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柿澤勇人「とにかく命懸けで舞台に立ちます」~吉田鋼太郎演出・上演台本、彩の国シェイクスピア・シリーズ2nd Vol.1『ハムレット』が開幕

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(左から)吉田鋼太郎、柿澤勇人

2024年5月7日(火)彩の国さいたま芸術劇場 大ホールにて、彩の国シェイクスピア・シリーズ2nd Vol.1『ハムレット』が開幕し、舞台写真&コメントが届いたので紹介する。

吉田鋼太郎演出・上演台本、柿澤勇人主演による舞台、彩の国シェイクスピア・シリーズ2nd Vol.1『ハムレット』が最終舞台稽古を終え、5月7日(火)、彩の国さいたま芸術劇場で初日を迎えた。

前芸術監督・蜷川幸雄から同シリーズの2代目芸術監督を引き継ぎ、シェイクスピア全37戯曲の完全上演を成し遂げた吉田鋼太郎が、“第二章”の幕開きに満を持して選んだのが『ハムレット』だ。誰もが知る王道中の王道と言える傑作をトップバッターに据えたことに、覚悟の程が窺える。吉田自身も主演経験を持ち、シェイクスピア作品の中でも「ずば抜けて面白い」と明言するだけに、戯曲に対する思い入れはひとしおだ。極限まで装飾を排した潔いまでにシンプルな舞台空間の中で、俳優が戯曲の言葉と真っ向から対峙する舞台となっている。

手前:吉田鋼太郎、奥:柿澤勇人

タイトルロールを担うのは、ミュージカルでもストレートプレイでも人物の真情が鮮やかに伝わる柿澤勇人。劇中で「ことば、ことば、ことば」と語るように、膨大な台詞を操るハムレットはまさに言葉が命と言える役だ。柿澤は明晰な台詞術という武器だけに頼らず、本来快活だったはずのハムレットが怒涛のごとく運命に呑み込まれ歯車が狂っていく様を、高い熱量と緩急自在な語り口で一言一言粒立てるように表現していく。一本気で、激情に駆られやすく、復讐を誓ったのに逡巡し、恋人を心ならずも拒絶し、母への愛憎に揺れる一方で、親友や役者には惜しみない信頼と友愛を示す。不完全で不器用な、人間くさいハムレットが愛おしくも痛ましい。

柿澤勇人

(左から)白洲 迅、柿澤勇人

演出の吉田は過去何度も演じている国王クローディアスとしてハムレットの前に立ちはだかる。情欲と権力欲に取り憑かれた男の狡猾さ、器の小ささはもはや自家薬籠中のもので、甘言と手練手管でガートルードを籠絡することなど朝飯前だったに違いない。その国王と一蓮托生である正名僕蔵演じる宰相ポローニアスの狂気じみた忠臣ぶりには、空恐ろしさを感じるほどだ。息子の憂いをよそに女としての幸せに無邪気に身を任せた高橋ひとみ扮するガートルードの艶と罪深さは、ハムレットが辿る悲劇の根本要因であることがよくわかる。

吉田鋼太郎

手前左:渡部豪太、手前右:柿澤勇人、中央奥左:吉田鋼太郎、中央奥右:高橋ひとみ

そんな国王一家の言わば家庭内のいざこざの巻き添えとなり、ハムレットに突き放され、夢見た幸せを打ち砕かれる北 香那のオフィーリアは、自分の意思もしっかり持った“溌剌としたお嬢さん”が壊れゆく姿に胸を抉られる。正気を失ったオフィーリアが意味深長な花言葉と共に色とりどりの花々を配る場面はよく知られているが、今回はとある花がオフィーリアの象徴として登場し、色彩を抑えた舞台上で忘れられない印象を残す。

(左から)北 香那、柿澤勇人

(左から)松尾竜兵、柿澤勇人、山本直寛

(左から)豊田裕大、柿澤勇人、原 慎一郎、斉藤莉生、いいむろなおき、櫻井章喜

徒手空拳で闘い、敗れ、ようやく永遠の眠りについたハムレットを悼むと同時に、師・蜷川幸雄に対するオマージュも感じさせる幕切れは、深い余韻と共に不思議な温かさに満ちている。やさしい王子様、どうか安らかに。

