全ての役職を廃止し、「未来投資型人事制度」を導入 福岡の乗富鉄工所、社員の挑戦を後押し
乗富鉄工所(福岡県柳川市)は10月28日、全役職を廃止し、「未来投資型人事制度」を11月から導入すると発表した。社員が希望する昇給額とともにプレゼンを実施し、経営陣がその内容に基づいて支給額を決定する。
新制度では、社員の「やりたいこと」への挑戦と会社への貢献に着目。従来の「評価」から「投資」へと視点をシフトし、評価の軸を社員の未来に切り替えて、会社が先行投資を行う。この取り組みによって、社員の挑戦意欲向上と組織文化の改革をはかり、フラットな組織体制の構築を目指す。
全役職を廃止、社員の挑戦に対し先行的に支援や昇給を行う
上司が過去の業績や能力を評価して昇給・昇格の判断する、従来の年功序列的な人事制度を刷新した。社員が「この1年間で挑戦したいこと」と「会社にもたらすメリット」を考え、希望昇給額を自ら提案。会社側は提案内容をもとに、先行的に支援や昇給を行う。
年功序列的な給与体系の従来の人事制度では、若手社員の離職が続いていた。社外との協働を転機に新しいプロジェクトが増加し、若手の働きがいが向上した一方で、世代や立場による価値観の違いが顕在化。解決策として制度そのものを見直し、11月から全役職を廃止する。
初回会議は、チームの絆(きずな)や信頼の深さがあらためて可視化される場に
9月に初回の「未来投資会議」を開催し、社員の多様な挑戦意欲が表明された。会議では、全社員が「この1年間でやりたいこと」と「昇給額」を提案。各部署の「サポーター」が代表してプレゼンテーションを行い、経営陣と昇給の妥当性を議論した。
真剣さと笑いが共存した会議では、「営業と職人の二刀流」や「地方で働く女性・若者のロールモデル」など新しい目標が共有され、昇給が低すぎると逆差し戻しを受けるケースなど、前向きな議論が展開。チームの絆や信頼の深さが可視化された場となった。
人事担当者は「新しい人事制度では社員、サポーター、経営層がお互いに腹を割って話し合う機会が増えた」とコメントしている。
趣味に使える「ノリノリ手当」など、ユニークなものづくり環境
同社は1948年創業の水門メーカーで、近年はキャンプ用品の開発も手掛けている。「やりたいを叶(かな)える」をバリューに掲げ、前向きに創意工夫を凝らしながら、楽しみながらつくることを大切にしている。完全な分業制を取らず、それぞれが全工程を把握している職人を「メタルクリエイター」と呼んでいる。
新規事業「ノリノリプロジェクト」では、業界の壁を越えて、外部の企業や専門家とタッグを組み、ユーザーのニーズを意識した商品開発を進めている。フレックス制度のほか、年間2万円まで「飲食、賭け事以外に利用可能」とする「ノリノリ手当」や、漫画・雑誌以外ならジャンル不問で、冊数制限なく会社が書籍を購入する「みんなの本棚」制度など、ユニークな福利厚生を導入している。
「年齢も、勤続年数も問わず、やる気のある人にチャレンジの場が与えられる職場」と明言しており、若手社員からは、改革のスピード感や、社員の意見が柔軟に取り入れられている点も高く評価されている。
発表の詳細は同社公式リリースで確認できる。