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寝たきりの在宅介護に限界を感じたら施設入居も選択肢に!負担軽減方法と注意点を解説

「みんなの介護」ニュース

藤野 雅一

寝たきりの方の在宅介護は、身体的にも精神的にも家族の負担が非常に大きくなります。介護する中で、「限界かもしれない」と感じたことはありませんか?

介護保険サービスや介護用品を活用したり、周囲に協力を求めることで負担を減らせる場合もありますが、それでも厳しいと感じたら、介護施設への入居を検討することも一つの選択肢です。

今回は、在宅での介護負担を軽減する方法と、施設入居を決める際の注意点についてご説明します。ぜひ参考にしてみてください。

寝たきりとは?要介護度や人数

寝たきりの状態とは、日常生活のほとんどにおいて介助が必要で、ベッドの上で過ごすことが多い状態を指します。明確な定義はありませんが、一般的には要介護4~5の認定を受けている方が該当します。

2025年には、65歳以上の高齢者のうち、認知症の症状が見られる「認知症高齢者の日常生活自立度」がⅡ以上の方が470万人に達すると見込まれています。認知症の方の中には、症状が進行して寝たきりになるケースもあるため、介護者の負担はさらに大きくなることが予想されます。

また、65歳以上の単独世帯と夫婦のみの世帯も増加の一途をたどっており、2035年にはそれぞれ762万世帯、625万世帯に達すると推計されています。

老老介護の問題も深刻化しており、介護者自身の高齢化や健康問題により、在宅での介護が困難になるケースも増えてくるでしょう。

寝たきりが長期化すると、床ずれ、筋肉の萎縮、関節の拘縮、肺炎、便秘、認知症などの合併症を発症するリスクが高まります。これらを総称して「廃用症候群」と呼びます。

東京都健康長寿医療センター研究所の調査では、寝たきりになると1週間で10〜15%も筋力が低下すると報告されており、筋力の低下は日常生活動作(ADL)の低下につながり、自力での体位変換や移乗が困難になります。

また、関節の拘縮が進行すると、座位の保持も難しくなり、車椅子に座ることもできなくなってしまいます。

長期間の臥床は、呼吸機能の低下を招くこともあります。60歳以上の方の死因には肺炎も少なくありません。寝たきりになると、嚥下機能の低下により、唾液や食べ物を誤って気管に入れてしまうことがあります。

誤嚥を繰り返すことで、肺炎を引き起こすリスクが高くなるのです。

在宅で寝たきりの方を介護する際の4つの負担軽減方法

①介護保険サービスを活用する

要介護認定を受けることで、訪問介護、訪問入浴、訪問看護、福祉用具レンタルなどさまざまな在宅サービスが利用可能になります。

入浴の介助は、移乗や体を支える動作が多く、腰への負担が大きいため、家族のみで行うのは大変です。全身の清拭だけでは保清が難しい方も、訪問入浴を利用することで、自宅で入浴することができます。

訪問入浴は、専門のスタッフが入浴車で自宅を訪問し、専用の浴槽を使って入浴の介助を行います。利用者の安全を考慮しながら、快適な入浴を提供してくれるので安心ですね。

訪問看護は、医療依存度の高い方の在宅療養を支えるために欠かせないサービスです。たんの吸引や経管栄養などの医療処置はもちろん、褥瘡の処置や服薬管理、リハビリテーションなども行います。医療面の不安を解消し、家族の介護負担を軽減するためにも、ぜひ活用したいサービスです。

福祉用具のレンタルサービスも、在宅介護を支える重要な柱の一つです。 介護用ベッドは症状に合わせて機能や大きさを選べます。オーバーテーブルを使えば、ベッド上での食事や趣味の時間も快適に過ごせます。

在宅介護を続けるためにも、介護保険サービスを上手に活用し、家族の負担を減らすことが大切だと言えるでしょう。

②介護用品を活用して負担を軽減

体位変換クッションやスライディングシート、吸引器など適切な介護用品を使用することで、移乗や姿勢の保持がしやすくなり、介護者の身体的負担を大幅に減らすことができます。

体位変換は、褥瘡予防や呼吸機能の維持のために欠かせない介助の一つですが、体格の良い方の場合、介護者への負担は小さくありません。

体位変換クッションを使えば、楽な姿勢で体位変換を行うことができます。エアマットレスタイプのものであれば、寝姿勢の微調整も可能です。スライディングシートは、ベッドと車椅子の間の移乗や、ベッド上での水平移動に役立ちます。

