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「WIG(Women In Gastronomy)~食の世界の女性たちの会~」による「ガストロノミーフォーラム」、10月1日(水)に開催

料理王国

「WIG(Women In Gastronomy)~食の世界の女性たちの会~」による「ガストロノミーフォーラム」、10月1日(水)に開催

「Women In Gastronomy ~食の世界の女性たちの会~」は、創設6周年を記念し、10月1日(水)に「第2回 ガストロノミーフォーラム」を開催した。
当日は、スペインの女性シェフ、ルシア・フレイタス講演「大地の女性たち」、ビュッフェパーティー、5名の日本人女性シェフによる座談会、の3部構成で、食の世界での女性の状況を語り合い、未来へとつなげる場となった。

「Women In Gastronomy ~食の世界の女性たちの会~」、頭文字をとって「WIG」は2019年、スペイン一つ星女性シェフ、ルシア・フレイタスさんが来日して行われた「ガストロノミーフォーラム」を機に、スペイン料理研究家、渡辺万里さんにより創設された。
イベントやワークショップ、オンライン食材販売、マルシェなどの活動を通じて、食の分野で働く女性が出会い、繋がり、未来について語り合うためのプラットフォームを提供している。
その目的は、女性ならではの視点で食を取り巻く環境の持続及び向上を考え、女性の活躍の認知向上と環境整備を図ることだ。
この「WIG」創設6周年を記念して行われたのが、「第2回 ガストロノミーフォーラム」である。
会場となった「エネコ東京」(東京・西麻布)には、80名を超える参加があり、関心の強さがうかがえた。

この日のプログラムは3部構成。
11:00〜:ルシア・フレイタス講演「大地の女性たち」
12:00〜:ビュッフェ・パーティー(WIG 会員料理人・生産者多数協力)
14:00〜:女性シェフ座談会「私の今日、私の明日」 音羽明日香、加藤峰子、木村藍、桑木野恵子、山本結以(50音順) 聞き手:木村真季

ルシア・フレイタス講演「大地の女性たち」

「第2回 ガストロノミーフォーラム」の基調講演がこれである。
スペインで、ミシュラン星の「A Tafona」オーナーシェフであり、ガストロノミーを陰で支える女性の伝統と仕事を守るための取り組み「Amas da Terra(大地の女性たち)」を行う、ルシア・フレイタスさんによる、現地の映像や画像も交えながらの内容となった。

フレイタスさん曰く、「ガストロノミーの世界は、ピラミッドの形をしている。その頂点がミシュランの星レストランだが、女性シェフは非常に少ない。一方で、ピラミッドの土台になる部分には女性が多い。子供を育てながら働き、伝統の食材や食品、料理を伝え支えてきた」。
とかくシェフのエゴが強く出る傾向にあるガストロノミーの世界にあって見過ごされがちな、影の立役者である女性達の仕事にスポットを当て紹介する活動「Amas da Terra」を、4年前に開始したフレイタスさん。
きっかけは、2018年に訪れた三重県・志摩だったと言う。海女の女性達と交流し、彼女達の存在や仕事に感銘を受け、地元のスペイン・ガリシアの女性達の仕事を見つめ直すことになったのだ
「Amas da Terra」では、スペイン・地元の女性生産者を取材し、ソーシャルメディアやPodcastで配信。世界に女性達の仕事を知ってほしい、と願っている。
日本の状況については、「女性達の力や声が小さいのでは」とコメント。「WIG」が縦と横の糸を紡ぐ大きな網になって、「Amas da Terra」とも交流を深め、女性の才能を女性同士で高め合い協力し合えれば、と未来への展望を、熱く語った。

女性シェフ座談会「私の今日、私の明日」

日本の女性シェフ5名による座談会「私の今日、私の明日」では、それぞれの料理の世界での経験や課題り、今後のビジョンなどについて意見が交された。

登壇者は、音羽明日香さん(「オトワレストラン」シェフパティシエ)、加藤峰子さん(東京都・銀座「FARO」シェフパティシエ)、木村藍さん(千葉県「五氣里」料理長)、桑木野恵子さん(新潟県「里山十帖」料理長)、山本結以さん(東京・銀座「エスキス」料理長)、である。

現状としては、ジャンルによっては働きたくてもなかなか門戸が開かれていない現実、料理人ではなく女性料理人と性別がつくこと、女性であることの特別扱い、キャリアとプライベート(家庭、育児)のバランス、キャリアプランにおけるジレンマ、などがトピックとして上がった。
「女性シェフの中に、オーナーシェフ / 実業家として0から1を作る人がまだあまりいない、男性シェフと女性シェフが日本では、同じ土俵にいないと感じる」「日本の女性の在り方は“おしとやか”“しなやか”が是とされ、ビジネスに身を投じる、具体的はお金を作ったり投資を受けたりすることは、はしたないとされがち」「この価値観が変わらない限り、現状打破はなかなか難しい」という発言が印象に残った。