埼玉公演は2024年5月26日(日)まで彩の国さいたま芸術劇場 大ホールにて上演、その後、6月1日(土)~2日(日)宮城・仙台銀行ホール イズミティ21 大ホール、6月8日(土)~9日(日)愛知・愛知県芸術劇場 大ホール、6月15日(土)~16日(日)福岡・J:COM北九州芸術劇場 大ホール、6月20日(木)~23日(日)大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティにて上演。上演時間は本編3時間30分(休憩15分含む)予定。

初日開幕前 演出家・キャスト コメント

■柿澤勇人(ハムレット)

柿澤勇人

ついに『ハムレット』初日です。幕があきます。本当に本当に手強い作品です。こんなに過酷な役、そしてこんなに濃密な稽古は人生で初めてでした。とにかく命懸けで舞台に立ちます。目に焼き付けに来てください。

■北 香那(オフィーリア)

北 香那

稽古を重ねれば重ねるほど、出演者全員の魂がぶつかり合う力強い舞台になっています。
セットもシンプル、とても貴重な作品だと感じています。それが成立しているのも鋼太郎さんのおかげです。そして柿澤さんの背中を見て、ここまで走ってこれました。お二人には本当に感謝しています。
積み上げてきたものを少しも溢すことなく皆さんにお伝えできるように、はじけて挑んでいきたいです。

■白洲 迅(ホレーシオ)

白洲 迅

人生で一番熱い5、6月になると思います。
鋼太郎さんの熱が伝染して、本当に凄まじい熱量の作品になっています。
なのでご覧になっていただける皆さんも、きっと見てて疲れると思います。
それくらい、見ているだけでもエネルギーのいる作品なので、
是非皆さんも、前の日はしっかり寝て、よく食べて、劇場にいらしてください。
僕も全身全霊をかけてホレーシオとして、生きていきたいと思います。

■渡部豪太(レアティーズ)

渡部豪太

読み物としてのハムレットではなく、演劇として立ち上げた時にしか見えない、戯曲に練り込まれた「役同士の繋がり」やそれぞれが内に秘めた「想い」を感じる事ができました。演劇が引き出す人間の可能性!
鋼太郎さんのキレのある演出で、我らが柿澤ハムレットが遂に爆発します!

■豊田裕大(フォーティンブラス/廷臣/役者)

豊田裕大

舞台、シェイクスピア、戯曲、初めての挑戦に迷いながらもこの1か月半を走り続けてきました。鋼太郎さんのシェイクスピア、そしてハムレットへの愛をひしひしと感じながら、全員で一致団結して進んできました。
自分が演じるフォーティンブラスを良いものにするために邁進し、きっとこの本番を迎えてからもさらに進化し変化していくと思っています。
この舞台をたくさんの方に見ていただけると嬉しいです。

■正名僕蔵(ポローニアス/墓堀り1/ノルウェー兵士)

正名僕蔵

ついに初日を迎えることになりました。
じっくり2週間かけての徹底的な本読みから大胆かつ繊細な立ち稽古を1ヶ月行い、われわれは今ここに至っております。われわれは、『ハムレット』という巨大な戯曲に対する鋼太郎さんの並々ならぬ思いを日々受け止め、試行錯誤しつつも、一心不乱に爆走し続けた柿澤さんとともに、今ここに至っております。
この舞台、できることなら観客として観たかった。そんな舞台です。どうぞご堪能ください。

■高橋ひとみ(ガートルード)

高橋ひとみ

この度、初めて彩の国さいたま芸術劇場、そして初めてのシェイクスピア作品そして誰もが経験できるわけではないハムレットの舞台に吉田鋼太郎さんの演出で出演させていただく事に恐いくらい幸せをかんじています。がきっと終わってからもっと実感が湧いてくるのだろうと思います。鋼太郎さんのハムレットにたいする思いと丁寧な演出でこんなにもシェイクスピアの世界が面白く楽しいものだと気づいてしまったかもしれません。ハムレットが皆様の心にいつまでも残ることを願っています。

■吉田鋼太郎(演出・上演台本/クローディアス/亡霊)

吉田鋼太郎

いよいよ彩の国シェイクスピア・シリーズ2ndの第1弾『ハムレット』が開幕します。
新シリーズの第1弾ということで俳優、スタッフ一同、心を込めて精魂込めて作り上げた作品で、大変面白いものになっております。しかもシェイクスピアの最高傑作といわれている「ハムレット」。ぜひ我々の自信作を見ていただければ幸いです。どうぞ劇場へ足をお運びください。

文:市川安紀    撮影:宮川舞子

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