【専門家監修】乳幼児期の絵本の読み聞かせの効果とは? 子どもの知能を育む絵本の力
読み聞かせをすることでさまざまな力が養われ、絆が育まれる。そんな絵本のイイお話を専門家に教えてもらいました。
中塚香奈さん
絵本未来創造機構認定のEQ絵本講師。2児のママ。2016年~2019年のインドネシア・ジャカルタで子育てをする中、母国語の重要さを実感。「とにかく母国語の習得は絵本が一番」と考え絵本の読み聞かせに注力。絵本が親子を成長させ、絆を深められることから、家庭での育児法としての広がりを確信しEQ絵本講師の道へ。現在は、1000冊以上の絵本を所有し、EQ絵本講師として、講座やイベント出演などで活躍中。
Instagram ehon.kana
絵本を読むことで養われる子どものIQとEQ
絵本を読み聞かせする効果は主に二つあり、一つはIQ(知能指数)。
例えば語彙(ごい)力や理解力、それから読解力、表現力、記憶力、想像力、集中力などが育まれることです。
もう一つは、EQ(心の知能指数)。相手の気持ちに共感できる力、自分の感情をコントロールできる力、それから自分を鼓舞する力が育つと考えます。
例えば共感力で言うと、絵本にはさまざまな登場人物が出てきます。それぞれの気持ちを感じ取ることで相手への共感力は養われていきます。また、絵本を通して気持ちや感情をたくさん知ることで、自分の感情を客観視して、コントロールできるようになっていきます。
怒りの感情一つとっても、ムカムカなのかプンプンなのか、その度合いはありますが、自分の気持ちがどれに近いのか、そういった感情の機微も感じることができ、それが感情のコントロールにつながっていきます。
絵本によっては、いろんな出来事が起きますが、最終的にはハッピーで終わる、そういったストーリーが子どもたちの記憶の中に刻まれていき、自分を鼓舞する力、「私(ぼく)にもできる!」とポジティブな気持ちを自然に持てるようになります。
絵本の読み聞かせは「習慣づける」ことが大事!それがIQ・EQの土台作りへとつながる
読み聞かせの大切なポイントは「習慣づける」こと。赤ちゃん向けの絵本は短時間で読めるように、ストーリー性があまりないものが多いですが、習慣づけることで、1冊を読み終える「集中力」や展開を繰り返すことでの「記憶力」、次のページで何が起きるのかといった「想像力」の土台が作られていくのです。その土台が、ストーリー性のある絵本を読むようになった時にいき、子どものIQやEQが育っていくと感じています。
読み聞かせは、ママやパパと肌を寄せ合って、ママやパパ声を聞いて、子どもにとってとても安心できる時間です。また、「ママやパパから愛されている。」「自分は大切な存在」と感じられる時間でもあります。特に、お子さんが絵本を持ってきた時、忙しいとつい「待ってね」と言ってしまうのですが、それをグッとこらえて1回手を止めて向き合うことで、子どもは自分のために時間を作ってくれたと感じるのです。
読み聞かせのイベントや音声配信、Youtubeなど、今は読み聞かせの方法もいろいろとありますが、「親子で」というのがとても大事。絵本を介して親子の時間を過ごすことで、嫌なことがあったときも、うれしかったときも自然と話せる、そんな環境を作ることもできます。
仕事に家事に育児にと、日々お忙しいと思いますが、そういう時こそ親子で絵本という時間を意識して、1日5分でもいいので、生活の一部に入れていただけるとうれしいです。そして、何歳になっても読んであげてください。その時間が親子の絆を育んでくれるからです。
絵本の読み聞かせ三つのポイント
Point1 ゆっくり読まない
ゆっくりはっきり読まなくてOK。普通の会話のスピードくらいで読みましょう。
Point2 声色を変えずに普通の声で読む
声色を変えることでキャラクターが固定化されてしまうので、子どもが想像する余白を残す、という意味で声色は変えず普段の声で。
Point3 褒める・認める
絵本を読んだら「うれしかったよ」「幸せだよ」など、気持ちを伝える。
中塚さん、こんな時はどうしたら?ママたちの絵本のお悩み
Q.同じ絵本を持ってくる…他のも読んでほしい
A.私も1週間同じ絵本を読み続けたことがあります(笑)。ただ、自分自身で選んで持ってくるということは、そこにお子さんの意思がしっかりあるので、寄り添って読んであげるのがいいですね。他の本を読んでほしい時は、「ママも一冊どうしても読みたい本があるんだけど、これを読んだ後に読んでもいい?」などと伝えてみるのもいいと思います。
Q.絵本を読んでほしいのですが、そのための環境づくりはありますか?