これまでの効率重視、家父長的なピラミッド構造も時代にそぐわなくっている。女性には、人を支え、困った時に最良の選択ができる素質があり、そうした力を活かすことで、現代に合ったしなやかなリーダーシップが可能になる。
「男性社会を否定したり対立したりするのではなく、協力し合って、業界、ひいては社会全体を高め合う時期に差し掛かっているのでは」という意見が出て、全員が大きく頷いた。
課題はありつつも、すでに社会的活動を行っているシェフもいる。未来への希望を感じさせる座談会となった。

講演と座談会の間のランチタイムには、「WIG」会員として活動する料理人や生産者による料理、食品やドリンクの提供で、ビュッフェ・パーティーが行われ、貴重な交流の場となった。

料理王国アカデミーからオフィシャル料理家(料理教室主宰)も参加。食にたずさわる者同士、他の参加者とたくさんの情報を交わしていた。

左から、渡辺万里さん、桑木野恵子さん、木村藍さん、ルシア・フレイタスさん、加藤峰子さん、
山本結衣さん、音羽明日香さん

プロフィール

ルシア・フレイタス
1982年、スペイン・ガリシア州生まれ。サンティアゴ・デ・コンポステーラ「A Tafona」オーナーシェフ。ガリシアの食文化を革新的に表現する同店はミシュラン一つ星、レプソルガイド二つ星評価を得る。「Amas da Terra(大地の女性たち)」の活動では、ガストロノミーを陰で支える女性たちの伝統と仕事を守る取り組みを行い、無名の女性生産者たちの代弁者として世界に評価されている。

渡辺万里
大学時代にスペインに関心を持ち、1975年よりスペインで食文化の研究に取り組む。1989年「スペイン料理文化アカデミー」開設。2017年、食の力で地方を応援することを目的に「軽井沢ガストロノミープロジェクト」を創設。2019年、ルシア・フレイタスさんの講演に触発されて「WIG」設立。日本各地の食に関わる女性たちとつながり、彼女たちに新たな活躍の場を生み出すことを目標に、活動を展開。

座談会・登壇者紹介(50音順)

音羽明日香
栃木県「オトワレストラン」シェフパティシエ

栃木県宇都宮市出身。建築を学んだのち料理の道へ進み、「ラトリエ・ド・ジョエル・ロブション」などで修業。2007年より「オトワレストラン」に参加し、デセールを担当。二児の母としての視点や豊かな感性を生かし、コラボレーションや食育活動にも積極的に取り組んでいる。

加藤峰子
東京都・銀座「FARO」シェフパティシエ

ミラノを皮切りに、「オステリア・フランチェスカーナ」「エノテカ・ピンキオーリ」など名店で経験を積む。2018年に帰国し、「FARO」のシェフ・パティシエに就任。2022年、ゴ・エ・ミヨのベストパティシエ賞を、2024年、アジアのベスト・ペイストリー・シェフ賞を受賞。

木村 藍
千葉県「五氣里」料理長

「ランス・ヤナギダテ」「ラール・エ・ラ・マニエール」などで修業し、2012年「シュヴァル・ドゥ・ヒョータン」を開業。2022年いすみ大使に就任。2023年「料理マスターズ」ブロンズ賞受賞。2024年より「五氣里」シェフとして、地元いすみ市の魅力を伝える料理を提供。

桑木野恵子
新潟県「里山十帖」料理長

オーストラリア、インドなど世界各地を巡り、アーユルヴェーダの哲学、ハーブ、スパイスを学ぶ。“ローカルガストロノミー”を料理に表現し、2020年「ミシュランガイド新潟 2020 特別版」で一つ星評価、2023年「We’re smart green guide」にて世界13位、Best Lady Vegetable chefs 受賞。

山本結衣
東京都・銀座「エスキス」料理長

ブルゴーニュの三ツ星「メゾン・ラムロワーズ」、サヴォワ地方の一ツ星「アジムット」で研修。2016年から東京・蔵前「ナベノイズム」勤務を経て、2021年「エスキス」へ。2023年、「RED U-35」にて「RED EGG」「岸朝子賞」受賞。2024年、「エスキス」シェフ・ド・キュイジーヌに就任。

Women In Gastronomy
https://wig-japan.com/

Text:羽根則子, Photo:川上尚見

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