吸引器は、たんの吸引を簡単かつ衛生的に行うための医療機器です。吸引カテーテルの先端を鼻や口に入れ、たんを吸引します。

吸引は1日に何度も行わなくてはならないことが多く、電動タイプの吸引器があると、介護者の負担が格段に減ります。

自分でも食事が摂れるよう、高さの調整ができる足がついたテーブルを用意するのもおすすめです。

腰痛は介護職の約7割が経験すると言われており、介護者自身の健康を守る観点からも介護用品の活用は欠かせません。介護する側のことを考えながら、できるだけ負担の少ない介助方法を工夫していくことが大切ですね。

③介護の悩みを相談できる場所を知る

介護者の中にはうつ傾向になってしまう方もいます。特に寝たきりの方の介護は、常に誰かが傍についていなければならず、休む暇もないため、身体的にも精神的にも疲弊してしまいます。

介護に対する不安や怒り、虚しさなどのネガティブな感情を1人で抱え込んでしまうと、介護うつのリスクが高まります。

介護の悩みを吐き出せる場所があるだけで、心は軽くなるものです。

地域包括支援センターでは、介護に関するあらゆる相談に応じてくれます。介護サービスの利用方法や認知症への対応、施設入所の手続きなど、分からないことがあれば遠慮なく相談しましょう。

介護者の会や家族会、みんなの介護コミュニティのようなオンラインの介護コミュニティなども、同じ悩みを抱える仲間と出会える貴重な場です。介護の辛さを分かち合えるほか、先輩介護者からの具体的なアドバイスももらえます。

また、ケアマネージャーは要介護者と家族に最も身近な相談相手です。ケアプランの作成や介護サービスの調整だけでなく、介護者の精神的なサポートも行ってくれる存在です。

介護の疲労が大きくなってきた際に備えて、介護者同士が交流できるサロンに参加したり、気軽に相談できる窓口を見つけておくと安心ですね。

介護者の中には「介護に関して学習や相談ができる場所がほしい」と感じている方も少なくありません。みなさんの地域にも、介護者を支援する様々な取り組みがあるはずです。一歩勇気を出して、外部の力を借りてみてください。

④時には施設での短期入所の利用を

家族の用事や病気、リフレッシュ目的で、短期入所生活介護(ショートステイ)を利用するという方法もあります。

寝たきりの方は、ショートステイを利用しているケースも少なくありません。

特別養護老人ホームや老人保健施設、介護療養型医療施設などで、短期間の入所サービスが受けられます。利用期間は1回につき原則1ヵ月以内ですが、宿泊を伴うサービスであるため、介護者の休養を確保できるでしょう。

ショートステイ中は、施設のスタッフが食事や入浴、排泄の介助を行います。リハビリテーションを実施している施設もあるので、日頃自宅ではできないような機能訓練を受けることができます。

何より、同世代の利用者との交流は、要介護者本人の楽しみにもなるでしょう。

そして、介護者にとっては自分の時間を持てる貴重なタイミングです。趣味の時間を楽しんだり、友人と会ったり、ゆっくり休息を取ることで、心身をリフレッシュできます。

在宅介護をする家族が休息を取れるようにサポートするレスパイトケアは、計画的に利用することで在宅介護を継続しやすくなるでしょう。全国にショートステイ事業所は4万3000ヵ所以上あり、地域密着型や医療対応型などさまざまなタイプがあります。

自治体によっては、ショートステイの利用料を助成している場合もあるので、担当のケアマネージャーに相談してみると良いかもしれません。

施設入居のメリットと検討ポイント

とはいえ、在宅介護が長期化すると、要介護度が上がるにつれて、経済的にも体力的にも介護者の負担は大きくなっていきます。

「できる限り自宅で過ごさせたい」という想いはよくわかりますが、介護サービスを利用しても負担が大きすぎるのであれば、介護施設への入居を前向きに検討することも1つの選択肢です。

