ジュビロ磐田が目指すは勝ち点3のみ。横浜F・マリノス戦で勝負の鍵になるもの
【サッカージャーナリスト・河治良幸】
ジュビロ磐田は11月16日、ヤマハスタジアムに横浜F・マリノスを迎える。8月31日に行われるはずだった試合だが、台風の影響でこの時期に延期となった。それが最終盤でのホーム3連戦という、磐田にとっては有難い日程になったが、少しでも良い状態で戦うという意味ではマリノスも同じかもしれない。
磐田はホーム3連戦の1試合目でもあったガンバ大阪に3−4で破れてしまったが、16日にJ1で唯一行われるマリノス戦に勝利すれば、まだ降格の可能性を残す16位のアルビレックス新潟と18位の柏レイソルに肉薄できる。
山田「勝ち点1を取りにいくことは頭になかった」
ガンバ戦を簡単に振り返ると、磐田は渡邉りょうのゴールで先制しながら、課題のセットプレーと前半終わりの失点で逆転を許すと、後半の早い時間帯にリカルド・グラッサのハンドで、PKによる3点目を奪われた。
堅守を誇るガンバを相手に、ジョルディ・クルークスの活躍と選手交代も実る形で終盤に2点を奪って追い付いたが、さらに逆転を狙った裏返しで、ガンバにセカンドボールからディフェンスを破られて失点。激闘の末に、勝ち点1も取れずに終わってしまった。
途中出場で流れを変えたキャプテンの山田大記が「結果としてそれが正しかったか僕は分からない」と前置きしながらも「そのままリスクをかけて勝ち点3というのがあって…。あそこで1を取りにいくというのはちょっと頭の中には無かった」と強調するように、チームとしてのベクトルが前に向いていた結果であるようだ。
GK川島永嗣もチームが前がかりになったことに疑問はなく、そうした中で後ろが止められなかった結果について「自分も含めてそこは不利な状況でも、守り切らなければいけない」と語った。
結果論で“タラレバ”を言っても仕方がない。この試合での選手たちの戦いぶりこそ、残り3試合での逆転残留に向けた希望でもある。
磐田のボランチはどうなる?
マリノスはACLなどの影響で、ほぼシーズン通して過密日程で戦っており、すでに60試合近くをこなしてきている。マリノスにとって鳥栖戦から中6日の磐田戦は実に1ヶ月半ぶりとなる、過密日程ではない試合となる。
鳥栖戦でイエローカードを受けたDF渡邊泰基は出場停止となるが、怪我で離脱中のキャプテン喜田拓也や松原健を除く、ほぼベストメンバーでヤマハに乗り込んでくるはず。20得点のアンデルソン・ロペスにヤン・マテウス、エウベルの両翼を加えた3トップもスタメンと予想される。
磐田はガンバ戦のポゼッションが41パーセントだったが、マリノスにはさらにボールを握られる可能性がある。磐田としては5試合前のサンフレッチェ広島戦から続いている3−4−2−1のシステムで、守備は5バックを固める形をマリノスにもぶつける場合、3トップに加えて2列目から植中朝日などが飛び込んでくる相手を止め切るにはボランチの役割も重要になる。レオ・ゴメスが軸になることは間違いないが、前回ベンチから外れた中村駿が復帰してくるかは気になるところだ。
3バックの起用法は…
もう1つの注目が、3バックの起用法だ。ガンバ戦でハッサン・ヒルが負傷交代。途中出場でゴールを決めた鈴木海音が出場停止となっており、もしハッサンの回復が間に合わなければ、スペシャリストが伊藤槙人とリカルド・グラッサだけとなる。
西久保駿介というチョイスもあるが、90分の安定が求められるポジションである上に、控えにセンターバックが誰もいなくなるリスクがあり、5バックにこだわらず4バックで戦うケースもあるかもしれない。継続性を重視するか、起用できるメンバーでの適性を重視するか、横内監督の決断が注目される。
ペイショットのバースデーゴールに期待
攻撃面で頼りになるのはエースのFWジャーメイン良だが、11月16日に29歳の誕生日を迎えるマテウス・ペイショットにも期待したい。ここのところ8試合続けて後半の途中から出ているが、これまで18試合でスタメン起用されており、これまでの6得点は全てスタメン出場の試合で記録している。
守備範囲がジャーメインや渡邉りょうより狭くなりやすいなど、戦術的な理由もあると考えられるが、5月3日のアウエーゲームでマリノスから得点した相性の良さも買って、長い時間チャンスを与えるのも有効と考えられる。
鍵握るクルークス
もう一人、注目したいのがやはり前節のガンバ戦で、3得点に絡んだクルークスだ。セレッソ大阪でも同僚で、初めて2シャドーのコンビを組んだ渡邉は「このタイミングで彼を引き出せたのは残留のきっかけになると思う。ただ、そこに対してどれだけ多くの選手がそれを信じて飛び込んでいけるか」と語る。渡邉やジャーメイン、ペイショットらのゴールチャンスをもたらすボールを供給できるか。
ガンバ戦では、クルークスが得意の左足だけでなく、縦に仕掛けて右足のクロスでも相手ディフェンスの脅威になっていたのは、それまでの数試合との大きな違いだ。マリノス戦でも左右の使い分けが鍵になる。
左足のミドルシュートもマリノス側には嫌な武器だろう。実はアビスパ福岡に所属していた2022年、クルークスはマリノス相手に決勝ゴールを決めている。永戸勝也とのマッチアップが想定されるマリノス相手に、クルークスが躍動できれば磐田の勝機は格段に上がるはずだ。
スタンドも後押しできるか
数字的に見れば、残り3試合を全て勝たなくても、新潟と柏の結果次第で残留の可能性はある。しかし、このマリノス戦はそうしたライバルに肉薄し、プレッシャーをかける意味でも何としても勝ち点3がほしい試合となる。
スタメンはもちろん、ベンチメンバーの働きも重要になるが、何よりサポーターがゴール裏だけでなく、メーンやバックも含めて、ヤマハを完全ホームにできるかどうか。静岡メディアの視点としては、ガンバ戦の1−3になってから、2点差を追いつくまでのような雰囲気をスタートから作っていくことを期待したい。