A.見える所に置く、手の届く所に置く、ことを意識しています。見えない所に置いてしまうと、お子さんが絵本という存在を知らない状態で育ってしまうので、「絵本がある家」ということを意識づける、そういう環境づくりをしてみるのといいと思います。
Q.一人で絵本を読めるようになったら親は介入しない方がいいの?
A.絵本が大好きで集中しているようでしたら、その時間はすごく大切にしてあげましょう。ただ、お子さんが読めるからといって、絵本を持ってきた時に「自分でもう読めるから読みなさい」と言うのは避けてほしいですね。
持ってきたということは読んでほしい何かがあるので、例え成長して年齢が上がったとしても、読み聞かせをしてあげてくださいね。絵本は、いくつになっても心が動いたり、感動したりするので、いつまででも読んであげましょう。
Q.絵本を買ったのになかなか読んでくれない…
A.もしかして、お子さんのレベルに合っていない絵本をお勧めしているのかもしれませんね。お子さんが絵本をあまり好きじゃない場合は、一度対象年齢をグッと下げた赤ちゃんが読む絵本から始めてみるといいと思います。
文章はあまりありませんが、すごく楽しい絵本がたくさんあるので、まずは「絵本って楽しい!」って思ってもらうことが大事。次のステップに進むためにも、年齢は気にせず、これぐらいだったら読めるかな?という絵本から始めてみるのがいいと思います。
Q.たくさんの絵本があって、何をどう選んだら?
A.例えば、「心に響く」とか、こういうことを「知ってほしい」など、そういった視点で選んでみるのも一つです。あとは、普段言葉では言いづらい愛をテーマにしたものをあえて選ぶのもいいと思います。物語を通して、そういった言葉を掛けてあげられるのも絵本の魅力です。大好きなママパパの声を通して、大切にされていることをお子さんが潜在的に感じられるので、お勧めです。
中塚さんお勧め!子どもに・ママに読んでもらいたい3冊の絵本
0~3歳向け
『ずっといっしょ』
文/スムリティ・プラサーダム・ホールズ 絵/アリスン・ブラウン 訳/俵万智 発行/WAVE出版
親から子へ、言葉にできない深い思いを届ける絵本
「うれしい時も、悲しい時も、どんな時でもお母さんはあなたの味方だよ」という親の思いを伝えることができます。何度も読むことで、子どもは愛されている実感、幸福感、安心感などを潜在的にインプットします。
4~6歳向け
『あなたのすてきなところはね』
作/玉置永吉 絵/えがしらみちこ 発行/KADOKAWA
「迷っても、寄り道しても、あなたの向いている方が前よ!」と背中を押してくれる1冊
あなたの存在自体がすてきであり、それは、すごいこと。人は誰でもすてきな所を持っていることを伝えてくれます。四季折々の温かいタッチのイラストに癒されます。
ママに贈る絵本
『今日』
訳者/伊藤比呂美 画家/下田昌克 発行/福音館書店
子育て真っ最中で余裕をなくしているママへあたたかいエールを送ってくれる一冊
「子育ては大変だけど、素晴らしい」そのリアルな日常の思いをまとめた詩です。毎日慌ただしく過ぎてしまい「何もできていない」と自己嫌悪に陥りがちなママ。でも「実は、ちゃんとやるべきことをやっているよ」と、母親としての「今日」を肯定してくれます。