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若手人気落語家!春風亭昇羊さんが語る「まくべつ格別落語まつり」と「落語と私」

SODANE

若手人気落語家!春風亭昇羊さんが語る「まくべつ格別落語まつり」と「落語と私」

「まくべつ格別落語まつり」

幕別を落語の街に!先日2024年9月15日(日)16(月祝)に北海道十勝幕別町で『まくべつ格別落語まつり』が開催されました。子供たち対象の落語教室からスタートしたイベントは、全国の落語自慢が競う「アマチュア蝦夷落語大会」、そして東西落語界の名人が十八番を披露「東西落語名人会」と二日間、幕別を落語の魅力で賑わせてくれました。

きょうのSODANEは『まくべつ格別落語まつり』に出演した若手人気落語家・春風亭昇羊さんにインタビュー。初めての十勝の印象、『まくべつ格別落語まつり』の魅力、そして昇羊さんが抱く落語家としての夢などをじっくり伺いました。『笑点』でお馴染み春風亭昇太師匠との知られざる話も注目です♪

春風亭昇羊(しょうよう)さん

1991年1月17日横浜生まれの33歳。2012年春風亭昇太師匠に6番弟子として入門。2016年二ツ目昇進。好きな食べ物はカレー蕎麦、甘味、さくらんぼ。好きな飲み物は水。作家の町田康さんを敬愛。趣味は読書、古着。

「北海道は何を食べても美味しい」

― 自己紹介をお願いします!

昇羊:春風亭昇羊と申します。2012年に春風亭昇太に入門して、2016年に二つ目に昇進しました。趣味は本が好きで、町田康さんのことを尊敬しているので、町田さんの本を中心に、暗い本が多いのですが色々読んだりしています。

― 昇太師匠とどっちに影響を?

昇羊:同じくらいかも知れないです。

― 北海道は?

昇羊:北海道は前座の頃から師匠について何度も行ったことがあるのですが幕別は初めてだと思います。何度も思うんですけどやっぱり北海道は行くたびに「ご飯が美味しい」っていう。「何を食べても美味しいな」っていうそれが一番ですね。東京は美味しいものを食べようとすると、大変お金もかかりますし。魚も野菜もすごい贅沢になってきていて。北海道は魚も野菜もたくさん食べられて美味しいので、すごい、もう幸せですよね。

(X「春風亭昇羊」から)


― 自然はいかがですか?

昇羊:過ごしやすくて凄くいいなぁと思いました。風も違いますし。季節的に言ったらこないだの公演の時期、東京はもう外で歩くのも大変なぐらい暑くて。ちょっと前は本当に命がけで外に出歩くという。でも北海道に着いた途端にやっぱり外を歩きたくなったんで。生きてられる場所だなって思いました(笑)

「まくべつ格別落語まつり」

子供は素直!「子供落語教室」

― 子供落語教室はどうでしたか?

昇羊:楽しかったです。皆さん積極的で嬉しかったなって思います。子供ってひとくくりに言っても1人1人やっぱりすごい個性があるじゃないですか。それが面白いですよね。

子供落語教室

(X「春風亭昇羊」から)

幽霊をやるにしても座布団の上で膝立ちしたり。声色を変えてやってみたり。周りから見られたらどうなんだろうみたいな意識をとっぱらってみんなやるのが面白いなって思います。

人間味が魅力!「蝦夷落語大会」

― アマチュアの「蝦夷落語大会」は?

昇羊:皆さん、落語家じゃないのに落語を実際に稽古して人前でやって、しかもコンクールにも出るってことは相当好きっていうことじゃないですか。なかなか落語にそこまで熱量高く取り組む人って少ないと思うんですけど、何かそういうところがいいなぁと思ったのと。

終わってからの交流会で本当は喋りたかったんですけど人見知りなんで。僕から積極的に喋れなくて。元の台本や演じ方がこれ柳家喜多八師匠だなと分かる人がいて。この人も喜多八師匠好きなんだろうなって。僕も好きなんで。喜多八師匠について一緒に喋りたいなとか。

