いい状態の化石はどうしたらできるの?
ふらっと こども電話相談室
2024年6月19日放送
TBSラジオで長年親しまれた名物企画「全国こども電話相談室」(1964年~2008年)のコンセプトを受け継いだコーナーです。パンサーの向井慧が「電話のおにいさん」となって、毎回、様々な質問に合わせた頼もしい先生をお呼びしています。今回の質問は・・・
Q. どうするといい状態の化石ができるんですか?(嘉夢一くん 13歳 中学2年生)
(回答した先生)宮田真也さん/城西大学大石化石ギャラリー学芸員
向井おにいさん:宮田先生の服には恐竜のイラストが書かれていますが、恐竜とか化石は昔からお好きなんですか?
宮田先生:そうですね。小学校2年生のときに恐竜のおもちゃを買ってもらったのがきっかけで興味持ち始めて、6年生のときに初めて化石を採取したんですね。そのとき博物館に持っていったら、これはワニの化石かもしれないと博物館先生に教えてもらって、博物館の収蔵庫の中に入らせてもらっていろんな面白い形の化石を見せてもらって、ちょっと洗脳されましてですね(笑)。
向井おにいさん:あははは!
宮田先生:それで今があります。
向井おにいさん:さあ、今日も電話がつながっています。もしもし、こんにちは。
― こんにちは。
向井おにいさん:お名前と年齢を教えてください。
― 春山嘉夢一です。13歳です。
向井おにいさん:嘉夢一くんは今度、ミュージカルに出演するということなんですが、どんな舞台なんでしょうか?
― 「ビリー・エリオット~リトルダンサー~」っていう舞台に出ます。
向井おにいさん:しかも主役で出るんですよね。
― はい。
向井おにいさん:ミュージカルをやりたいっていうのは、いつ頃から思ってたんですか?
― ミュージカルをやりたいっていうより、ビリー・エリオットになりたいっていう気持ちが強かったです。
向井おにいさん:それはいつ頃から?
― バレエを始めた頃なので、小学校1年生ぐらいだったと思います。
向井おにいさん:すごい! じゃあ、夢が叶ったってことですね。
― はい。
向井おにいさん:さあ、嘉夢一くんの聞きたいことはなんでしょうか?
― どうするといい状態の化石ができるんですか?
向井おにいさん:あら、化石の質問なんですね(笑)。なんでこの質問をしようと思ったんですか?
― 最近、ぼくと一緒の名前のカムイサウルスの化石がいい状態で出たって言ってたんですけど、どうしていい状態の化石ができるのかなって思いました。
向井おにいさん:元々、嘉夢一くんは恐竜とか化石には興味があったんですか?
― はい、ものすごく好きです。
向井おにいさん:そうなんだ。それは何かきっかけありますか?
― 小学校低学年の頃に初めて化石掘りの体験に行って、そのときに大きい二枚貝をつけたんです。そこからものすごく好きになっていって。
向井おにいさん:宮田先生と非常にきっかけは近いですね。
宮田先生:近いですね。しかも、私が初めて行ったのは6年生ぐらいのときなので、むしろ嘉夢一くんのほうがちょっと先輩ですよね(笑)。
向井おにいさん:はい。では、宮田先生お願いします。
宮田先生:はい。嘉夢一くんこんにちは。
― こんにちは。
宮田先生:今回、化石について聞いてくれてありがとうございます。非常に嬉しいです。まず、嘉夢一くんが言ったのは、たぶん北海道で見つかったカムイサウルスのことですよね。
― はい、そうです。
宮田先生:いい状態の化石っていうのは、全身が見つかるような化石をイメージされてるかと思います。
― はい。
宮田先生:嘉夢一くんはもう知ってるかと思いますけども、常にいい状態の化石が見つかるとは限らなくて、生き物のご遺体がほかの生き物に食べられて部分的になくなっちゃったり、腐ってバラバラになったり、化石になったあと風化などによってなくなっちゃったり、あとは化石を掘るときに壊れちゃったりすることっていうのが結構多いんですね。
― はい。
宮田先生:全身が残っているような化石は、今、私が持ってきたエイの化石があるんですけども・・・。
― すごい。
宮田先生:画像をお見せできなくて申し訳ないんですけども、うちわみたいになっていて、お父さんやお母さんがよくお酒のつまみで食べるエイヒレの部分が残ってるような、しかもバラバラになってない化石が今、私の手元にあります。
向井おにいさん:ぼくも見てますが、手のひらサイズの大きさで、きれいに、なんかこういうおせんべいありますよね(笑)。魚介類をぎゅーっとプレスしたような。
宮田先生:はい(笑)。
向井おにいさん:本当にきれいにエイの形で・・・。これがいい状態の化石っていうことですね?
宮田先生:はい、いい状態です。こういう化石ができる条件としては、まず生物のご遺体が、酸素がない、もしくは酸素が少ないところ、海底に沈みます。酸素がない、もしくは酸素が少ない場所というのは、ご遺体を分解する生き物が住めないので、バラバラになる速度が非常に遅くなります。そういった中で泥とか砂が溜まっていくと、そこで泥パックされた状態になりますので、ほかの生き物などによる分解から残りやすくなって、きれいな状態になることが多いです。
― すいません。
向井おにいさん:うん?
― あのう、泥パックってなんですか?
向井おにいさん:あははは! そこね(笑)。
宮田先生:あ、泥パック(笑)。お母さんに聞いてみるといいかと思うんですけども、泥パックって、お肌に泥を塗ってつやつやにするっていうのがあるんです。
向井おにいさん:だから、生き物のご遺体のところに土とか泥が覆いかぶさるっていうことですよね。
宮田先生:はい。で、いい化石ができる条件があともう一つあって、地層の中に埋もれるときに洪水とか海底地滑りが起こって一気に土砂の中に埋もれると、その分ほかの生物とかに分解される時間が少なくなりますので、そこでもいい状態の化石ができやすくなります。おそらくカムイサウルスの場合はこれも・・・。
― 海の中に沈められたみたいな?
宮田先生:おっしゃる通りです。元々、カムイサウルスって陸で生きてたんだけども、ご遺体が海に沈んだあと、すぐ泥とか砂に覆われることによって、いい状態の化石が残ったんじゃないかというふうに考えられます。
向井おにいさん:嘉夢一くんいかがでしょうか、わかりましたか?
― はい。
向井おにいさん:うん! 嘉夢一くん、ぜひこれからも化石に興味を持つのもいいですし、今度の舞台「ビリー・エリオット」も頑張ってください。
― はい。
向井おにいさん:「ビリー・エリオット」への意気込みを最後に聞かせていただいてもよろしいですか。
― お客様に希望を与えられるようなビリーになります。
宮田先生:すごいですね! ぼくなんかよりも大人ですね。
向井おにいさん:しっかりされてましたね、嘉夢一くん(笑)。
(回答者プロフィール)宮田真也さん。城西大学水田記念博物館大石化石ギャラリー学芸員。専門は魚類化石の分類学ですが、恐竜、植物、昆虫など、どんな化石も魅力があるという化石の研究者です。