またしてもローソン限定神ハイボール登場! 「三郎丸蒸留所のスパニッシュオーク」 はノーマル越えもあるガチクオリティ!!
ハイボール界でローソンの快進撃が止まらない! 2025年10月21日から、ローソン限定で登場した「三郎丸蒸留所のスモーキーハイボール スパニッシュオークフィニッシュ」がガチだ!!
ノーマルの黒い缶も傑作ハイボール缶だと思うが、今回の新作は、今の季節限定でノーマル越えを果たしていると私は確信した! これは、いいぞ!! 今コンビニでハイボール缶を買うなら、これ一択。
・スパニッシュオーク
さっそく近所のローソンへ。ノーマルは361円だが、スパニッシュオークは462円。100円も上がってるぞ。これは評価もシビアにならざるを得ない。やれんのか?
ウィスキー界隈でスパニッシュオークというと、それはシェリー酒の保管に使われた樽、いわゆるシェリー樽を示す場合が少なくない。
どういうことか? それを理解するために、スパニッシュオークの話をしよう。まず、日本語のスパニッシュオークと、英語のSpanish Oakは指すものが異なる。
日本語のスパニッシュオーク樽とは、木材としては広義のホワイトオーク、特にアルバオークである場合と、ヨーロッパナラである場合、時にはピレネーオークな場合などがあり、消費者が特定するのは困難だ。
例えばマッカラン。シェリー樽で仕上げたウィスキーとして、最も評価の高いものの1つだろう。親会社であるサントリーのHPでは“スパニッシュオーク樽で”と記されている。
これに対し、マッカラン公式ではEuropean Oak、つまりヨーロッパナラだと明記している。マッカランにおけるスパニッシュオーク樽とは、すなわちヨーロッパナラ製の樽となる。
なぜ種としては色々なのに、一律でスパニッシュオーク……つまりスペインのオークと地域限定な呼称なのか? そこにシェリー酒の歴史が絡んでくる。シェリー酒は、ご存じの通りスペイン産のワインの一種だ。
スペインで作られたシェリー酒は、世界中に出荷される。現代ではスペインの法で樽での輸出が禁止されたが、昔はアメリカから運んだ(現在のアメリカのほとんどのエリアは、かつてスペインの植民地だった)上質なホワイトオーク材で作った樽でシェリー酒を熟成させていた。
シェリー酒の熟成行程において、空の樽は発生しない。詳しくはソレラシステムでググってくれ。継ぎ足していくという奴だ。
そういうわけで、完成したシェリー酒を輸出するには、輸送用の樽が必要になる。そこで目を付けたのが、安価な地元のオークで作った樽だった。
昔のスペインで手軽に手に入る樽となれば、ヨーロッパ全域に生えているヨーロッパナラか、特にスペインを中心に生えているピレネーオークで作ったものになる。
こうして何らかの木材で作った樽で届いたシェリー酒は、消費国でボトリングされた。あとにはシェリー酒が染みこんだ樽が残る。
これをウィスキーの熟成に使用すると、シェリー酒由来の深みある甘い香りと味がもたらされ、特徴ある味わいになり、その手のウィスキーには “シェリーカスク” とか書かれて売られている。
そういう背景があり、ウィスキー界ではシェリー樽 = スペイン産の何らかのオーク材(だいたいヨーロッパナラか、ピレネーオーク等のその他スペインに自生するオーク)の樽だったという歴史から、スパニッシュオーク樽にシェリー樽のイメージが付随するのだ。
一方で英語のSpanish Oakは、日本語だとサザンレッドオーク(Quercus falcata)か、ピレネーオーク(Quercus pyrenaica)を指すことが多い。前者はアメリカに生えており、名前の由来はアメリカがかつてスペインの植民地だったことに関連がある。後者は先述の通り本当にスペインを中心に分布するから。
せっかくなのでアメリカンオーク樽や、ワイン界隈でよく出てくるフレンチオーク樽についても触れておこう。
アメリカンオーク樽は、基本的に広義のホワイトオーク製である。樽の産地であるアメリカ東部でコモンなアルバオーク(Quercus alba)の場合が多いが、時にはカリフォルニアからシアトルでコモンなオレゴンホワイトオーク(Quercus garryana)だったりとか、樽の製造場所とか木材の流通事情次第で入手しやすい種であることも珍しくない。
フレンチオーク樽はヨーロッパ全域でコモンなフユナラである場合がある。しかしヨーロッパナラで作られた樽もフレンチオーク樽と呼ばれるため、スパニッシュオーク樽とフレンチオーク樽の木材は、時に同じである。