あとすごいちゃんと稽古してる人も分かりますから、どういった稽古をしたんだろうなぁとか本当はそういう話を皆さんとしたかったんですけどなかなかできなかったのが残念。もし次機会があったらね、してみたいなと思って。

(東京の証券マン「当利家源内」さんが円ドル為替問題を遠山の金さんが裁く!創作落語「外為裁き」で優勝)

また皆さん、技術がないわけじゃないんですけど。技術的な指導ってのは普段プロからはないと思うんですよ。でもプロからの指導がない分、より「人間味」が出てくるんですよね。プロっていう言い方がわかんないですけど。前座修行をして師匠がいてっていう人はやっぱりどっか技術だったり形を覚えるのですが、アマチュアの方は皆さん自由で、その分人間味がとてもて出てるなっていう。その辺がまた面白かったです。

― 人間味が面白いと!

昇羊:例えば「動物園」やった人、二葉姉さんがめちゃくちゃハマってて、もう「フラ」(持って生まれた愛嬌)がすごいんですよ。

(「動物園」を熱演!十勝の社会人落語家「八尾家朝吉」さん)


そういう個性が皆さんすごい出ているっていうのが面白かったですね。

人間味ってすごく大事なことだと思うので。人間味をもっと伝わるようにやらなくちゃなっていうのは勉強になりました。観ていて楽しかったです。

― 審査は?

昇羊:難しかったと思います。本選は。

「東西落語名人会」

― 名人会は?

昇羊:たくさんのお客さんで楽しかったです。

― 朗々として、同時に貫禄を感じた高座でした

昇羊:「権助提灯」(ごんすけちょうちん)という噺なんですけど。僕が一昨年ぐらいから女性の出てくる話のほうが反応がいいっていうことを自分でやりながら感じて。最初は別に得意とか不得意とか何にも気にしないでいろんな噺をやっていたんですけど、なんか女性が出てくる噺の方が「あれ?反応がいいな」と思って。実際にやっぱり同業者にも「女性がうまい」とか「女性が出てくる噺の方がいいんじゃないか」というところで。自分でも「あぁそうかな」と思って、ネタを選ぶときとかに、女性の出てくるネタを選びがちなんです。なので「権助提灯」っていう噺は最近よくやる話なんですけど。ということで女性の出てくる噺を選びました。

(撮影:武藤奈緒美)

― 女将さんが浮かんできました

昇羊:ありがとうございます。ただ合う合わないも年齢とともにこれから変わっていったりとかすると思うんで。また変化が自分の中であったりすると対応しなくちゃいけないんでしょうけれども。今は僕は江戸っ子の気質がないんですよ。

― 江戸っ子気質がない?

昇羊:なんかこうさっぱりしてないし。江戸っ子ってバーンと悪口ってポンと忘れたりとか。僕全然悪口言わないけど、ずーっと引きずってるとか。なんか女々しい部分もすごいあって。なので江戸っ子、職人とかがちょっと苦手なんですよ。自分の「ニン」(キャラクター)にないんで。

やっぱり落語家ってその自分の「ニン」に合った話っていうのは必ずあると思うんですけど。僕の場合はどうしても女性の出てくる噺にちょっと偏りがちっていう。それは武器でもあると思うんですけど。これから幅を広げていくためにも、男しか出てこない落語とかもちょっとこう、勉強しなくちゃなっていうのは、思ってます。

― 女将役は昇羊さんのニンに合ってる

昇羊:ありがとうございます。


― 「まくべつ格別落語まつり」全体についての感想は?

昇羊:「盛り上げよう」っていう強い気持ちでああいう公演を開催するっていうのはなかなか大変なことだと思うんですけど。実際実現して。運営する側の熱量がすごく高いので。だからやっぱりお客さんもついてきてるんだろうなって思いました。本当に楽しい3日間だったんで。続けていただきたいです。無茶苦茶楽しかったです!

