『NHK大河ドラマ・ガイド 光る君へ 後編』ー 主演・吉高由里子(紫式部/まひろ役)× 大石静(脚本家)対談
2024年放送のNHK大河ドラマ「光る君へ」は、平安時代中期に長編小説『源氏物語』を生み出した紫式部の生涯を、脚本家・大石静さんが描いていきます。
今回は、5月28日に発売した『NHK大河ドラマ・ガイド 光る君へ 後編』より、主演の吉高由里子さんと、脚本家の大石静さんによる対談を一部掲載。吉高さんと大石さんがタッグを組むのは本作で3作品目となり、公私ともに仲のよいお二人。演じる側から、物語を作る側からのそれぞれの思いと、ドラマの見どころなどを語っていただきました。
(※NHK出版公式note「本がひらく」から抜粋)
まひろの表情にゾクッとした
吉高 大石さんとは「光る君へ」の放送が始まってから一緒にお食事する機会がありましたね。
大石 何を話したかはここでは言えない(笑)。でもいっぱい由里子さんを褒めたわよね。
吉高 あはは(笑)。褒め殺しにあってお酒が進みました。
大石 大河ドラマなので、私は内裏(だいり)の権謀術数にページ数を大幅に割きました。でも序盤はまひろと藤原道長(ふじわらのみちなが)のラブストーリーの印象が強く残っています。2人のシーンが少ないのに。それってやはり、由里子さんと柄本佑さん(藤原道長役)にシビレる魅力があったからですよね。
吉高 うれしいです!
大石 月明かりの下で道長と結ばれたあとのまひろの虚(うつ)ろな表情などはゾクッとしました。幸せで悲しい気持ちがよく出ていて。
吉高 ほんとですか⁉
大石 ええ。道長から源倫子(みなもとのともこ)に婿入りすると告げられて絶望したときの表情なども圧巻でした。
吉高 まひろにとって倫子さんは友達という感覚を初めて教えてくれた人。だから道長が彼女を選んだことにショックを受けたと思います。しかも、まひろは道長を諦めたことをその後もずっと後悔していて、父・藤原為時(ためとき)の赴任に従って越前に行く直前に、その想いを道長に伝えるシーンもありました。
大石 あそこは自分が書いたことを忘れるくらい胸キュンしました。「いつの日も、いつの日も」ってミュージカルみたいなセリフ(笑)。10年大人になった道長も魅力的でした。
吉高 私はむしろ、道長への想いを成仏(じょうぶつ)させられたから、妻や妾(しょう)になることを諦められたから、後悔を過去形で伝えることができたのかなと解釈していました。
大石 そうなんだ。役者さんや演出家と解釈が違うことはよくあります。8割方そうかも。
吉高 え〜っ⁉(笑)
大石 それが楽しみなのですよ。みんなで創るものですから、違いを楽しめなければ脚本家はできません。
吉高 一体、大石さんはどんな世界を想像して書いたんだろうと思いつつ、自分の芝居をするうえでは知らなくていい気もします。ただ、0から1を生む作業ってどんなだろう、どんな顔をして書いているのか見てみたいという興味はあります。
大石 不幸な顔をして書いてると思うけど。だってホントに難しいのだもの、この仕事(笑)。
吉高 あはは!
大石 大河ドラマの脚本は制作スタッフや考証の先生方の支えがあってこそ。例えば、まひろと道長が交わす文(ふみ)について「胸がキュンとなる和歌を」とお願いすると、適した和歌や漢詩を探してきてくださるのです。
吉高 お芝居するうえでも和歌や漢詩の意味を分かっていなきゃいけないし、実際に筆で書かなきゃいけない。一生懸命練習したのに数秒しか映らないこともいっぱいありますけど(泣)。
大石 ホントに上手よね、書。よく練習していて頭が下がります。佑さんの書と乗馬、弓の技術も圧巻です。
吉高 内裏周辺で起こる出来事のほとんどはまひろの知らない世界。だから皆さんがどんな芝居をしているのか分からなくて、映像を見るのが楽しみなんです。
大石 キャスティングが絶妙だと思わない? 秋山竜次さんが演じる藤原実資(さねすけ)の存在感など、すばらしいですよ。
吉高 実資がそこにいるだけで笑いが込み上げてきちゃいます。そして、花山(かざん)天皇(花山院)も気になる存在ですよね。
大石 本郷奏多さんは天皇の歩き方をよく考えていて驚きました。藤原忯子(よしこ)が死んだときに廊下を走ろうとするけど、天皇はふだん走らないから上手には走れない。それをやっていました。
吉高 そうか! 視聴者の方々に伝わってほしいことだなぁ。
大石 佑さんや三浦翔平さん(藤原伊周(これちか)役)も歩き方を工夫していると思う。私的には内裏の廊を歩く道長が、断然セクシーです。この本が出る頃は、前半の道長とは歩き方も変わっていると思います。注目してください(笑)。
プロフィール
吉高由里子(よしたか・ゆりこ)
1988年生まれ、東京都出身。2006年、映画「紀子の食卓」でスクリーンデビュー。主な出演作に、ドラマ「美丘-君がいた日々-」「わたし、定時で帰ります。」「知らなくていいコト」「最愛」「星降る夜に」、映画「蛇にピアス」など。NHKでは、連続テレビ小説「花子とアン」、「風よあらしよ」など。大河ドラマは「篤姫」に出演。
大石 静(おおいし・しずか)
東京都生まれ。1986年に脚本家としてデビュー。連続テレビ小説「ふたりっ子」で、97年に第15回向田邦子賞と第5回橋田賞を受賞。執筆作の「知らなくていいコト」「星降る夜に」は吉高由里子がドラマの主演を務める。NHKでは、「セカンドバージン」、連続テレビ小説「オードリー」、大河ドラマ「功名が辻」などを執筆。
『NHK大河ドラマ・ガイド 光る君へ 後編』では、豪華出演者のインタビューや藤原きょうだいの座談会、タイトルバック紹介やあらすじなど、独自企画も満載! ドラマを楽しむなら必携の1冊です。