、いい呼吸でやり取りできるように相談させてもらったり、セリフの意味合いについても一緒に話し合って作戦を練らせていただきました。石谷くん自身もアーサーの演技を楽しんでいるのが伝わってきました。マリーと二人っきりのときに一気にデレデレになるところとか、ギャップを楽しんで演じているのが伝わってきました。
──本物のロボットメイドの“マリー2”の担当は、小清水亜美さんですね。
東山:収録スタジオでのお話ですが、小清水さんが初めてマリー2の声を発したとき、現場の空気が変わりました。一同が「えっ!!」とびっくりしたんです。あの声、ロボットボイスのように聞こえませんか? でも小清水さんがそのまま出してる声なんです。
──ええっ、加工した音声ではないのですか?
東山:一切加工してないんです。私もびっくりしました(笑)。小清水さんは、あの声が出るんです。すごいんです。職人技を見ました。声優の我らからしても、「声優さんスゲー!」って思いました。
一同:(笑)
東山:当初は収録した音声を加工する、という予定もあったんじゃないかと思うんです。でも、小清水さんのお芝居があまりにもロボットなので、加工ナシでそのままオンエアされます。「勉強になった」というよりも、それを通り越して感動しました。
もしも東山さんが――高性能ロボットメイドを手に入れたら!?
──マリーには“パーティー優先モード”や“恋人モード”などの機能が搭載されています。東山さん自身には、何モードが搭載されていますか?
東山:そうですね……。やっぱり“仕事モード”じゃないかなぁ?
──ワーカホリックが発揮してますね(笑)。
東山:あはははは! 「行ってきまーす」ってお家を出た瞬間、仕事モードになっていると思います。もちろん自宅でも台本のチェックとか仕事をしますが、やはりどこか“お家モード”のままです。だから最近は家ではないどこかでチェックすることが多いですね。家に帰るとオフっちゃうので、外のいるときのほうが私は元気です。
──仕事モードのほうが元気?。
東山:家にいると前日までの疲れを引きずってぽやぽやしちゃったりするけど、仕事モードの私はアドレナリンが出ているのか、すっごく元気なんです。ちょっとした体調不良は仕事で治せます!
──ちゃんと病院に行ってください!(笑)
東山:あはは、でもお仕事だけじゃなくて人との会話も、どんなに親しい人が相手でも多少は気を張るじゃないですか? 楽しく会話をしていると、アドレナリンが出ちゃいますし。しかも声優のみなさんって、おしゃべりがおもしろい方が多いので、ついつい話し込んじゃうんです。カメラが回ってるわけじゃないのにトークショウとか番組収録なのかなってくらいはしゃいじゃって、気づくと元気になってます。なので、家から一歩でも外に出たら、私に搭載されている“お仕事モード”が発動します!
──もしも東山さんがマリーのような高性能ロボットメイドを手に入れたら、なにをさせたいですか?
東山:私は家事はまったくできなくて……(笑)だから家事やってほしいですね。家のこと全般です!
──家事全般ですか(笑)。
東山:料理と洗濯ができないだけじゃなくて、さらにスケジュールも覚えられないから、マネージャーさんのお手伝いもお願いしたいです。私、たまにスタジオを間違えちゃうんですよね……。
──えええ!? それは大変です。
東山:そうなんです。絶対にダメなんですけど。マネージャーさんから「明日のスタジオはいつもと違います! ◯◯ですから気を付けてください!」と、赤字でメールが送られてくるので、助けられています。他にも電車もよく乗り間違えるし、結構日々ドキドキしながら生きています。
──あれ? 東山さんは東京育ちですよね?(笑)
東山:はい。でもよくわからなくなっちゃいます。苦手な路線は分かっているので、そこを使うときは要注意なんです(笑)。
──最後に放送を楽しみにしている方へメッセージをお願いします。
東山:いままでにも恋愛モノの作品に関わらせいただきましたが、メインヒロインをやらせていただいた作品はそこまで多くなくて。そういった意味合いでも『機械じかけのマリー』で任せていただくものが多かったと感じますし、いろいろなセクションのスタッフさんとお話させていただけたことで、皆さんこの作品に惚れ込んで取り組まれてきたのだということも伝わってきました。私もマリーやアーサーの素敵な恋物語をしっかりお届けできるように、そして作品全体のメリハリを作っていけるように、精いっぱい演じさせていただきました。
本作は視聴者のみなさんの恋心をキュンキュン刺激されるような、とても素敵なお話です。原作ファンの方々にも喜んでいただけるような、ものすごくクオリティーの高い作品だと感じます。アニメーションの美しさ、キラキラしたキャラクター、シリアスとギャグのメリハリなどなど、いくつものこだわりが随所に散りばめられています。
そして音楽もまた、恋もギャグも盛り上げてくれるんです。私はこの作品でダビング作業(音付け)を見学させていただいたのですが、ものすごく刺激を受けました。見学で得た経験も、後のアフレコに還元することができたと思います。
原作ファンの方は当然ですが、ご存じない方も楽しんでいただける作品です。一話から笑顔で見ていただけたら嬉しいです。放送をお楽しみに!
[文&写真・佐藤ポン]