タンポポ博士と生徒たちの楽しい課外授業【秋田県大仙市】
先月5月30日に、秋田県大仙市にある協和小学校にて行われた特別授業の風景を取材した。この特別授業では地元の合同会社「よしかタンポポプランニング」の代表である今野孝一さんが、「タンポポ博士」として小学2年生の児童らを相手にタンポポを通じた地域の環境の大切さを教えた。
よしかタンポポプランニングは外来種「セイヨウタンポポ」の増加や都市化に伴う生育地の変化によって減少している在来種「日本タンポポ」の栽培をしており、それを加工したブランド品「タンポポコーヒー」を販売している。子どもたち全員がタンポポや自然環境について興味津々で授業に取り組んでおり、積極的にタンポポ博士に質問したり意見を話したりしていた。
「たんぽぽのちえ」から学ぶ
さて読者の方々は「たんぽぽのちえ」をご存じだろうか?子どもの頃に誰もが学んだであろう懐かしの教材である。1971年から小学2年生の教科書に採録されているこの教材で筆者も学んだ事があり、タンポポの詳しい生態を知る事ができた。今回の授業では教材と連動して今野さんがタンポポの発育をわかりやすく教えた。タンポポは、たくさんの種一つ一つを風に乗せて遠くの地にたどり着き、そこでまた株になって花を咲かせる生命力のつよい植物である。
だがタンポポには様々な天敵がいる。例えばアリである。アリは虫のなかでも特に甘いものが好きであり、タンポポの根っこは非常に甘く、アリたちが根を食べてしまうのだ。もう一つがカタツムリやナメクジである。彼らもまた植物の葉を食べており、タンポポの葉っぱもきれいに食べてしまうそうだ。しかしタンポポもやられっぱなしではない。生き残るために忍者やカメレオンのように色を変えて周囲の植物と同化するのだ。植物の葉や茎の色が変化する現象にはアントシアニンが関わっており、特にタンポポからはアントシアニンが単離され、これが周囲の敵から身を守るすべとなっているのだ。
さらにタンポポは自ら肥料を作り、生き永らえる事ができる。新しい葉っぱが内側から生え、古い葉っぱが地面に落ちるとそれが肥料になって自身の栄養となり何年も生きていく事ができる植物なのである。
授業の合間合間にはなぞなぞを用意しており、例えば「世界で一番早い虫は何?(答えはハエ)」や「世界で一番おいしい果物は?(答えは梅)」というように子どもたちを飽きさせないように楽しませていた。またタンポポと食物連鎖と絡めて教えており、「草→虫→カエル→ヘビ→鳥→イタチ→土→草」と一つの輪で構成され、少しでもそのループが止まってしまうと自然界のバランスが崩れ、タンポポの生育にも悪影響を与えてしまうことを伝えていた。今野さんいわく、「良い土にはミミズがいる」のだ。つまり生物一匹一匹の存在が美しい自然環境を維持していく上での指標となっており、日本タンポポが生育している土地は、空気も水もきれいな土地だという事を証明してくれる存在である。
次の世代に残そう豊かな自然と日本タンポポ
冒頭でも述べたようにここ数十年で在来種の日本タンポポが激減し、大半が外来種に置き換わっている。日本タンポポ激減の理由は、両者の性質の違いにある。
在来種・・・春に花を咲かせ他の株の花粉で受粉をして種子を結ぶ。種子は、秋と春に発芽する。
外来種・・・厳寒期以外は年中花を咲かせ、自分自身だけで種子を結ぶ事ができ、一定以上の温度があれば発芽する。
セイヨウタンポポが勢力を広げているのは日本タンポポのように仲間を必要としないで種子を作り、時季に関係なく種子を作り、発芽できる性質によるものである。ちなみにセイヨウタンポポは都市化により造成された土地に分布しており、逆に日本タンポポは里山のような昔ながらの土地に分布している。
日本タンポポが激減したのは外来種が一因であるが、我々人間が日本各地の里山を開発し、都市化を推し進めていった結果、彼らの安住の地が奪われたのが最大の原因である。だからこそ、よしかプランニングでは新たに日本タンポポの畑を作り、種の存続や自然環境の維持、そして地域の活性化につながるように努力しているのである。
子どもたちにもタンポポを通じて地元の豊かな自然環境に興味関心を持ってもらい、一人でも多くの子どもたちがタンポポ博士の「後継者」となる事を願っている。
情報
よしかタンポポプランニング
住所:秋田県大仙市協和峰吉川字高見47
TEL:018-838-7575
FAX:018-838-7576
タンポポ博士のショップ(よしかタンポポプランニングの公式ホームページ):
URL:https://yoshika-tanpopo-pl.com/
大仙市立協和小学校
住所:秋田県大仙市協和境字岸館37
TEL:018-881-6868
FAX:018-892-6868