介護施設にマイナスイメージを持っている方もいるかもしれませんが、最近は、利用者の生活の質や自立した生活を重視する施設が増えています。

例えば、ユニット型の特別養護老人ホームでは、1ユニット(生活単位)が10人前後の個室や共用スペースで構成されており、家庭的な雰囲気の中で過ごすことができます。

居室は全室個室で、プライバシーも守られます。介護が必要になっても、これまでの生活に近い形で暮らし続けられるよう工夫されているのです。

実際に、特別養護老人ホームの入居者の約7割が要介護4以上です。常に誰かの目が行き届く環境で、適切なケアを受けながら暮らすことができるのは安心材料にもつながります。

介護療養型医療施設であれば、医師や看護師が常駐しており、胃ろうや人工呼吸器などの医療処置にも対応可能です。医療依存度の高い方でも、安心して利用できる施設と言えるでしょう。

介護施設に入居後、家族の介護負担感や抑うつが改善したというデータもあります。 毎日面会に行くことはできなくなるかもしれませんが、利用者と穏やかに過ごす時間は増えるはずです。

介護疲れによって要介護者との関係性が悪化していた場合でも、負担の軽減によって関係性を改善できるかもしれません。

寝たきりの方が入居しやすい主な介護施設は、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護療養型医療施設など。どの施設もサービス内容に特色があり、費用も異なります。

本人の心身の状態や家族の意向、経済的な事情などを総合的に考慮して、最適な施設を選ぶことが大切です。 入居申し込みの際は、施設側の担当者とよく話し合い、施設の雰囲気を肌で感じてから決めるようにしましょう。

事前の体験入居やショートステイの利用は、施設の雰囲気を知るための方法としても有効でもあります。

施設への入居を決めたら、ケアマネージャーと相談しながら計画的に準備を進めましょう。荷物の整理や自宅の片付け、諸手続きなど、やるべきことは山積みです。

特に、入居までの期間が短い場合は、優先順位を付けて効率よく進めていく必要があります。

また、入居後の費用負担についても、事前にしっかりと確認しておきましょう。施設によっては日用品費などの実費負担が発生します。

介護保険制度を利用する場合は、施設サービスの自己負担割合1~3割に加えて、居住費、滞在費、食費、日常生活費などの自己負担があります。

高額介護サービス費の制度を利用することで、自己負担の上限額を超えた分は払い戻しを受けられます。

また、条件はありますが、補足給付や社会福祉法人等による利用者負担軽減制度などの支援制度も用意されているので、担当のケアマネージャーや施設の相談員に相談してみましょう。

寝たきりの在宅介護で限界を感じたら施設入居も前向きに

寝たきりの方の在宅介護は、身体的にも精神的にも家族の負担が非常に大きくなります。

日中だけでなく夜間の介護も必要になるため、介護する家族の睡眠時間が十分に取れないこともあるでしょう。

そして、排泄介助やおむつ交換は、要介護者の羞恥心に配慮しながら何度も行わなければなりません。 外出の機会が減って、社会との接点が失われることで孤立感を感じることもあるでしょう。

さらに、将来への不安から、気持ちがふさぎがちになってしまうこともあります。 1人で長時間介護をしていると、知らず知らずのうちにストレスが蓄積し、イライラしたり怒りっぽくなったりと、感情のコントロールが難しくなることもあります。

介護殺人や心中が後を絶たないのは、家族の孤立と介護疲れが背景にあると言われています。 大切な家族を介護するために、介護者自身の心と体の健康を守ることが何より大切です。

介護の負担は介護保険サービスや介護用品を活用したり、周囲に協力を求めることで減らせる場合もあります。デイサービスやショートステイを定期的に利用することで、家族が息抜きできる時間を作ることも意識してみてください。

それでも限界を感じるようであれば、介護施設への入居もぜひ検討してみてください。 施設に入居させることは、決して悪い選択ではありません。

要介護者にとって、365日24時間体制でケアが受けられ、安心して暮らせる環境を整えることは、立派な介護だと言えるでしょう。 そして、介護者にとっても、自分の生活を取り戻すことができ、心にゆとりが持てるようになります。

介護に関する決定は、要介護者本人と家族全員で話し合うことが大切です。 遠慮せずに本音を言い合い、それぞれの想いを共有することが何より大切だと言えます。

一人で抱え込まず、周りの専門家とよく相談して、要介護者とご家族に合った方法を選択していきましょう。 辛い決断かもしれませんが、新しい介護のカタチを選択することで、家族みんなが穏やかな時間を過ごせるはずです。

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