(X「桂かい枝」から)

落語家・春風亭昇羊「落語と私」

― 以前「落語の架け橋になりたい」とインタビューでお話されてましたね

昇羊:僕がそのとき何喋ったかちょっと覚えてないんですけど。架け橋って言葉も僕本当は使ってないはずなんですけど。わかりやすく書いていただいて。そうですね、何かこう入口になるようなわかりやすいことをやっていきたいなっていうのがあって。だから落語もわかりやすく演じ分けますし。なんかちょっとこう小難しい話とかはやっぱり僕はなかなかできない。でもまぁ、そうですね。落語好きな人にも楽しんでもらいたいっていうのももちろんあるんですけど。こういう見た目もあるから、何となくとっつきやすいだろうなっていうのがあって。落語家として。「落語をまず誰のを聞いたらいいのか」ってなったときに、名前が挙がるようになりたいなって思います。一番大変なことなんですけど。やっぱりうちの師匠がそういうところでやってきた人なんで。そうなりたいなと思ってます。

「お笑い番組に救われた」

― 落語の道は素人の古典落語を聴いたのがきっかけだったとか?

昇羊:お笑い番組に救われたみたいなところがあって昔、家庭がすごい重い空気だったんですよ。親同士が喧嘩したりとか、口利かないとか。重苦しい空気のときに、お笑い番組で笑ってる時間がこう、救われる時間だったので。「人を楽しませる」っていうのにすごい興味、憧れがあって。漫才師コント師だったり、あるいは新喜劇だったり舞台の上で何かを演じる劇団員だったり、放送作家だったり。何かそういうことをやりたいっていうのが漠然とあって。

その中で素人の人の落語を観たという、たまたま。そしたらそれが何か自分にこう「自分に合ってるかな」っていう風に思ったんですよ。一人っ子なんで僕。みんなと何かをするっていうのもちょっとできないだろうなっていうのもありましたし。落語家は一人で舞台に出続けることができるっていうのも調べて知って。それで落語のCD聞いたりとか、インタビュー記事調べたりとか。

弟子入りはGoogleが決めた⁉

― なぜ昇太師匠に弟子入りを?

昇羊:そうしているうちにGoogleで「落語 爆笑」で調べたら「春風亭昇太」が一番頭に出てきたんで。それで春風亭昇太っていう人が一番面白いんだろうなっていうことで。Googleが言うんだったら間違いないなと思って。もう志願しました。なので、寄席に通ってるうちに、その師匠の芸に惚れてとか、何かその人が好きでとか、その一門がとか流派がとか、弟子入り志願の理由ってあると思うんですけど。全くないんです。Googleで知ったっていう。師匠の落語も聴かずに入ってるんで。

― (笑)

昇羊:コンプレックスなんです。それは覆せない事実なんで。今からどうこうできるんだったら僕も寄席に通って、「師匠の芸に惚れて」とか言いたいんですけど。師匠の落語を観る機会もあまりないまま、志願しました。

― それで許されたのも才能(笑)

昇羊:だから「この人なら許してくれるだろうな」っていうのがありました。インタビューとかを読んで。何かそこが魅力だなっていう。何かに書いてたんですね。「自由にやってもらいたい」とか。「やりたいことをやって死んでいきたい」とか。なんか、じゃあ僕の事もきっと理解してもらえるだろうなっていうのがあって。

愛想笑いもできない新弟子時代

― 入門後は?

昇羊:入門してから、僕、最初は怒られなかったんです。でもどっかで「こいつは駄目だ怒らなきゃ駄目なやつだ」って判断したみたいで。そこからめちゃくちゃ怒られるようになりました。

― あの穏やかな昇太師匠に怒られた!

昇羊:でもそのおかげで多少はその、人とのコミュニケーションだったり、気遣いだったりっていうのが。必要な世界なんだなっていうのを学んだので(笑)。「高座の上に上がってるだけじゃ駄目なんだなぁ」っていう。


― 人間味が大事だと。

昇羊:言われたわけじゃないですよ。でも「師匠に迷惑かけなければいいだろう」ぐらいに思ってたんですけど。それじゃあ食っていけないっていうのを僕も気付けてなかったんで。人間として、やっぱり最低限できることを、できるようにしなくちゃいけないっていうのを、そこで気づかされました。愛想笑いすらできない人だったんで。

― え~!