つまり日本語においては、アメリカンオーク樽とスパニッシュオーク樽はどちらもホワイトオークである場合があり、スパニッシュオーク樽とフレンチオーク樽はどちらもヨーロッパナラである場合があるということ。
そしてウィスキー界隈であえてスパニッシュオーク樽と言った場合は、その歴史から、シェリー樽であるという意味を含むことが珍しくないということだ。もうめんどくせぇな。
話をウィスキーに戻し、さらにめんどくさい話をしよう。ウィスキー界隈におけるスパニッシュオーク樽とシェリー樽の関係についてはお分かりいただけたと思うが、実は、スパニッシュオーク樽は常にシェリー樽であるとは限らないのだ。
シェリー樽である場合もあるし、1度もシェリー酒の貯蔵に使われていないヨーロッパナラ製の樽を使用しただけな場合も存在する。
そして現代はシェリー酒の樽での輸出が禁止されているため、ウィスキー用のシェリー樽は、シェリー樽製造のためにわざわざシェリー酒を貯蔵して作った樽が使われている。
もはやスペインは関係なく、ただ呼称にスパニッシュオークと残っているのみ。はたしてメーカー各社が用いている “スパニッシュオーク樽” が、どこの何の種のオークを使用したものなのかは、メーカーのみぞ知るところ。マッカランみたいに公表している所ばかりではない。
・うめぇ
樽の話でもう3千文字近くを費やしており、費やした労力的には余裕でライター業的に赤字だが、ここからが本番だ。レビューに入ろうじゃないか。外観はトップの通り。ノーマルは黒だったが、今回は赤い。あずき色みたいな。嬉しい9%。
成分はモルト、グレーン、炭酸という正しいあり方。
開けると……なるほど。噴きだすガスでわかるナラ材スメル。スパニッシュオーク樽をアピールするだけはある。スモーキー感は弱まっており、そこはノーマルの方が上だと思う。
色はこんな感じ。炭酸はふつうな感じ。
ここで隣に控えていたノーマルの黒いやつにも登場いただこう。左がノーマルで、右がスパニッシュオークだ。色の違いは圧倒的。
おや、グラスに入れたら香りが一気に花開いたぞ! 上品で優しい甘い香りがする。チョコレート? いやベリー系だろうか。そして加速する木材フレーバー。これはいいなぁ。
グラスから飲むと、やさしい甘み。ガチなシェリー樽ほどじゃあない。だがそこがいい。甘いながらもキレがある。
香りでは控え目だったスモーキー感だが、風味ではちゃんとスモーキー! 甘くもドライなスモーキー感が、厚みとキレの良さの両立に貢献している。
スパニッシュオーク樽には色々あるという話をしたが、こいつはシェリー樽にされたスパニッシュオーク樽ではないと思う。シェリーだったらもっとがっつり甘さが前に出てくると思うのだ。
しかし、ピュアなスパニッシュオーク樽にありがちな、タンニン由来のストロングな風味が無い。だいぶ使い込まれた樽を使ったのか、それとも追熟期間が短めなのか。あるいは色々なものをブレンドしたのか。
詳細は不明だが、何らかの工夫を感じる。最後にわずかにピリッと来るスパイシーさをもっており、そこはピュアなスパニッシュオークっぽい。
まあ細かい話はいいよ。端的に言うと、こいつはバチバチに美味い。ノーマルもだいぶ美味いほうだが、私はスパニッシュオークの方が明確に美味さで勝っていると思う。
まず空気を吸い込み、こいつを口いっぱいに含む。そこでしばし味を堪能したのち、鼻から空気を出す。そこで感じられる三郎丸お得意の乾いたスモーキー感と、スパニッシュオーク由来の稀薄な甘さと心地よい木、そして土っぽい香り。
たまらねぇ。これは秋のハイボールだ。1年で最も過ごしやすい、紅葉に輝く秋の雑木林を感じさせる。程よく温かい日差し、涼しい風、そこに混じる枯れ葉の香りが似合う。
狙ったのか偶然かはわからない。しかし今の季節がウマさを加速させている。湖畔の森で日光浴しながら飲みてぇ。キャンプに持って行くのだ。海じゃねぇ。山が、淡水が似合う。
埼玉県民の私は、この間、長瀞という奥地までいってニジマスを釣って塩焼きで食ったのだ。あのニジマスと、こいつはよく合う気がする。
缶とグラスの、どちらでいくのがいいだろう。風味的には、缶の方が色々と強まって好ましく感じた。しかし、この香りの開き方は美しく、そちらも、ぜひ味わってほしい。
ゴリゴリに冷やして、まずはグラスに1口分くらいを注ぎ、手で温めつつ香りを。そいつを飲み干してから、缶かなぁ。グラスで飲む時に氷は不要だと思う。弱まった味が、溶ける氷でさらに弱まると思うので。
参考リンク:ローソン
執筆:江川資具
Photo:RocketNews24.