昇羊:高校も僕ちゃんと通えてなくて。人と喋るっていうことが本当にその、あまりない環境だったんですよ。一人っ子で家にも兄弟とかもいないですし。だから本当に社会を知らずに入っちゃったんで。なので、この世界で学ぶことはたくさんありました。「よくよく取ってくれたなあ」「よく破門にしないでここまで生かしてくれたなぁ」っていう。本当に感謝しかないです。

(幕別での2ショット! X「春風亭昇羊」から)


― いやぁ…。なるほど…

昇羊:昔はひどかったです本当に。ホントにひどかったです。

― 昇太師匠は「人の何倍努力しろ」とか言う感じじゃないけど努力の人ですよね。努力を見せない!

昇羊:見せないですね~。直接言葉にすることもないんですよ。ただ心の中では「お前ら全然頑張りが足りないぞ」って思ってると思います。

「魂を腐らせない」

―これからのご自身の夢は?

昇羊:はい。なんですかね。なんかこう、魂を腐らせないで頑張っていきたいなっていうふうに思ってます。

―魂を腐らせない!?

昇羊:稽古をしていれば何とかなるはずなんですよ。なので、稽古を怠ることのないように、ずっと稽古を怠らないように。これから何十年と続く落語家人生を努力し続けていくっていうのはきっと大変なことだ思うんですけど、稽古を怠らないように。あの、稽古だけはちょっと僕も苦手なんですけど。怠けないように頑張っていきたいなって思っています。

― 落語という仕事は日常と地続きなのでは?

昇羊:オンオフの切り替えがないので。「ここから稽古だ」みたいな。なんか落語家だけだと思うんですよね。普通ミュージシャンは集まってスタジオで練習とか。お芝居にしろ、お笑いにしろ、稽古の時間がはっきりしてる。でも落語家はそういうのがないので。より怠けやすい…。他にもやりたいことがあるので、落語以外のやりたい仕事をできるようにするためにも落語を頑張りたいです。

気分転換は「読書と古着」

― ちなみに、やりたいことは?

昇羊:本を書いてて。もう書き終わったんですけど。10日間ヨーロッパに行った紀行文を書いたんです。それをDMでいろんな出版社に送ろうと思ってます。書く仕事はやりたいんです。

(X「春風亭昇羊」から)

あとは古着が好きなので。今はなんか古着に携われるような仕事もできたら嬉しいなと思います。

(Instagram「hitujirakugo」から)

テレビに出るとやっぱりお客さんが喜んでくれるので。テレビに出るっていうことで、お客さんに喜んでもらうためにも落語以外の活動もできたらなと思ってます。


― 昇太師匠も「落語家になったらいろんなことができる」から落語家を選んだと著書『楽に生きるのも、楽じゃない』で仰ってましたね!

昇羊:そうですね。師匠は本当にやりたいことが沢山あって、それを全部やってる気がします。

― 幕別の舞台でも「僕の人生は栄光の歴史です」と(笑)

昇羊:そうですね。でも本当そう思います。

― どんな落語家を目指してますか?

昇羊:魂を腐らせないで、熱量を常に持っていたいですね。高座の上に上がったときに、楽しく喋ってお客さんに楽しんでいただけるっていうことを常に続けられるようにしていきたいなと思ってます。

― 古典と新作は?

昇羊:今はもう古典落語ばっかりです。新作落語はそういうことを仕事で作ってやってほしいっていう依頼が来たときぐらいしか作ってないですね今は。

― そうなんですか!

昇羊:はい。新作を考えながら古典の稽古もしながらってことはちょっとできないってことに気づいて。その代わり、本を書きたい、文章で何か表現したいなっていうのがあります。

― どんな古典落語を?

昇羊:その落語の物語を楽しいなって思ってもらいたいです。だから「昇羊さんが面白い」っていうより「噺面白かったね」って思ってもらえるようになりたい。あと自分に嘘をつかないでやっていきたいです。


春風亭昇羊さんの高座や落語に関する情報はX「春風亭昇羊」。趣味の古着はInstagram「hitujirakugo」でご覧いただけます。ほぼ毎日更新中!ぜひっ♪

X「春風亭昇羊」:https://x.com/s_sho_yo_

Instagram「hitsujirakugo」:https://www.instagram.com/hitsujirakugo/ 

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